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第一章
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しおりを挟む「・・それは、気力がなかったせい?」
「そうだと思います
動くのも億劫でしたから、話しかけられるのも
煩わしいと感じていました
みんなが当たり前のようにできる事が
私にはひどく難しかったのです」
ちょっとだけ、わかる気がする
「みんなと同じようにできない私は
存在する意味などないと…」
ロウの言葉に、動揺する
魔力制御ができない僕はここにいる資格がない
そう思っている自分に、似ている気がした
だけど、それを悟られる訳にはいかない
動揺をぐっと腹の底に押し込めた
「すみません、話が逸れてしまいましたね」
僕の沈黙をどう受け止めたのか
ロウが慌てて話題を戻す
「カミュ様がいらした時、ひどく弱って
いらっしゃいました
しばらくは、誰かが必ず側にいる必要が
あったので、グレンさんについていた私も
その手伝いをしていました」
何となく、覚えている
あの頃は、環境の変化についていけず
熱を出したり、知らない人に怯えて
みんなに迷惑をかけていた気がする…
「最初は、ただ言われるまま手伝っていたのです
が、少しずつ違和感を覚え始めたんです
なぜ、怯えたり、泣いたりするんだろうと」
ゔっ
顔に熱が集まるのがわかる…
「申し訳ありませんっ
バカにしている訳ではないんですっ」
「うん、わかってる…」
さっき、ロウが赤面した意味がよくわかった
過去の自分の失態を思い出して、羞恥に身悶える
「その、泣いたり怯えたりしたら疲れるだけ
なのに、なぜそうするのかがわからなかった
んです」
感情を露わにするのは、確かに疲れる
だけど、それって抑えられるものなのかな
それだけ、ロウは生きる気力がなかったつて事
なんだろうか
「カミュ様が我慢して、我慢して
それでも零れる涙を見た時に
生きたい、と叫んでいるように感じました」
「えっ!
僕っ、そんなに泣き叫んでいた⁉︎」
「いいえ、声を押し殺して泣いていました
ですが、無気力だった私にとっては
それくらいの生命力を感じたのです」
とても衝撃でした、と邪気のない微笑みを
向けられる
でも、僕としてはみっともない姿を見られている
だけだから、複雑な心境だ
「自分より小さい子が、必死に生きようとして
いる姿を見て、勝手ながら生き辛さを感じて
いるのは自分だけではないのではと、ふと
思ったんです
それからは、どうしたらもっと心穏やかに
過ごせるのだろうかと自分でも考えて行動する
ようになりました」
「そう、なんだ」
他に言葉が見つからない
「はい、生きる意味を見つけられました」
ロウは何気なく言っただけだろうけど
僕にとっては、とても重い言葉だった
じゃあ、僕がいなくなったら…?
その先は、考えちゃいけない気がして
無理矢理、意識をロウに向ける
「その、変化にシリルが気づいたんだ」
「そうですね
周りの反応が変わっていきました」
「僕も変わっていく所、見たかったな」
「ふふっ、必死で隠してたんですよ
頑張った甲斐がありました」
「そうだったの?」
「はい、皆さんにカミュ様の事に関すると
人が変わると言われました」
「んんん?
聞いたことないなぁ」
続く会話に、内心ほっとする
気づかれなくて、よかった
だけど、考え込む姿も安心した姿も
今見せたら不自然だから、必死に笑みを
貼り付ける
「楽しそうだな」
「あ、シリル
お仕事終わった?」
「一段落ついたところだ
ロウ、私にも茶を頼む」
「かしこまりました」
「何の話をしていたんだ?」
「あー、えっと…」
「本邸にいた頃を聞かれましたので
お答えしていました」
答えていいのかと、戸惑っていたら
代わりにロウが答えてくれた
「そういえば、昨夜はずいぶん驚いていたな」
「だって、今のロウと全然違うんだもん」
「そうだな
それだけ、ロウは努力していたんだ」
「気づいてたんだね」
「まぁな…
変わったのは、ロウだけではないがな」
紅茶に口をつけるシリルを見ながら考えるけど
思いつかない
「他にいたっけ?」
「カミュも、笑うようになっただろう?」
「そう、だっけ?」
あの頃は、いろいろあり過ぎて
あまり覚えてない
ひょっとして、泣いてばかりいたんだろうか
そうだとしたら、恥ずかしい…
「辺境に来たばかりの頃は、かなり衰弱していて
笑う余裕なんてなかったんだろうな」
あ、そっちか
「そんなに酷かった?」
「見ているこっちの方が、痛々しかったぞ」
「あー、ごめん?」
「カミュが謝る事ではないだろう」
くつくつと笑うシリルにつられて、僕も笑う
そういえば、こんなふうに昔の話をする機会は
なかったような気がする
お互いに、触れてはいけないような雰囲気が
どこかにあった
いつも一緒にいるから余計に気を使い合って
いたのかな
なぜ、今日は大丈夫だったのかはわからない
だけど、この雰囲気が心地よくて
なぜか胸がジクジクと痛んだ
ー ダレカ キヅイテ ー
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