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第一章
午後
しおりを挟む「体調良いか?」
午後になり、ハル達の部屋を訪れた
相変わらず、ディーを膝にのせているハルに
開口一番聞かれたのは、僕の体調だった
「うん、ちょっと寝不足だっただけ
寝たら良くなったよ」
それぞれが席に着くと、ロウは持っていた
トレイをテーブルに置いた
「今日は、私から頼みがある」
頼み?
珍しいなと思いながら、シリルの次の言葉を
みんなで待つ
だが動いたのはロウで、トレイの上に掛かって
いた布を取り除く
なんか、前にも見た光景だな
トレイの上には、小ぶりな原石が所狭しと
並んでいた
「カミュ様に、身につけられる守り石を
作ってもらいたい」
え?
「何か不都合あったか?」
「いや、カミュ様の希望だ
ブレスレット…、腕輪の様な身につけられる
物はできるか?」
「可能だ」
「待って、え?
なんで⁉︎」
そんな事、頼んでない!
「昨日、身につけられたらいいと言っていたと
聞きましたので、新しく作ってもらおうと
思いました」
「言った…けど、今ので十分だよ!」
なんて事!
ちょっと言っただけなのに!
「ですが、せっかくですから客人がいるうちに
作りませんか?」
高そうな石を使うなんてもったいない!
必死で断る理由を探す
「どこかに出かける訳じゃないし
部屋で見られればいいから、大丈夫!」
「我作る物、不満か?」
ひねり出した言い訳に、今度はハルが疑問を
口にする
どこかしょんぼりした雰囲気に、うっと詰まる
「そういう訳じゃ…
ただ、その、僕にはもったいないような
気がして…」
「もったいない?」
「勿体無い…?」
はからずも、二人の声が揃った
「もったいないとは、どういう意味ですか?」
「だって、出かける訳でもないのに必要ない
じゃない」
「身に着ける、良い」
「もう一個持ってるのに?」
「沢山有る、良い」
必死に言い訳をするのに、ハルも引かない
とにかく断る事ばかり考えていた
問題を抱えた僕には、必要ない
それは言ってはいけない事だと思っていた
だけど、追い詰められていた僕は
もうこれしかないと思い始めていた
頭の中で、二つの意見がグルグルと交錯して
どちらが正解かわからなくなっていく
いや、だめだとわかっていた
わかっていたはずなのに
「だって、必要ないよっ
僕はもうすぐ、死ぬんだから!」
シン、と部屋の空気が静まる
あぁ、やってしまった
困らせるだけだから、言っても意味がないのに…
「死なぬっ!」
ハルがイスを蹴倒す勢いで立ち上がった
誰も、何も言えないと思っていたから
目を見張る
「カミュ殿、死なぬっ!」
「ハル、落ち着いて」
驚きの後に、怒りが湧いてくる
「何も知らないくせにっ
勝手な事言わないでっ」
湧き上がる怒りを、ハルにぶつけた
「言わねば分からぬ!」
「ハル」
「言ったってわからないよ!」
「言わねば、もぐっ」
ゴッ
ドタッ
怒鳴り合いは突然終わった
目の前が暗くなり、何が起こったのかわからない
目元に手をやれば、誰かの手で目隠しされていた
「申し訳ありません…
カミュ様には、少々、刺激が強すぎるかと
思いまして…」
僕の目を覆っていたのはロウだった
「女性が暴力を振るうとは、嘆かわしい」
額に手を当てたシリルが、ため息を吐く
えっ?
暴力?
えっ⁉︎
「お見苦しい姿を晒してしまい
申し訳ごさいません」
両手を胸に当て、深々と頭を下げたのはディーで
ハルの姿が見えない
「ディー!
痛いっ!」
ハルは勢いよく起き上がり、顎をさすっている
「痛くしましたから
ハル、感情のままに人を怒鳴っては
いけません」
「だがっ!」
「だがではありません」
「だってっ」
「だってでもありません」
「カミュ殿がっ」
「他人の所為にするなど以ての外です」
両手を握りしめ、ぐぬぬぬぬと唸っていたハルは
口をへの字に曲げて、ぷいっとそっぽを向いた
「良く我慢出来ました」
えっ、いいの…?
シリル達の顔を伺うと、二人とも微妙な顔を
している
「怒鳴らなくても、ハルの想いを
言葉に出来るでしょう?」
そっぽを向いていたハルは、ばつが悪そうに
俯く
「・・カミュ殿、死ぬ言う、嫌だ…」
「・・本当の事だもん…」
イラッとして、小さい声で抗議する
ハルはこちらをキッと睨んできたけど
何も言ってはこなかった
「ハルの気持ちは、分かります」
わかるんだ…
期待していた訳ではないはずなのに
ハルの味方をされてがっかりする
「ですが、ハルよりも長く一緒に居る方達の方が
衝撃は大きいと思いませんか?」
ハルは、はっとした表情でシリル達を見て
すぐに頭を下げた
「すまぬ」
ディーの言葉に動揺したのは、僕もだった
ひどい事を、言ってしまった
自分のしでかした事の重大さに気づき
両手で口を覆う
「ごめん、なさい…」
絞り出すような声しか出なかった
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