ミコのお役目

水木 森山

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第一章

更けていく夜

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「そうか…
 初めてロウに会った時の印象は
 人形のよう、だった
 だがある日、何をしてもカミュが
 泣き止まない時があってな」

ゔっ

今も変わってなくて、落ち込む

「その時に、ロウが自らカミュを抱き上げたんだ
 ぎこちない笑みを浮かべながらな」

ん?

なんか覚えがあるような…

「それって、僕が暴走した時?」

「それは覚えていたか」

ここに来たばかりの頃、原因は忘れたけど
魔力のコントロールがうまくできず
暴走させてしまった

側にいたロウは巻き込まれて、服はボロボロ
髪もチリチリになってしまった

なのに、ロウは恐慌状態に陥っていた僕を
抱き上げたまま、背中をぽんぽんたたいて
あやしてくれた

僕には笑顔に見えたけど、ぎこちなかったっけ?

「本邸にいる時、ロウは浮いていたそうだ
 声が出ないという事もあったが
 使えないと思われていたらしい」

「ロウが⁉︎」

「実際、指示を出さないと動かなかったからな」

知らなかった…

「カミュがしがみついて離れなくなったから
 自然とロウに任せるようになったんだ」

ゔぅ

「最初は戸惑っていたようだが、ロウにとって
 それが良かったんだろうな
 ただ、ひたすら背をたたいてあやすだけ
 だったのが、食事を食べさせたり
 着替えをさせたり、周りが世話をする姿を見て
 学ぶようになった
 カミュと関わる事で、悩んだり笑ったり
 人間らしくなったんだ」

思いがけない言葉に、呆然とする

ずっと、みんなの負担でしかないと思っていた

問題を抱えている僕と関わるのは
恐怖でしかないと

ここに、いても いい…?

そう、期待しそうになって慌てて打ち消す

考えたら、ダメだ!

僕が問題を抱えている事に変わりはないのだから
いなくなった方がいいんだ

「久しぶりに、一緒に寝るか?」

「えっ⁉︎」

考えていた事が一気に吹き飛ぶ

「冗談だ」

「えぇ~」

くつくつと笑う声が聞こえ、揶揄われたのだと
脱力する

「そろそろ寝なさい
 明日に響く」

「はぁい」

大人しく返事をするけど、目は冴えたまま

知らなかった、ロウの過去

僕と関わる事で、変わっていった事

じゃあ、僕がいなくなったら?

ロウが本邸に戻ったら、うまくやれるのだろうか…

でも、ディー達がいれば、大丈夫だよね

本当に?

ディー達は、ロウの側にいてくれるの?

不安がむくむくと膨れ上がる

ダメだ…

わからな過ぎて、堂々巡りだ…

問題を抱えた僕は、出ていかなくちゃいけないのに
迷いが生まれてしまった

どうしよう…

考えて、考えて、考えて…

一晩悩んだ結果、様子を見る事にした



そして、見事に寝不足になった



「おはよう、調子は…
 良くなさそうだな」

「・・ちょっと、眠れなかっただけ…」

明け方、うつらうつらしたと思ったら
もう、起きる時間だった

眠い…
眠過ぎて目が開かない…

「おはようございます
 お目覚めでしょうか?」

朝の支度にロウが来たけど、起き上がりたくなくて
うだうだする

「おはよう
 ロウ、午前の予定は午後に変更だ」

「何かございましたか?」

「カミュの寝不足だ
 カミュはもう少し寝てなさい」

「うん…」

遠慮なく、布団にもぐりこんだ

「ロウはカミュについていてくれ
 私はマーシュに変更を伝えてくる」

「かしこまりました」

二人のやりとりをうつらうつらしながら聞く

朝方まで、あんなに考えていたのが嘘のように
意識を手放した



「お目覚めですか?」

見慣れない天井をぼんやりと眺めていたら
ロウに声をかけられた

「うん、起きた」

ちょっと怠いけど、さっきよりもだいぶ
頭がすっきりしている

身支度を整え、軽めの食事をとる

「お昼まで、どうしましょうか?」

「シリルは?」

「いろいろと手配があるようで、動き回っている
 様です
 お邸にはいらっしゃいますよ」

「そっか」

お昼までだし、なんかやろうという気にもならない

「ロウ、お茶に付き合ってくれる?」

「はい、もちろんです」

すぐに用意されたお茶を飲んで
ほっと息を吐きだす

美味しいお茶を淹れてくれるロウが本邸で
役立たずと言われていたとは信じられない

「ロウが本邸にいた頃、無表情だったって
 本当なの?」

お茶を飲んでいたロウの顔が、見る間に赤く
染まっていく

あ、聞いちゃいけなかったやつ、かな…

「・・シリル様に、お聞きになりましたか?」

「えっと、うん…」

話題選びに失敗した気まずさを、お茶を飲んで
誤魔化す

ロウは視線を彷徨わせた後、カップをソーサーに
戻した

「本当です
 無表情と言いますか、無気力でしたね…
 今、思い出すと恥ずかしい限りですが」

「あっ、嫌なら無理に話さなくても」

「大丈夫です
 記憶を取り戻した今なら、謎が解けたと
 言いますか、頭の中を整理するためにも
 聞いていただきたいのです」

恥ずかしそうに頬をかきながら
でもロウは笑っていた







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