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第一章
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しおりを挟む「これは、一度預からせてもらう」
「我の、良い
ディーの渡せぬ」
「あぁ、一着でいい
が、ディーの外套にも石が付いているのか…」
「当然だ」
どうしよう
僕が見たいって言ったせいで
没収されてしまった…
「カミュ様、必ず返しますから
ご安心ください」
「・・うん、わかってる」
だけど、僕の軽率な行動のせいで
彼らに迷惑をかけてしまった
「泣くな」
きっと、僕は泣きそうな顔をしているんだろうな
無表情のままなのに、どこかこちらを
案じているような気がするのは
僕の気のせいだろうか
「まだ、泣いてないよ」
泣きそうだけど…
ふっと、彼が笑う
ほんの一瞬だったけど、確かに笑った
それがなんだか嬉しくて、泣きそうなのに
笑ってしまった
「しかし、これだけ守り石があるのに
なぜ、ただの石を持ち歩いていた?」
「持たされた」
「ただの石を綺麗な形に
整えていた理由は?」
「腕、磨く」
「練習していたという事か?」
「そうだ」
「えっ!
じゃあ、あれハルが作ったの⁉︎」
「違う物在る」
「外套に付いてたのは?」
「我だ」
「えっと、ハルっていくつなの?」
「・・いくつ…」
あれ?
これじゃあ、通じないの?
「え~と、年、年齢?って言ってわかる?」
「・・・15と13だ」
あっ、ディーのも教えてくれるんだ
ていうか、僕と同い年…
「それで、あれだけの数作ったんだ…」
「皆、出来る事だ」
「私達は作れない」
「僕も一個も持ってないよ」
なぜか、ハルの目が見開かれ
次の瞬間、シリルを睨む
「何故、持たせぬ」
「ここでは、そのような習慣はない」
「僕も守り石って初めて聞いた」
石が守ってくれるなんて、迷信でしか
聞いた事がない
ハルが一瞬、苦い顔をしてすぐに表情を消す
ディーの手首から紐のような物を取り出すと
こちらに投げた
「使え」
慌てて受け取ったそれは
レースのように編まれたブレスレットで
一つだけ、透明な石が付いている
やっぱりキラキラしていて、とても綺麗だ
「あの、ディーのじゃないの?
勝手に渡して、怒られない?」
「・・使え」
「えっと、身につけた方がいいの?」
「近く置くと良い」
本当に受け取っていいのかな?
だけど、返しても受け取ってくれるのかな?
「カミュ様、お預かりします」
悩んでいたら、シリルが受け取ろうと手を出した
だけど、持っているとなんとなく落ち着く気がして
なんだか手放したくない
「僕が持ってちゃ、ダメ?」
わずかな抵抗を試みる
「では、ロウに預けましょう
これ以上は、妥協できません」
ロウが持っていてくれるなら
いつでも見れるかな
大人しく、ロウに預けた
「守り石って、何から守ってくれるの?」
「良くない物だ」
「良くないものって?」
「良くない物だ」
それが何か聞きたいんだけど…
「・・病気とか?」
「・・そうだ」
石で病気が治るってこと?
それ、迷信だよね…
なんだか心配になってきた
今からでもディーをイェリーに診せた方が
いいんじゃないかと悩む
「休め、熱上がる」
「へ?」
熱?
顔や首をペタペタ触るけど、熱くはない
「熱なんてないよ?」
「上がる、休め」
言い切られても、熱なんてないから
休む必要なんて感じない
もしかして、追い出そうとしてる?
良くないものを聞いてはいけなかったんだろうか…
「お昼も近くなってきましたし
そろそろお暇いたしましょう」
「はぁい」
シリルに促されれば従うしかない
しぶしぶ席を立つ
「また来ましょう」
「いいの、かな?」
シリルは勝手に決めてるっぽいけど
いいのかな?
「熱、下がれば良い」
いいんだ
また、来れる
それだけで嬉しくてたまらない
「じゃあ、またね」
「うむ」
「私は所用で出ますが、お部屋で
大人しくしていてくださいね」
「うん、気をつけてね」
廊下でシリル達と別れ、ロウと部屋に戻る
「ロウ、喉渇いた
一緒にお茶にしよう」
お昼にはちょっと早いし、たくさんしゃべったから
何か水分が欲しい
ロウは笑顔で頷いて、準備をしに行く
待ってる間ソファに座ってるけど
フワフワと高揚感が止まらない
ロウが戻ってくると、部屋に紅茶の
いい香りが広がっていく
テーブルに二つのカップを置き
ロウも僕の対面に座った
さっそくカップに手を伸ばし、喉を潤す
一口飲んだら止まらなくて
一気に飲み干した
ハーッと深い息を吐き、顔を上げたら
ロウが細い目を見開いてこちらを見ていた
「あ、ごめん、無作法だったね」
せっかく淹れてくれたのに
味や香りを楽しむのを忘れてしまった
だけど、困ったように笑うだけで
おかわりを注いでくれる
ロウは僕が落ち込まないように
いつも対応してくれる
少し申し訳ないけど、そう思う事もダメだから
平気なふりをする
今度はしっかりと味わえるように
ゆっくり飲み込み、ソーサーにもどした
カチャン
ロウが音に反応して僕を見る
自分でも思ったより音がしたなと思いながら
ソファに背を預けた
「今日は、いっぱいしゃべれて
たのしかったなぁ…」
目を覚ますと、見慣れた天井があった
あれ、僕いつの間に寝たっけ?
ベッドに入った記憶を辿ろうとしていたら
心配顔のロウが覗き込んできた
「僕、寝ちゃってた?
今何時?」
ロウの眉毛がさらにへにゃりと下がったけど
サイドテーブルに向かってサラサラと
ペンを走らせる
『朝の六時過ぎです
昨日お茶を飲んだ後、熱を出されて
一昼夜お休みでした』
朝…?
えっ、熱出してたの⁉︎
目を白黒させながら、何度も読み返す
だけど、書いてある内容が変わるはずもなく
さらにもう一枚、ロウから渡された
『体調はいかがですか?』
「あ、うん、大丈夫」
むしろ熱があったのが信じられないくらい体が軽い
キュルル~
「あ」
『軽く食べられる物をお持ちします』
「うん、お願い」
笑顔で頷いたロウの背中を見送り
ぼんやりと考える
食事を頼んだ時のロウのほっとした顔が
なんだか引っかかった
いつも穏やかに微笑んでいるか
心配しているかが多いからかな?
う~ん、と考え込んでいたら
ロウが食事を手に戻ってきてしまった
消化に良さそうなリゾットと搾りたての
キウイジュース
昨日、一食しか食べなかったからか
ペロリと平らげた
そして、のんびりと食後のお茶を飲んでいた
その時だった
「起きてたか、坊主
二日続けて悪化させるたぁいぃ度胸だ」
扉からイェリーが現れた
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