ミコのお役目

水木 森山

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第一章

涙のあとは

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顔にポン、ポンと当たる感触に目を開けた

辺りは暗く、蝋燭のわずかな灯りがぼんやりと
部屋を照らしていた

「お目覚めですか?」

布を手にしたロウが心配そうに覗き込んでいる

「僕、どれくらい寝てた?」

「半日経った」

答えたのはシリルで、ちょうど扉から入って
来た所だった

「怖い夢でも見たのか?」

「え?
 何で?」

ベッドの脇にあるイスに腰掛けたシリルが
答えに詰まった

あれ、珍しい

「・・目覚める前、泣いていた」

瞬き二回分、思考が止まった

「・・うそ…」

顔がみるみる熱くなる

夢だから泣いてもいいと思ったのに
見られてた⁉︎

叫んじゃったよ!

聞こえてないよね⁉︎

嫌な汗がダラダラと流れる

「カミュ?
 大丈夫か?」

くぅー きゅるるる

沈黙が辺りを包む

は、恥ずかしい…

両手で顔を覆う

「ロウ、食事の支度を頼む」

「かしこまりました」

「カミュ、先に着替えてしまおう」

「・・はい」

話題をそらしてくれたシリルには、感謝しかない



食事が届くのを待つ間、水分補給をと渡された
果実水をゴクゴク飲む

「カミュ、落ち着いて飲みなさい」

「はぁい」

新たに注いでもらった分からは
ちびちびと飲む

そんな僕の額にシリルは手を当てる

「熱は下がってないようだが、体調はどうだ?」

「ちょっと怠いけど、平気」

「そうか…」

なんか微妙そうな顔をされたけど
聞いていいのかわからないから
黙ったまま喉を潤した



その後、用意された温かいスープをあっという
間に平らげた

物足りない…

「いきなり食べたら、腹がびっくりするだろう
 一度休んで様子をみよう」

「はぁい」

もそもそと布団に戻る

お腹が空いて寝られないと思っていたけど
シリルの言う通り、目を閉じたら
いつの間にか眠りについていた



翌日は朝から起きられた

熱は下がったけど、安静にしてろと
ベッドからは出してもらえない

何してようかなと考えていた時
ふと守り石が目に留まった

初めて手にした時のような安心感は感じなく
なったけど、そこにある事でなんかほっとする

そういえば、ハル達はどうしてるだろうか

ゆっくり休めたかな

だけど、まだ会えそうになくて
また、会えるかもわからない

「カミュ様?
 どうかされましたか?」

「え?」

「ぼんやりされていたので、まだ横に
 なっていた方がよろしいのでは?」

どうやら、ぼーっとし過ぎてたらしい

ロウが心配そうにこちらを見ていた

「うん…
 そうだね」

ヘラリと笑って横になる

心配かけない様にと思い、横になったけど
いつの間にか、ぐっすりと眠っていた




そして、気づけば夕方だった

「起きたか、何か食べるか?」

ベッドの脇に座っていたのは、シリルだった

「うん、食べる」

「今、用意する
 体調はどうだ?」

「うん、いいよ
 ただ、まだ眠い」

「熱が下がったばかりだからな
 それで、何か気になる事でもあったのか?」

「えっ?
 何で?」

「ロウが気にしていた」

ロウが?

首を傾げたが、あっと思い出してしまった

そっとシリルを伺うと、しっかり目が合う

しばらく見つめ合い、目をそらしたのは僕だった

「その、ハル達、どうしてるかなぁって…」

なんかこのやり取り、前にもあったなぁ

沈黙が辛くて、現実逃避してしまう

「それだけか?」

「うん、それだけ」

嘘じゃないから、しっかりと頷く

「なら、手紙で伝えたらどうだ」

その発想はなかった

「読めるかな?」

「ロウに届けさせればいいだろう」

あ、そっか
そしたらロウが読んでくれる

「近況も伝えたらどうだ?」

「うん、そうする」

「まぁ、まず腹ごしらえからだな」

そう言われたけど、頭の中は手紙の事で
いっぱいだった



食後すぐに紙と向き合うけど、手紙を書いた事が
なくて、書き始めの言葉に詰まってしまった

拝啓?

でも、ハル達に通じるのかな?

いきなり元気って変かな…

悶々と悩んでいると、ふっと笑われた

つい、恨めしい視線を向けてしまう

「すまない、真剣な顔で紙を睨んでいるのが
 おかしくて」

「だって…
 書いた事ないんだもん」

「そうだったな
 なら、ロウに書くとしたらどうする?」

ロウに…?

毎日顔を合わせてるから、書く意味がわから
なくて首を傾げる

「例えば、ロウが手伝いで三週間
 本邸に行ってるとして」

ロウが三週間もいない…

考えただけで、ちょっと落ち込む

「仮にだぞ」

「う、うん」

念を押されて、慌てて頷く

「仮にロウと離れた場合、どんな手紙を書くか
 考えてみればいい」

うーん

まずは、元気か聞きたいな

こっちは大丈夫だから心配しないでって感じかな

あっ、なんか書けそう

数日会ってないから、心配してる、よね

体調崩したのは、多分バレてるかな

でも、もう大丈夫だから…

『ディー、ハル こんばんは

 熱を出してしまい
 二人に会えなくて寂しいです

 今は、だいぶ良くなりました

 ブレスレット、作ってくれて
 ありがとう

 嬉しくて、ずっと身につけてます

 カミュより』








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