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第一章
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しおりを挟む目覚めた夜から、3日がたった
体調もだいぶ良くなってきて
ただ寝ているのにも、飽きてきた
窓の外には青空が広がっていて
爽やかな初夏の風が吹く
散歩したら、気持ちよさそう
「外、出たいな…」
ポツリ、溢れてしまった独り言に
ロウが反応した
ベッドの脇にあるサイドテーブルに向かって
サラサラとペンを動かす
『シリル様に聞いてきましょうか?』
しまった!
声に出ちゃった…
なんとか動揺を押し隠し
笑って首を振る
「ううん、また寝込んだら嫌だから
今日はやめとく」
ロウは少し考えた後
またサラサラとペンを動かす
『顔色も良いようですし
良い気分転換になるのでは?』
「いいんだ
シリルも忙しいだろうし
負担をかけたくないから」
シリルとは、あの夜以降
顔を合わせていない
僕が体調を崩すとちょくちょく様子を
見にきてくれていたのに
今回来ていないのは
それだけ忙しくしているのだと思う
その原因はきっと、僕が抜け出したことと
無関係ではないだろう
『聞くだけならば
負担も少ないと思いますよ』
ロウの微笑む顔とメモ用紙を何度も見比べて
聞いてもらうだけならいいのかなと
迷いながらも、頷いた
ロウがシリルに聞きにいってくれたので
一人、部屋で待つ
外に出ていいか確認するだけだから
すぐに戻ってきていいはずなのに
なかなか戻ってこない
怒られて、いないだろうか…
不安がむくむくと膨らんでいく
ロウがああ言ったのは
僕に気を使わせないためで
やっぱりシリルは忙しいのではないか
だから、怒られているんじゃないか
でも、そんなことでシリルが怒るとは思えない
だけど、ロウはまだ戻ってこない
ボスリ、と枕に顔を埋めた
ロウが気を使っていたことに
なんで気づかなかったんだろう
なんで行かせてしまったんだろう
なんで外に出たいと
言ってしまったのだろう…
後悔が次々と襲ってくる
コンコンコン
「カミュ、起きているか?」
その声に、パッと顔を上げた
「シリル?
あれ、ロウは?」
入り口に立っていたのは、シリルだった
特に怒った様子もなく、いつも通りで少し安心する
だけど、ロウの姿は見えない
「お茶の準備を頼んだ
起きられるなら
こっちで一緒に飲まないか?」
「いいの?」
さっき失敗したばかりだから
慎重に様子を窺う
「あぁ、もちろん
体調は大丈夫か?」
「大丈夫っ」
シリルの口調や表情から、本当にいいのだとわかり
いそいそとガウンを羽織った
隣の部屋では、いつの間にか戻っていたロウが
すぐにお茶を淹れてくれる
「ロウ、ありがとう」
いろんな意味を込めて言えば
ロウも微笑みながら頷いてくれる
ロウの笑みにも、淹れてくれた
紅茶の香りにも癒されて
落ち込んでいた気持ちが浮上する
「外に出るのは、もう少し待ってくれ
イェリーからまだ体調が
安定していないと言われている」
「そっか、日向ぼっこしたら
気持ちよさそうだったけど
また、寝込みたくないから
今日はやめておく」
「あぁ、暖かくなってきたし
外でお茶をするのもいいな
何が食べたいか、考えておくといい
イェリーの許可が出たら
みんなでお茶会をしよう」
「うん、楽しみにしてる!」
ロウがシリルに聞きにいってくれたおかげで
楽しみができたけど
こんな僕に良くしてくれるなんて
なんだか申し訳ない
「あまり顔を見に来れなくて、すまなかったな」
「ううん、忙しいんでしょう?
僕もほとんど眠っていたし、気にしないで」
シリルが遊んでいたとは思えないから
寂しい素振りなど、見せられない
目が覚めた時に、必ずロウは居てくれた
それだけで十分ありがたいと思う
「そうか…」
そう呟いてシリルはどこかぼんやりと
空を見つめる
なんか、疲れてる…?
いつも凜とした雰囲気のシリルなのに
覇気がないような気がする
「シリル、大丈夫?
体調悪いの?
あっ、お茶するよりも休んだ方が
いいのかなっ」
シリルが体調不良なんて大変だ!
と、ワタワタしていたら
ぼんやりしていたシリルの視線が
こちらを向き、数度瞬いた
「カミュにも気づかれるとは、相当だな」
クツクツと笑い始めたシリルに困惑する
「シリル?
あの、大丈夫なの?」
「かなりまずいらしい」
「えっ⁉︎」
「マーシュに、部屋を追い出された」
「追い出された⁉︎
えっ、何で⁉︎」
「かなり殺気立っていたようだ」
「へっ⁉︎
殺気⁉︎」
体調が悪そうに見えたのに
マーシュに部屋を追い出されて
その理由が、殺気立っていたから…?
シリルが殺気立つなんて
相当なことがないと、ないと思う
だから、何かあったんだろう
それは、きっと…
「どうやら一人
考え過ぎていたようだ」
「・・僕の、せいだよね」
「カミュのせいではない
だが、無関係でもないな」
「やっぱり…」
「言っただろう
カミュのせいではない、と」
シュンと俯いた僕に言い聞かせるように
シリルは繰り返した
だけど、僕の心は晴れない
「今、この邸に客人が二人滞在している」
突然、話題が変わる
シリルの意図が読めなくて
表情を伺いながら話に耳を傾ける
「その二人は魔の森の侵入者として
現在、取り調べを受けているんだが…」
魔の森、と聞いて思い出す
洞窟に居たのも、二人の旅人だった
「全く聴取が進んでいないんだ…」
はぁ、と珍しくシリルが大きなため息を吐くのが
どこか遠くに聞こえた
「カミュ、洞窟で何があったのか
聞かせてくれるか?」
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