ミコのお役目

水木 森山

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第一章

英気を養い

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はしゃぎ過ぎず、ダラダラし過ぎず
意識すると意外と難しい一日を過ごして
翌朝を迎えた

熱もなく、怠さも良くなり
しっかりと朝食も食べられた

「ずいぶん張り切ってるな」

「そうかな?
 やっと会えるから、やっぱり嬉しいかも」

「まぁ、元気なのはいい事だ」

食後のお茶を飲みながら、ゆったりと過ごす

早く行きたい気持ちもあるけれど
前のような焦りはなくなって
ただワクワクと楽しみにしている自分がいた



「そろそろ行くか」

「うん」

シリルに続いて部屋を出る

二人がいる部屋の前で立ち止まると
シリルがこちらを振り返った

準備はいいかと目で問われた気がして
頷くと、頷き返された

コンコンコン

「カミュ様をお連れした
 入るぞ」

「どうぞ、お入り下さい」

扉の向こうからディーの返事が返ってきて
つい、シリルと顔を見合わせてしまった

コホン、と咳払いしたシリルが扉を開けて
部屋に入る

「来たかっ」

嬉しそうな表情を隠しもせず、ハルは
立ち上がって出迎えてくれた

相変わらず腕にディーを抱えている

「おはようございます」

「あっ、おはようゴザイマス」

「おはよう」

ディーが抱えられたまま、深々と頭を下げるのを
まねて、ハルも挨拶をするのが微笑ましい

シリルが引いてくれたイスに座ると
ハルも座った

「ロウも座りなさい」

意外にもお茶を出し終えたロウにシリルが
声をかけた

「はい
 失礼します」

あれ?

いつもなら遠慮しそうなロウが
すぐに座った

意外に思って眺めていたら、隣に座る
ハルの表情がパッと明るくなったのを見て
納得する

ハル達の機嫌をとるためにロウを隣に
座らせたんだ

そんな事しなくても、ハル達なら話して
くれると思うけど

別に悪い事してる訳ではないんだけど
なんだかモヤモヤしてしまう

「カミュ殿、体調は良いのか?」

嬉しそうな表情のまま話しかけられ
まぁいいかと気持ちを切りかえる

「うん、もう大丈夫」

「そうか
 その、手紙、嬉しかった
 ありがとう」

モジモジしながら、お礼を言う姿に
何かを企んでる様子は見られず
僕も素直な気持ちを言葉にできた

「僕も、返事がもらえて嬉しかったよ
 ありがとう」

「そうかっ」

また、パッと明るく笑った

「お陰様で、ハルが文字を学びたいと
 言う様になりました
 わたくしからも感謝申し上げます」

「・・有る、知らぬ」

両手を胸に当て深々と頭を下げたディーに
対し、ハルは口を尖らせた

「そうでしたね
 もっと、手紙を書きたくないですか?」

「書きたい!」

「では、頑張って練習しましょうね」

「うむ」

「ディーは、誰に教わったの?」

微笑ましいやり取りに、疑問を呈したのは
ロウだった

この雰囲気がこわれるのではないかと
ヒヤリとする

「外から来たお兄様に教わりました」

「外から?」

「はい、お兄様が居なくなって一月位
 でしょうか
 お父様が突然、怪我をした男性を
 部屋に連れて来たんです」

「叔父上が?」

「詳しい事は分かりませんが、本人に
 よるとマモノに襲われ、気づいたら
 此処に居たと聞いております」

「その人の名は?」

二人の会話にシリルが割って入る

「ヨソモノ様です」

「は?」
「へ?」

それって、名前なの?

「本人が、そう言ったの?」

固まった僕達の代わりに、ロウが質問する

「はい
 何とお呼びすれば良いか問いましたら
 その様に呼んでと言われました」

微妙な空気が漂い、ディーはちょっと
首を傾げる

「その人物の髪の色は?」

その人が本当に存在するか気になるのか
シリルは質問を続けた

「白髪でした」

「瞳の色は?」

「青と緑を混ぜた様な色です」

「そうか…」

「わたくしからも質問を宜しい
 でしょうか?」

「なんだ?」

「ヨソモノ様とお呼びするのは
 可笑しな事なのでしょうか?」

「・・そうだな
 私の知る限り、そんな名前はいない
 蔑称として使われる事が多い」

一拍あいた後、ディーはバッと顔だけ
ロウに向けた

ビクッとなりながらもロウは頷いた

ちょっと、おもしろいかも…

「そうだね
 私もこちらに馴染むまでは、よそ者と
 笑われた事があるよ」

「わたくし、何て事を…」

両手で顔を覆って俯いてしまった

けど、誰もディーを責められないと思う

「本人がそう呼べと言ったのだから
 気にしなくていいだろう」

シリルも同じように思ったらしく
フォローしてくれたので、うんうんと
頷いて同意する

「恥を忍んでお聞きしますが
 わたくし達は此方で無礼な態度は
 ございませんでしたか?」

無礼かぁ

本来なら僕達は身分の関係で話す事
なんてない

そもそもこの二人は、この国の住民と
いえるのかもあやしい

それなのに言葉を交わす事を許して
いるのは、僕の我儘でしかない

どうするのだろうとシリルを見れば
やはり、難しい顔をしていた

「はっきり言えば、無礼だらけだな」

本当にはっきり言った…

二人は言葉もなく、固まっている

「しかし、これは公の…
 この場ならば許される範囲内だ」

「この場…?」

ディーは表情が見えないからわからないけど
ハルは困惑している

その一方で、僕はほっとしていた

これまでの様に、気安い話し方の方が
僕は嬉しいから

「咎められない限り、これまで通りでいい
 貴方達に今すぐ常識は求めていない」

「我ら、学ぶ出来る」

口を尖らせたハルに、シリルは溜息を吐いた















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