・・その狂気は伝染する・・

第三章 狂気と共に明ける明治維新

15代将軍徳川慶喜の決断118

　「では参る！！」

 桃井がそう言うと上段の構えを取る。

　「望むところだぁ！！」

 対する土方は正眼の構えを取りじりじりと円を描くように桃井の周りをゆっくりと回る。

　「でゃああああ！」

 掛け声とともに踏みこんだ土方の突きを桃井は横払いではじいた。

　「さすがだぜ。今の突きは俺の弟ぶん沖田総司てやつの得意技なんだよ。大抵これ一撃できまるんだがなぁ。」

 と言いつつさらに、二の太刀を桃井の胴をめがけて横に斬り込んだ。

　「甘い！！」

 これまた見事に後ろにのけ反りかわす桃井。

　「ちっ！やるなこいつ・・」

 土方が思わず小言を呟いた瞬間に桃井は上段の構えから恐るべき速さで踏み込み、袈裟斬りに土方に斬り込んだ。

　「うううっ・・くっ。」

たちまち刀で防いだものの完全に防ぎきれないほどの力で斬り込まれ、刃先が土方の頬を斬りつつ、鎖骨を砕いた。さらには右胸もえぐられていた。

　「土方先生！！」

    「隊長！！！！」

 見届け役の吉村貫一郎や隊士らは血を吹き出しながらよろめく土方歳三に声をかける。

　「どうやら勝負はありましたな。まだやりますか？」

 桃井春蔵は土方にそう言うと降参するように促した。