ミコのお役目

水木 森山

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第一章

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「寒い日に、叔父上は火をオコして
 くれなかったの?」

ロウの肩に頭を乗せたまま、ハルは頷いた

「頑張ったんだね…」

そう言って、ロウはディーも胸に抱き寄せた

ディーは大人しくロウに身を預け、その姿を見た
ハルも嬉しそうに笑いながら、ロウごとディーを
抱きしめる

ディーもその腕に、そっと手を重ねた

三人のその姿を見て、嬉しくて嬉しくて
僕の涙腺が決壊した

「カミュ殿っ
 茶を飲め!
 干からびる‼︎」

ハルのギョッとした叫びに
僕は泣きながら、笑ってしまった



「ごめん、嬉しくて…」

ズビズビと鼻をすすりながらも
ハル達に安心してほしくて笑いかける

「干からびはしないでしょうけど
 水分は取りましょう」

「うん」

早速お茶に口をつける

少しぬるくなったけど
優しい香りが鼻を通り
気持ちを落ち着かせてくれる

「ご心配をおかけして申し訳ありません」

ロウが代表して謝罪し、二人にも頭を下げさせる

そんな姿を見ると、本当に二人のお兄さんなんだな
と思える

「ううん、仲いい姿が見れて安心したよ」

「ありがとうございます」

ハルもイスに座り、お茶を飲み始めた

ロウの膝に座ったままのディーを
羨ましそうにチラチラ見ているけど
深く考えるのはやめておこう

「ディー、僕がいなくなった後
 何があったの?」

ディーが、顔を背けようとしたけど
ロウは両手でディーの顔を包み、向き合わせた

「ちゃんと話して」

フードを被ったままのディーとしばらく見つめ
合ったままどちらも動かない

「・・何もありませんでした」

ロウの眉がへにょりと下がる

「僕に言えないくらい、酷い暮らしだったの?」

「本当に、何も無いんです」

「寒い日に何もせず放置していたというだけでも
 十分虐待だが?」

シリルの言う通りだ

どのくらい寒かったかわからないけど
山にいて凍死する可能性がないとは言い切れない

「そのお陰で、火を扱えるようになりました
 悪い事ばかりではありません」

「逞しい…」

「常識が通じないとも言うな」

つい、感想がこぼれた僕達だけど
ロウだけは顔を強ばらせていた

「・・子供だけで火を使っていたの?
 大人達は、誰も止めなかった…?」

ディーがまた、顔を背けるけど
すぐにロウが顔を両手で包んで向き合わせる

「冬籠りの支度は誰がしてくれたの?」

ディーは、何も答えない

「春の祝いは?
 夏の禊や、秋の宴は?」

ロウの質問に、僕達だけでなく
ハルも何の事かと首を傾げて見ている

そんなハルの姿を悲しそうに見て
ロウは深いため息を吐いた

「叔父上だけではなく
 誰も気にかけてくれなかったんだね?」

ロウの手の力が緩んだのか
ディーは黙ったまま俯いた

否定しないという事は
そういう事なんだろうな

ロウはディーを抱えて立ち上がると
ハルの膝に座らせた

ハルが嬉しそうにディーを抱きしめて笑う

「休憩時間をいただき、ありがとうございました」

僕達に頭を下げると、いつもの立ち位置に戻った

その姿をハルは寂しそうに見るけど
ディーの表情はフードの下に隠されていて
見る事はできない

一方的に告げられた言葉に
傷付いてはいないだろうか…

その後、会話は続かず
今日の訪問はここまでとなった



「申し訳ありませんでした」

部屋に戻ると、ロウが謝罪してきたけど
何の事かわからず、目を瞬かせる

「自分勝手に話をしてしまい、ディーの口を
 重くしてしまったかもしれません」

「いや、いい
 あの二人の生い立ちが少し見えたからな
 どこまでが本当だと思う?」

「二人の反応を見る限り、全て本当ではないかと
 思います」

「同情を引き、ロウを味方につける
 という事は?」

「ディーは私が質問していた時、体を強ばらせて
 いました
 聞かれたくないと感じていたんだと思います」

「一族から冷遇されていて、成人を機に
 ロウを探しに山を下りた、か」

シリルが腕を組み、考え込む

「何か引っかかるの?」

「いや…
 先程の冬籠りや春の祝いとは、祭りの事か?」

「冬籠りの支度は、そのままの意味です
 春の祝いは、こちらでいう新年のお祝いですね
 夏の禊は病気の予防的な意味合いでして
 秋の宴は、宴の翌日から冬籠りの支度を始める
 合図のようなものです
 どれも、一族の大切な行事でした…」

「そのどの行事にも参加していなかった」

「はい
 ハルは存在そのものを知らなかったの
 かもしれません…」

「ありえない事なのか?」

「皆んなで準備をするのです
 赤子だったハルも、父や母に背負われて
 参加していました」

「ディーは、その事を知られたくなかった…
 なぜ、知られたくないんだ?」

シリルは誰にともなく呟いた様だけど
ロウが反応する

「わかりません…」

ただ、苦し気に首を振っていた














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