ミコのお役目

水木 森山

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第一章

守り石を探せ

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ハルの言葉に一瞬、キョトンとしてしまったけど
すぐに吹き出してしまった

「子供扱いなの?
 僕、十五だよ」

「カミュ殿、休息要る
 食べて寝るが良い」

体調を崩して、周りに迷惑ばかりかけている事を
ずっと申し訳ないと思っていた

だけど、ハルの言葉が僕の心を軽くしてくれる

休んでいて、いいんだ

「うん、そうする
 また来てもいい?」

「あぁ、守り石探す」

当たり前のように次の約束をする

例え、終わりがくると分かっていても
胸を躍らさずにはいられなかった



その約束はなんと、翌日の午後に実現した

「もう原石が届いたの⁉︎」

「我が領では、鉱石が取れるからな」

それにしたって早すぎる気がするけど…

無理をさせたのでは、と不安になる

「そんな顔しなくても
 これぐらいで我が領の財政は傾かないが」

「それは、そうだろうけど…」

ただ、僕なんかにお金を使わせるのが申し訳ない

「もっと、我儘を言ってもいいくらいだ」

「十分、甘えさせてもらってるよ…」

「こっそりと身につけるぐらい
 守り石が気に入ったのだろう?」

「あれは…
 ごめんなさい」

昨日のシリルの剣幕を思い出し、項垂れる

「こちらこそ謝らなけらばならないな
 あれは、牽制するためにわざと怒ったんだ」

わざとって…

「じゃあ、怒ってなかったの⁉︎」

「客人の反応が見たくてな
 カミュにブレスレットを押し付けたのは
 善意だけではないのでは、と疑っていたんだ」

「何か企んでいるってこと?」

「・・わからない
 客人の反応が、予想外だった…
 こちらの常識が通用しないことは
 再確認できたな」

シリルがこめかみをグリグリと揉む

そうだよね…
まさか、かばってくれるとは思わなかったなぁ

「だから、カミュが質問してくれて助かった」

僕、何かしたっけ…?
特に思いつかず、首を傾げる

「守り石が大切じゃないのかと聞いただろう」

「あ、あれ…
 でも、よくわからなかったんだよね
 シリルは、ハルの言ってる意味わかった?」

「想像でしかないが…
 客人達にとって、守り石は壊れる物というか
 消耗品なのかもしれない」

「宝石を、消耗品…」

ちょっと、信じられないんだけど…

「そもそも、客人達に石には宝石というか
 高級品という考えがないように感じるな」

「でも、守り石は大事だって」

「大事な物と高級品は違うという事ではないか?
 あくまでも私の考えだが」

「あぁ、そっか」

さすが、シリル
なんだかんだ言いながら、ハル達のことを
わかっている気がする

「まぁ、客人の事より守り石だ
 集まった石を見せに行くぞ」

「はーい」



ハル達の部屋に行き、度肝を抜かれた

一体いくつあるの⁉︎

ぱっと見た感じただの石にしか見えないけど
大小様々な原石が二十個以上ある

そして、最後に出されたのは人の頭ぐらいある塊

「なに、それ…」

「アメジストのジオードです」

「良いな」

ハルは感心してジオードを眺めている

すごい、けど
なんだろう…
ギラギラし過ぎてて、何か落ち着かない

「カミュ殿、気になる石有るか?」

「えっと…」

あるのはあるけど、何か違う気がする

「ふむ」

ハルの手がドーム状のアメジストに触れた瞬間
違和感がなくなった

「え?
 何したの?」

「カミュ様?
 どうされました?」

「あ、えっと…」

どう説明すればいいのかわからず、口ごもる

「膜で覆った」

「膜?」

「気になる石、有るか?」

僕の質問には答えず、三つほど石を並べられた

どれも掌にすっぽりと入る大きさで
不思議と興味を惹かれた

黒い石は、所々でキラキラしていて
白っぽい石は、青い結晶が所々で輝いている

そして、三つ目は黄色い結晶がビッシリと
伸びていた

なんか、タンポポみたい

よく見れば、透明な石の中に金色の筋が
入っているようだった

いろんな角度から見たくて、手に乗せたその瞬間
腹の底に溜まっていた何かが蠢き出す

ドロドロとしたそれは、体の中をゆっくりと
這い上がり始めた

「う…あ…」

あまりの気持ち悪さに呻き声が漏れる

その間にも、右腕を伝い外へ出ようとする感覚に
心が恐怖に塗りつぶされていく

パシン

ゴトン

手に軽い衝撃が走った後、重たい物が落ちる音と
同時に、気持ち悪い感覚が落ち着いていった

「カミュ様っ、大丈夫ですか⁉︎」

「・・・大丈夫…」

酷い倦怠感からぐったりとイスに背を預けながらも
なんとか答える

「本当に大丈夫ですか?
 顔色が真っ青ですよ」

「ちょっと気持ち悪いけど、平気」

閉じていた目を開けて、大丈夫だとアピールする

「効き過ぎたか」

「どういう事だっ
 カミュ様に何が起きた!」

「澱み、払った」

澱みと聞いて、体が強張る
それをシリルに悟られてしまった

「カミュ様、やはりお部屋に戻りましょう」

「いやだっ」

思っていたよりも強い口調に自分でも驚き
手で口を押さえる

「申し訳ありません
 出過ぎた事を申しました」

違うっ
シリルは悪くない

そう言いたかったのに、シリルに肩を掴まれ
微かに首を振られた

何も言うなと、言外に告げられ手を強く握る

また、うまくできなかった…

だけど、落ち込んだ顔を見せてはいけない
そんな事、シリルは望まないから

「澱み、生きる物全てに生じる」

「え?」

突然、ハルが話し始め、頭の切り替えが
追いつかない

「澱み、自然に還る
 だが、カミュ殿出来て無い」

「それは…  体質的なものか?」

シリルが強張った声で問いかける

また、心配させてしまった

僕のせいで、シリルに負担をかけてしまうのが
心苦しい

「原因、分からぬ
 我に出来る事、守り石見つける」

「しかし、守り石を持たせるのは体に
 負担がかかり過ぎるのではないか?」

「近く、置くと良い」

「・・それならば、試せるか…」

真剣な声で問うシリルに、ハルは淡々と答えた

自分の事なのに、二人の会話をぼんやりと
聞いていた

ー ムダナコトナノニ ー

腹の底に溜まった何かが蠢き
そんな言葉が頭に響いた




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