奥様は大剣豪

はぐれメタボ

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兵士君は勇者

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  サマンサ様を先頭に夕方の辺境を騎兵が駆ける。
  俺達、騎兵が49騎、騎士ラリー様、サマンサ様、そしてサマンサ様のすぐ後ろに続くメイドの計52騎だ。
  戦場に辺境伯夫人を連れて行く何て理解出来ないが、更にメイドまで連れて行く何て有り得ないだろう? 
  しかし、誰も意見など出来ずに敵軍の姿が見える場所まで来てしまった。

「ふぅ、短い人生だったな」

  隣のアンディは既に諦め気分だ。
  敵軍が騎兵突撃の射程に入ろうかと言う時、ラリー様の指示で隊列を整える。
  すると、サマンサ様が腰から剣を抜き放つ。
  それも2度。
  左手に手綱を絡めた上で左右の手に剣を構える。
  そんな状態でもサマンサ様は馬を完璧に御して見せる。
  
「者共、我が武勇に続け!突撃!」

  サマンサ様が右手の剣を敵軍に向けて振り下ろした。
  もうヤケだ!

「うぉぉお!!」

  俺達は雄叫びを上げて馬を走らせた。
  そこで俺は女神を目撃した。
  サマンサ様が左右の剣を一振りするたびに敵兵の首が2~3個宙を舞い、突き出される槍や剣は一瞬で斬り飛ばされる。
  まるで別々の生物の自在に動く2本の剣は、次々に敵兵の命を奪い去って行く。
  その姿はまさに神話に謳われる戦女神その物だった。
  更にメイドも槍を巧みに操り敵兵の喉を裂いて戦場に血の花を咲かせて行く。
  その比類無き武勇に俺達は興奮し、敵兵は恐怖に慄く。

「サマンサ様に続けぇ!!!」

「「「「うぉぉお!!」」」」

「うぁぁあ!!」

「ひぃい、お助けあぐぅ!」

「逃げろ!逃げろぉぉお!!」

厄災ディザスターだ……もう終わりだ……」

  敵軍の戦列は既に崩壊し、武器を捨てて逃げ出そうとしている。
  そこに俺達は追い討ちをかける様に背後から斬りかかった。
  サマンサ様が斬り開いた突破口を、後に続く俺達が拡げて行く。
  敵軍の中程にまで斬り込んだ時、立派な鎧を付けた騎士が立ちはだかった。

「女だてらに見事な武勇だ!
  我が名はレオナード・グルンクス!
  いざ正々堂……」

「五月蝿い!」

「……々がぎゃ!」

  騎士は、口上を無視したサマンサ様に一刀で首を刎ねられる。
  そして、その勢いのまま、敵軍を突き破り反対側に駆け抜けた。
  敵軍の被害は甚大、指揮官らしき騎士も討ち取った。
  対してこちらは負傷した者こそ居るが1人も欠ける事なくついて来ている。
  サマンサ様に率いられた俺達は大回りに旋回する。
  
「戦場でペラペラと……敵の指揮官は無能者ですね。
  大体、侵略に来ておいて正々堂々も無いでしょうに」

  サマンサ様の諧謔に俺達は大笑いする。
  無礼かも知れないと思うが、この時は大勝の余韻で気にならなかったし、サマンサ様も咎めることは無かった。
  敵軍から離れた場所で隊列を組み直す。
  敵軍は指揮官を失い、恐怖の伝播によって混乱の渦に飲み込まれている。
  サマンサ様は俺達を振り返り声を上げる。

「見なさい、隊列もまともに組めないあのお粗末な軍を!
  将は敵を前にお喋りに興じる暗愚! 
  兵は寡兵相手に恐怖する弱兵!
  対してこちらは、武勇比類無き50騎の勇者!
  さぁ、祖国を守る英雄達よ!この地に足を踏み入れた愚かさを、奴らの身に刻みつけるのです!
  再突撃、用意!」

  サマンサ様の鼓舞に俺達は再び興奮の絶頂に達する。
  
「突撃!」

  俺達は、サマンサ様の号令で再び敵軍へと向かって駆ける。
  戦女神の如きサマンサ様に率いられた俺達は、確かにこの時勇者となったのだ。


  
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