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第一章
どうなってしまうのか
しおりを挟むハル達の立場が悪化してしまうのかと
不安になりながらも見守る事しかできない
「ディー、幼子の異変、気付いた」
「だから部屋を出たと?
ならばなぜ、サラの異変がわかった?」
「ディー、分かる」
「ディーは寝ていたのだろう?」
「そうだ」
なぜと聞いても説明されず
シリルの苛立ちが増していくのを感じる
ハルに対する怒りだと頭ではわかっているけど
そのプレッシャーに怯えてしまう
逃げたい、この空気から…
だけど、隠れられる場所なんてなくて
下手に動けば、それだけで周りに迷惑をかけそうで
俯くことしかできなかった
「カミュ殿、休め」
「えっ?」
「体休めろ」
言って欲しかった言葉に頷きたいけど
そんな雰囲気じゃないから
必死に無難な言葉を探す
「あの、でもっ、ディーを休ませた方が
いいんじゃないの?
それに、今は休んでる場合じゃないし…」
こちらをじっと見ていたハルが視線を下げた
「ディー、歩けるか?」
ハルの声に反応し、くたりと寄りかかっていた
ディーが起き上がり、ハルの腕から下りる
そして、ふらふらしながら隣の寝室へ向かった
その後ろ姿をハラハラしながら見守っていたら
突然体が浮いた
「えっ⁉︎」
視線が高くなり、ハルの顔が近くに見えて
抱き上げられたのだと気づく
「えっ? 何っ⁉︎」
腕を突っ張って逃げようとするけど
細い腕なのに、ビクともしない
「勝手な事をするな!」
掴みかかろうとするシリルをヒラリとかわし
ハルはスタスタと寝室に入っていく
「待てっ!」
寝室ではディーが何故かロウのベッドに
潜り込んでいて、僕は隣の空いているベッドに
降ろされた
「なんで…?」
「ロウ殿と一緒が良いか?
ディー、代わってくれ」
「ちがっ」
「・・だから、勝手に動くなと言っている」
一オクターブ低くなったシリルの声に
ビクリと肩が跳ねる
「カミュ殿、休ませるが先だ」
「とにかく戻れ…
ディーも一緒だ」
僕を運んで満足したのか、それ以上は抵抗せず
ディーをベッドから抱き上げると部屋を出ていった
その後姿を見送るとシリルは僕に近づいた
「カミュ、大丈夫か?
何もされていないか?」
「あっ、うん、平気」
「そうか…」
ほっとした顔を見て、また心配させてしまったと
気持ちが沈む
「ごめん、すぐに戻るね」
「構わない
ここで休んでいろ」
「でも…」
「客人が使えと言っていたんだ
気にせず休んでいていい」
「いいのかな…」
「休める時に休んでおくんだ
これ以上、何も起きないとは
言い切れないからな」
こめかみを押さえるシリルは
これからの事を考えてるのかもしれない
なら、僕にできることは…
「わかった、大人しくしてる」
「あぁ、ロウが目覚めたら
しばらく休めと伝えてくれ」
「あ、うん」
そう言って部屋を出ていったシリルを見送ると
大きくため息を吐いた
気がつけば、心も体も重い
だけど、横になって休む気にはなれなくて
ぼんやりと眺める先には
ロウが静かに横たわっていた
いつも、穏やかに微笑んでいるのに
青白い顔をして、ピクリとも動かない
その姿に、不安が膨れ上がる
僕が余計な事を言ったせいで…
ロウを酷い目に合わせてしまった
その罪悪感が胸を掻き乱す
どうしてあんなこと言ってしまったのか
どうして我慢できなかったのか
何度も後悔の念に襲われて
気持ちはズブズブと沈んだまま
浮かび上がれずにいた
どれくらい、そうしていたのか…
衣擦れの音がして、はっと顔を上げた
気がつけば、ロウの呼吸が荒くなり
額には汗が滲んでいる
「ロウ⁉︎」
かけ寄り、起こそうとして伸ばした手が止まる
起こしていいの?
シリルを呼びに行く?
でも、目を離していいの?
どれが正解かわからず、ただ、立ち尽くす
ガバッとロウが勢いよく起き上がり
びくっと体が跳ねた
「ロウ? 大丈夫?」
恐る恐る声をかけると、ロウがゆっくりと
こちらを向いた
どこか虚な目がこちらを見る
目が合うとロウの目が見開かれた
次の瞬間、掴まれた腕を引っ張られ
ロウの胸に勢いよく顔がぶつかる
ロウ⁉︎
そう叫んだつもりだったけど
強い力でぎゅうぎゅう抱きしめられて
逆に息が漏れただけだった
くっ くるしい…
ロウの背中を叩くが、力は緩まない
「ロウ?
目が覚めたのか?」
物音に気づいたのか扉の方からシリルの声が
聞こえる
そちらに向かって必死で手を伸ばし
助けを求めた
「カミュ?
ロウ、どうした?」
ロウを揺さぶっているであろう振動が
伝わってくるけど、ロウの力はまだ緩まない
とにかくロウの背中を必死に叩いた
「ロウ! カミュを放すんだっ!」
ようやく腕の力が緩み、大きく息を吸い込んだ
だけど、まだ腕は体に巻きついたままだったから
顔だけロウを見上げた
ロウはシリルを見ていて、その表情は
ポカンとしているが一番近いかな
だけど、その中に滲み始めたのは怯えだろうか
ロウの顔色が見る間に青ざめていった
「ロウ?」
そんな顔色を見て、また不安が膨れ上がる
シリルもロウの変化に気づき、視線を追って
振り返った
「ロウ殿、目覚めたか」
ハルの声に弾かれるようにロウが立ち上がり
抱きかかえられていた僕は解放される
ロウは僕とシリルかばう様に前に進み出ると
ハルに頭を下げた
「も…し…け、ませ…」
えっ?
「ばつ、は、わたし、が
この…たたち…かんけい、ありませんっ」
何を、言っているの…?
罰? どういうこと?
頭を下げ続けるロウにハルが近づくと
手を伸ばした
「ロウ殿?
何を言っている?」
ロウ肩に手を置き、頭を上げさせるも
いつもの無表情のまま、顔をじっと見つめた
「ロウ殿、声出ている」
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