少年館

華岡光

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その意思を受け継いで40

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 「そのある"人物"というのは実は我がドイツの科学に多大な貢献をした人物なのですよ。彼なしでは我がドイツの勝利は叶わない。彼は今後ドイツの戦争におけるためのエネルギーを産み出すために必要な鍵を持った人間。」

 マリオットはドライゼの言葉を聞いて、ピンときた。

 「エネルギー・・そうか、石油か?」

    「その通り、石油です。石油なしでは国は動かないし、当然戦争に勝つ事などできません。我がドイツはヨーロッパのほとんどを敵に回し、世界をも敵に回した事により、いつかは石油の輸入が途絶えるでしょう。いや、もうすでに石油輸入しているいくつかの国の内数国から途絶えました。

 しかし、石油に代わる新しい燃料を開発する事ができたのですよ。"彼"のおかげでね、我がドイツは石炭だけは豊富に採掘できる。その石油から合成石油を大量に生産する技術ができたのです。しかし、これからさらに増産しょうとした矢先に彼は自殺してしまった・・彼の書斎に残された遺書にはユダヤ人を虐殺するドイツには協力できないという事が書かれてました。まあ、彼もユダヤ人だったですから、彼なりのドイツヒトラーに対する抗議だったのでしょう。」
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