少年館

華岡光

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ジョセフとアドン少佐の2人の生活46

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 「アドン少佐。私と約束できますか?」

 しばしの沈黙の後、取り調べ官はアドンに言った。

 「あなたをここからもし逃したら、そのジョセフという男の子が救われるのですね?」


    「ああ必ず。マリオットは復讐しに来るはず。ジョセフの実家も把握しているはずだし、こうしてる間にも意識を取り戻して、側近にジョセフと母親の命を奪えと命令してるかもしれない。その前に俺が今助けだせば必ず命は助かる。ジョセフの母親もだ!」

 取り調べ官の心の中では葛藤があった。それは、"正義とは何か"だった。アドンの犯した罪には情状酌量の余地もある。それに、もしアドンの言う事が真実であればジョセフとその母親の身にも危険があるからだ。正義という言葉は時々解釈も変わる、その解釈を少し曲げて、アドンを表向きには逃亡した事にし、そして取り調べ官は釈放をする事によってアドンの正義を信じ、自分の心の良心を信じ、正義の解釈を変えてみようと悩んでいた。
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