ミコのお役目

水木 森山

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第一章

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「そういうシリルは、不満はないの?」

「不満か…」

自分で聞いておきながら、あったらどうしようと
不安になる

「帝都と比べると、快適すぎて思いつかないな」

「そうなの?」

「あるとすれば、父上に鍛えてもらいたい
 というぐらいだな」

叔父上が忙しいから時間が合わないのかな?

僕が面倒かけてるせい、だよね…

「あっ」

シリルの声に、ビクリと体が反応する

怒られるっ

「客人が、素直に事情を話さないのが
 今、一番不満だな」

「え?」

客人?

一オクターブ低くなった声に、シリルの
苛立ちが伝わってくる

自分が一番悪いと思っていたけど
それ以上にストレスだったのかな

ハル達とのやり取りを思い出してみて
ちょっと納得してしまう

なんか、ハルとの相性は最悪っぽいもんね…

「なんか、こっちと常識?というか
 感覚が違うんだろうね」

「そうだな…
 かと思えば、ディーの礼儀作法はこちらと
 それほど変わらない」

手紙も上手に書けてたよね…

「まぁ、本人達に聞くしかないか」

「・・善意でサラを助けたって事はないかな?」

「その可能性もあるが、何の確証もなく
 信じる事はできない」

「そうだよね…」

あの二人が何か企んでるようには
見えないけどな

「何か飲み物をもらうか」

「うん」

立ち上がったシリルの背を眺めながら考える

確証かぁ

どうしたら、あの二人が無害だと証明
できるんだろう

「念のため言っておくが、客観的に事実を
 積み重ねた結果でなければ、見誤るからな」

「客観的…」

って、どうすればいいんだろう?

「今の所、害意は見られない
 質問すれば答えるが、全てを話している
 訳ではない」

確かに…

そう言われると、二人はあやしいとしか思えない

「まだ、気が抜けないというのが今の判断だな」

「そうだね…」

もどかしいな

僕は助けてもらったのに、二人にできる事は
何もないなんて

「失礼します」

「・・明日まで休みのはずだが?」

「十分、休めましたので」

「まぁ、いいが…」

いいのかな?

お茶を並べ終えると、ロウはじっと僕の顔を
見つめる

「お顔の色はだいぶ良くなりましたね
 体調はいかがですか?」

「うん、いいよ
 今日は念のため、大人しくしてるだけだから」

「安心しました」

「そうだ、ディーから手紙もらったんだ」

「・・ディーから、ですか?」

空いた間に、ちょっと引っかかりながらも
手紙を差し出した

「うん、これ」

「拝見しても?」

「いいよ」

手紙を見たロウの表情は、戸惑いが増していく

「あの、これ、本当にディーが?」

「本当だ
 マーシュの目の前で書いたそうだ」

信じられない、といった表情で手紙を
見返している

「一族では、字は習わないのか?」

「あっ、はい
 文字自体、使っている人を見た事はなかった
 と思います」

「え?」

じゃあ、ディーはどうして手紙を書けたの?

「そうか…」

「でもハルは書けないみたいだよね」

「一体、誰に教わったんでしょう…?」

呆然と、ロウが呟いた

「考えても仕方ない
 明日にでも問い詰める」

二人は何者なんだろうと、不安が増す

悪い人達じゃないと、信じたい…

「失礼します」

「どうした?」

「ハルより、カミュ様宛に手紙を預かりました」

マーシュからシリルに手渡された手紙が
僕に差し出された

「ありがとう」

なんて書いてあるのか、ドキドキしながら
封を開けた

『カミュ殿へ
 手紙 ありがとう
 腕輪 喜ぶ 嬉しい
 まだ 書けない 練習する
 カミュ殿 休む』

ふふふっと笑いがこぼれた

「何と書いてあったんだ?」

「ハルっぽいよ」

手紙を渡すと、それを見たシリルは眉をしかめ
手紙をロウに渡す

「ディーとは雲泥の差だな」

「単語の羅列だもんね」

だけど、嬉しい

拙い字だけど、一生懸命書いてくれたんだろうと
想像できる

「ですが、意味はなんとか伝わりますね」

「うん」

最後に受け取ったロウは、苦笑しながら
僕に手紙を返した

「お返事を書きますか?」

「ううん、やめとく」

書きたい気持ちはあるけど、ハルの言う通り
休もう

「シリル、明日ハル達の部屋に行くの?」

「そのつもりだが」

「僕も行っていい?」

「あぁ、かまわない
 だが、体調次第だぞ」

「うん、わかった
 もう大人しく寝る」

「では、私は隣の部屋にいる
 何かあったら呼ぶんだぞ」

「うん」

「ロウ、後は頼む」

「かしこまりました」

ちょっと、強引だったかなと思いつつも
喜びの方が勝った

「明日が楽しみですね」

「うん」

客観的に見ろと言われたけれど、やっぱり
僕はハル達を信じよう

明日は何を話そうか、今からあれこれ
考えてしまう

「考え過ぎて、お熱を出さないように
 気をつけてくださいね」

「うっ、わかってる」

しょっちゅう寝込んでいるから否定できない

大人しくベッドに横になった



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