ミコのお役目

水木 森山

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第一章

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そこで、会話は途切れた

この後はどうすればいいんだろうと
チラリとシリルを伺う

とりあえず、僕は大丈夫だと伝えられたはず…

視線に気づいたシリルが軽く頷く

「マーシュ」

いつの間にか後ろに控えていたマーシュが
手に持っていたトレイを僕の前に置く

トレイには布が掛けられていて、中身は見えない

「カミュ様にお見せしたい物がございます
 こちらは、彼らの持ち物です」

突然出された彼らの持ち物に困惑する
勝手に見せていいのかな?

「えっと、いいの?」

「構わぬ」

おずおずと伺えば、あっさり頷かれる

その言葉を聞いて、マーシュが布をめくった

「うわぁ~、すごいっ」

目に入ってきたのは、柔らかな布の上に
並べられたたくさんの石

様々な色に輝いていて大きい物だと
親指の爪くらいあり、丸や四角、雫形に菱形など
見る目を楽しませてくれる

その脇に古い短剣が一本あり
鞘には赤い六角形の石が三つずつ並んでいた

「何、考えている」

ピリッとした空気が流れた

「ただ、カミュ様にお見せしたかっただけだが?」

警戒する彼にシリルはなぜか
挑発するような言い方をする

二人の間に不穏な空気が流れ始め
慌てて間に入る

「あのっ、やっぱり嫌だった?」

「違う
 只の石、何故騒ぐ?」

タダノイシ…?
ただの石⁉︎

「えっ、これ、宝石じゃないの⁉︎」

つい、シリルに向かって叫んでしまった

「専門家の鑑定によりますと、質の劣る物も
 ごさいますが、宝石と呼べる品質だそうです
 ただ、彼らにとっては光るただの石だそうです」

「そうなの⁉︎」

「見目良いだけの石だ、使わぬ」

「でも、こっちの短剣みたいに飾りに
 使わないの?」

「守り石だ」

守り石?

鞘に付いている石の方が大きいが
その分不純物も多い

その一方で、キラキラした石は小さめだが
不純物も少なく見た目はいい

不純物が入っていた方がいいってこと?

「あの、何が違うの?」

「・・短剣の石、握る」

「握る?こう?」

「カミュ様、私が」

何も考えずに動いたら
シリルに咎められてしまった

だけど、何も変化はない

「えっと、何も起きないよ?」

ハルは一つ頷いた

「次、只の石握る」

何をさせたいんだろうと、首を捻る

「どれでもいいの?」

「どれでも良い」

どれにしようか悩んだが、鞘に付いている石と似た
赤い石を手に取り軽く握った

ピシッ パリン

手の中に軽い衝撃が走る

恐る恐る手を開けば、粉々に砕けた石の残骸に
変わっていた

「只の石、脆い」

隣からわずかに息を飲んだ音が聞こえる

どうしよう…
壊して、しまった…

停止していた思考がじわじわと
現状を理解し始めて、手が震えそうになる

「カミュ様、大丈夫ですか?」

硬直した僕を心配するシリルに
コクンと頷き返したけど、しゃべれない

視界が歪み、アフれそうになる
涙を堪えるのに必死だった

泣いちゃダメだ

なのに、止まらない

ついに決壊した涙がポロリとコボれた

「・・何故、泣く?」

「人の物を壊して、動揺しない訳がないだろう」

ポロポロと泣く僕の目元を拭いながら
シリルは呆れたように言う

「・・只の石だ」

「っきれい、だったのにっ壊れ、ちゃっ…」

「役目、終えただけだ」

その言葉に凍りつく

ただ、砕け散るのが役目?

「石を此方に」

受けた衝撃に泣く気力も失い、ノロノロと
顔を上げると、僕の前に広げた布が置かれていた

「どうするつもりだ」

僕は、ただぼんやり眺めるしかできずにいたが
シリルは警戒を強める

「土、埋める」

「何故埋めるんだ?」

「新たな営みの輪、還す」

新たな…?

「壊れたら、終わりじゃないの?」

気づけば、そう問いかけていた

「終わらぬ
 次の役目、有る」

終わらない…?
次が、あるの?

「これ、僕が埋めてもいい?」

「構わぬ」

「どこに埋めればいいの?」

「其方の想う所」

そう言われても困る
けど、探してみようと思った

落とさないようにきゅっと握りしめる

「お預かりします」

シリルのポケットからもう一枚ハンカチが
出てきて広げられた

何枚持ち歩いてるんだろう…

どうでもいい事を考えながら、そこにそっと
石を置いた

「あの、これも下げてくれる?」

「マーシュ」

マーシュが来て、トレイを持って下がった

近くにあったらまた壊してしまいそうで
離れてほっとする

だけど、彼の視線は僕の後ろを見ていて
あっ、と気づく

「守り石って、身近にあった方がいいの?」

「カミュ様、あの持ち物は彼らが
 解放されるまで返せません」

僕の言いたい事を察したシリルに
制されてしまった

「そうなんだ…」

また余計な事をしてしまい落ち込む

「守り石、在る」

彼が上げた右腕には革の小手を着けていて
手首のあたりに、アイスブルーの
丸い石がはまっていた

大きくはないけれど、キラキラと輝いている

左右にはそれより小さい乳白色の石が
添えられていて、光の加減で青い光沢が見える

「それも、綺麗だねぇ」

「・・他にも持っているのか?」

僕は暢気に感動しているけど
シリルはなんだか警戒しているようだ

「在る」

「えっ、見たい!」

「・・暫し待て」

そう言って、ディーを抱えたまま席を立った

あ、また余計な事を言ったかも

チラリとそんな事を思いつつも
次はどんな物が出てくるのか期待してしまう

彼はすぐに戻ってきて、手に持っていた物を
テーブルに置く

外套?

洞窟で会った時に着ていた物だ
だが、特に石は付いていなかったはず

彼は片手で外套を広げ、なぜか内側に
付いているボタンを外し始めた

あっ、二重になってるんだ

「えっと、ボタン全部外すの?」

「そうだ」

「マーシュ」

今度は、僕が手を出す前にマーシュが呼ばれた

彼もマーシュに場所を譲り、席に座った

そして、マーシュが丁寧にボタンを外し
中の布が捲られる

その下から出てきたのは、想像を超えた
数の石だった

「これは…」

さすがのシリルも、言葉が続かない

僕も口を開けたまま、眺める事しかできなかった

外套には青い石を中心に、黄、白、黒、赤など
様々な石が幾何学模様に並んでいる

こんなに石を付けてて、外套重くないのかな…

もう、そんな感想しかでてこなかった











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