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第一章
そして…
しおりを挟むそんな僕達をよそに、ムクリと起き上がったのは
ディーだった
「ディー、目が覚めたの?」
ずっとぐったりしていたから
大丈夫なのかと気になっていた
起きたのなら話せるかも
自分の話よりも、そっちの方が嬉しくて
ディーに声をかけた
だけど、ディーは答える事なく
ハルの膝から飛び降りた
と思ったら、何かが覆い被さり前が見えなくなる
何事⁉︎と、驚いていると
「ディー⁉︎」
「待てっ」
「すまぬっ」
「捕らえろっ逃すな!」
ハルが驚愕の声を上げ、それを追う声と
バタバタと複数の足音が遠ざかっていった
静かになると、ロウが体を起こし僕の様子を
確認してくる
「ロウ、よくやった
カミュ、何ともないな?」
「う、うん…
何があったの?」
部屋を見まわしても、座っていたはずの
二人の姿はどこにもなかった
ドォン
腹に響く轟音と共に部屋が揺れた
ロウが咄嗟に支えてくれたけど
それどころではなかった
この気配…
この、魔力はっ
「サラっ⁉︎」
ロウの腕を振り払い、駆け出そうとするのに
シリルの腕に阻まれてしまった
「離してっ
行かなきゃ、サラが!」
「落ち着けっ」
どんなに抗っても、腕力で勝てはしないのに
抗わずにはいられなかった
「落ち着けと言っている!」
「だって、サラがっ
サラが!」
「誰かいるか?」
「はっ、ここに」
扉の前に控えていた兵士の一人がすぐに現れる
「爆発の原因は?」
「申し訳ありません
現在、確認中です
我々は引き続き、ここで待機します」
「そうか…」
「そんなっ」
どうして⁉︎、と問いただそうとした僕の肩を
トントン、とたたかれた
振り向けば、ロウが自分を指差し
そして、目を指差す
「ロウ、サラの様子を見てきてくれるか?」
シリルが問えば、ロウは微笑みながら頷いた
「頼む」
待って
そう言いたくて伸ばした手は
ロウには届かなかった
一つ頷いた後、こちらを見る事なく
出て行ってしまった
急に恐怖が込み上げてくる
ロウが向かった先は、危険な場所かもしれない
そんな所に向かわせて、本当に良かったのか
僕のせいでロウに何か起こるかもしれない
僕のワガママのせいで…
絶望感に伸ばした手がだらりと下がる
その間も騒ぎは収まらない
「カミュ様っ、シリル様!
ご無事ですか⁉︎」
グレンが焦りをあらわに駆け込んできた
「あぁ、状況はどうなっている?」
「現在、兵士達が邸を見回っている最中で
ございます」
「申し上げます!
サラ様のお部屋で爆発があった模様です」
さらに現れた兵士の報告に、血の気が引いていく
サラは?
その部屋に向かったロウは、どうなったの?
震える僕に気づいたシリルがイスに座らせる
「怪我人が数名いる模様
サラ様のお部屋に近寄れず、安否は不明です」
「それほど部屋の損傷が激しいのか?」
「いえ、客人の一人が結界と思われる魔法を
サラ様のお部屋で使っており、入れません」
「なに?」
「現在分かっている情報は以上です」
「・・分かった、戻ってマーシュに伝えてくれ
ロウを戻せと」
「はっ」
シリルはあんな命令をしたけど
ロウは戻ってくるだろうか
ケガをさせてしまったんじゃないか
不安と恐怖で震えが止まらない
「カミュ、大丈夫だ
ロウなら無事に戻ってくる」
その言葉に縋りたくて頷くけど
震えは収まらない
シリルの言ったことに根拠なんてなくて
気休めだと、どこかで理解していたから…
「シリル様、報告いたします」
部屋に入ってきたマーシュの声に
ハッと顔を上げる
一瞬、僕と視線が合ったような気がしたけど
すぐにシリルに顔を向けた
「・・客人二人はサラお嬢様の部屋に向かいました
そこで爆発が起き、私が駆けつけた時には
ハルがサラお嬢様の寝室で結界を張っていました
ハルの背後に医師一名が重体で倒れ
兵士二名、メイド二名が意識はありませんが
軽傷の様です」
イシ ジュウタイ…
すぐに意味が飲み込めなくて
いつもの姿を探してしまう
穏やかに微笑み、僕を落ち着かせてくれる
その姿が見えない
なぜ、いないの…?
「サラの、状態は?」
「意識はありませんが、外傷もない様です
今は廊下にいらっしゃいますが
お休みいただくお部屋はどちらにしますか?」
「あの、僕の部屋を使って」
二人の会話に割り込むのは気が引けたけど
あの部屋が一番いい
僕も、サラと同じ理由でこの別邸にいるのだから
「・・そう、ですね
グレン」
「かしこまりました」
名前を呼ばれただけで理解したらしく
グレンは一礼すると部屋から出ていった
その扉から入ってきたのはハル達で
その背中には
「ロウ⁉︎」
「呼ばれるまで入ってくるなと言っただろう!」
僕の声にマーシュの怒鳴り声がかぶり
ビクリと体がすくむ
しかし、ハルは表情を変えず口を開く
「ロウ殿、休ませる」
「外で待っていろ!
戻れ!」
「マーシュ、よい」
「しかし…」
「砦へ連絡を頼む」
「・・かしこまりました」
まだ納得してないようだけど、用を言いつけられ
部屋から下がる
マーシュには目をくれず、ハルは隣の部屋へ
歩き出す
「・・待て
誰かいるか?
ロウを運んでやれ」
すぐに兵士が二人入ってきて、意識のないロウを
ハルの代わりに隣の寝室へ運んでいった
ハルは手があくと後ろにいたディーを
すぐに抱き上げる
ディーは抱き上げられると、またぐったりと
ハルに身を預けた
その様子をただ見ていた
何かしたいけど、体が動かない
罪悪感、不安、無力感…
いろいろな感情が入り混じり、考えがまとまらない
「カミュ殿、ロウ殿無事だ
泣くな」
この間のようにちょっと困ったように見える顔
そして欲しかった言葉に、気が緩んだのか
視界がぼやけた
声を出せば、嗚咽が漏れそうで
唇を噛んで頷き返す
「ところで、なぜ部屋を飛び出した?」
シリルの唐突な問いに、僕の心は別の動揺を生んだ
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