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第三章 出会い
りんごのタルト
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「どうぞ、召し上がってください」
ハナはりんごが沢山乗ったタルトと紅茶をナナの目の前に置いた。お礼、と言っていたが、そんなもの、お互い様なのだからお詫びされることでもない。しかし、目の前に置かれたりんごのタルトはとても美味しそうで、ナナ食前の挨拶もそこそこにタルトを口へ運んだ。
「おいしい!」
「ほんと?よかった」
さすがは果物屋。りんごは甘く、少し酸味もあって、ナナはぺろりと平らげてしまった。
「ありがとう、とっても美味しかったよ。ハナが作ったの?」
「はい!お口にあったようで良かったです」
ハナは、褒められたことが嬉しかったのか、少し照れくさそうに笑った。可愛い子だなあと感じながら紅茶を口に含むと店の方から声が聞こえた。
「すみませーん!」
「あれ?お父さんいないのかな‥‥はーい!ごめんなさい、少し待っててください」
そう言い残して、ハナは客人の方へ向かった。聞こえてきた声が聞き覚えのあるような気がして、ナナは悪いこと、と思いながらも、こっそりと店の様子を伺うことにした。
そっと店の方を覗きみると、ハナは何やら男性と話しているようだった。
「これを君に渡したくて。受け取ってくれる?」
「かわいい…でも、いいの?私なんかにこんな…」
どうやら、なにか受け取ったようだ。相手は誰なのか、のぞき込んでいる場所からは死角になり、見えない。
「君だからだよ。ああ、もう時間だ、行かなきゃ」
「そう…」
「…そんな悲しそうな顔しないで。またすぐにくるよ。じゃあ、またね、愛してる」
そんなセリフを残して、ドアの開閉音が聞こえた。ハナが戻ってくる。
「彼氏?」
盗み聞いたことを悪びれる事もなく聞くと、ハナは顔を赤らめた。その首元にはさっきは無かったネックレスが光る。
「可愛いプレゼントじゃん」
「ふふ、ありがとうございます」
とても幸せそうな彼女の表情につられ、顔が緩む。
しかし、さっきの男の声…。どこかで聞き覚えがある。この街の人間だろうか。そんなことを考えながら、残っていた紅茶を飲み干した。
「ありがとう、美味しかった」
「そんな、お礼なんて!でも、こんな言い方駄目なのかも知れないですけど、ぶつかったのがナナさんで良かった。今日はとても楽しかったです」
ふわりと笑うハナにつられ、笑う。そして、別れを告げ、帰路についた。流石にハチも帰ってる頃だろう。はぐれた妹のことを思い出しながら歩く。
「あ、兄さん」
ハチのことを考えて歩いていたせいか、ハチの声が聞こえた気がして、少し笑ってしまった。シスコンって訳じゃないはずなんだけどなあ。そう自嘲しながら歩みを進めようとすると
「ちょっと、兄さん!」
さらにハチの声が聞こえた。振り向くとそこにはハチの姿があった。
「ああ、ハチ!買い物終わった?」
「ああ、ハチ!じゃない!いつも突然いなくならないでって言ってるでしょう!?」
「あはは、ごめんて」
そんなやり取りをしていると、隣から笑い声が聞こえた。ハチの姿を見つけ、それしか気にしていなかったが、どうやら隣に人がいたようだ。
「いつも、本当に仲がいいね」
「あれ、坊ちゃ……ミヤさんじゃないですか」
本人に坊ちゃんというと怒られるので言いかけた言葉を飲み込んで言い直す。それを知ってか知らずか笑う、ミヤの両手には重そうな荷物がいくつも。よく見ると、中身は薬の材料のようだ。
「こんな重そうな荷物を持ってるハチさんが見えてね。いてもたってもいられなくて」
持たせてもらってるんだ、と両手の荷物を持ち上げる。それは荷物を持たずにどこかへフラフラといなくなってしまった兄への嫌味ではなく、本心から心配しているような言葉だった。
「ああ、すいません。うちの妹がご迷惑を…あ、荷物貰います」
謝罪をして荷物を引き取るとミヤは何故かありがとうなんてお礼を言う。本当に、お人好しというか、なんというか。
しかし、ミヤは身分の高い貴族だったはず。それが何故こんなところに。と、ひとつの疑問が浮かんだが、まあ、そういう事もあるんだろうと、特に何かを聞くこともなくその疑問は忘れ去ってしまった。
「ああ、そうだ。君たちはリンゴは好き?」
そう聞きながら、ミヤが唯一持っていた自分の荷物の中からリンゴを二つ、取り出した。
「さっき、知り合いからリンゴを沢山もらってね、私一人じゃ食べきれないし、貰ってくれないかい?」
リンゴ、と聞いて、さきほど食べたハナのリンゴタルトを思い出して思わず涎が出かける。有り難くリンゴを受け取り、ミヤと別れるとハチが口を開いた。
「美味しそうなリンゴだね。帰ったら剥いて食べようか」
「ん~、なあ、ハチ」
「ん?」
「リンゴでタルトとか作れないの?」
「は?タルト?」
なぜ突然タルトが出てきたのか、不思議そうに目をパチクリさせる妹が可愛くて
「やっぱなんでもない、早く帰ろう」
なんて可愛い妹が剥いてくれるリンゴを楽しみにしながら帰宅することにした。
ハナはりんごが沢山乗ったタルトと紅茶をナナの目の前に置いた。お礼、と言っていたが、そんなもの、お互い様なのだからお詫びされることでもない。しかし、目の前に置かれたりんごのタルトはとても美味しそうで、ナナ食前の挨拶もそこそこにタルトを口へ運んだ。
「おいしい!」
「ほんと?よかった」
さすがは果物屋。りんごは甘く、少し酸味もあって、ナナはぺろりと平らげてしまった。
「ありがとう、とっても美味しかったよ。ハナが作ったの?」
「はい!お口にあったようで良かったです」
ハナは、褒められたことが嬉しかったのか、少し照れくさそうに笑った。可愛い子だなあと感じながら紅茶を口に含むと店の方から声が聞こえた。
「すみませーん!」
「あれ?お父さんいないのかな‥‥はーい!ごめんなさい、少し待っててください」
そう言い残して、ハナは客人の方へ向かった。聞こえてきた声が聞き覚えのあるような気がして、ナナは悪いこと、と思いながらも、こっそりと店の様子を伺うことにした。
そっと店の方を覗きみると、ハナは何やら男性と話しているようだった。
「これを君に渡したくて。受け取ってくれる?」
「かわいい…でも、いいの?私なんかにこんな…」
どうやら、なにか受け取ったようだ。相手は誰なのか、のぞき込んでいる場所からは死角になり、見えない。
「君だからだよ。ああ、もう時間だ、行かなきゃ」
「そう…」
「…そんな悲しそうな顔しないで。またすぐにくるよ。じゃあ、またね、愛してる」
そんなセリフを残して、ドアの開閉音が聞こえた。ハナが戻ってくる。
「彼氏?」
盗み聞いたことを悪びれる事もなく聞くと、ハナは顔を赤らめた。その首元にはさっきは無かったネックレスが光る。
「可愛いプレゼントじゃん」
「ふふ、ありがとうございます」
とても幸せそうな彼女の表情につられ、顔が緩む。
しかし、さっきの男の声…。どこかで聞き覚えがある。この街の人間だろうか。そんなことを考えながら、残っていた紅茶を飲み干した。
「ありがとう、美味しかった」
「そんな、お礼なんて!でも、こんな言い方駄目なのかも知れないですけど、ぶつかったのがナナさんで良かった。今日はとても楽しかったです」
ふわりと笑うハナにつられ、笑う。そして、別れを告げ、帰路についた。流石にハチも帰ってる頃だろう。はぐれた妹のことを思い出しながら歩く。
「あ、兄さん」
ハチのことを考えて歩いていたせいか、ハチの声が聞こえた気がして、少し笑ってしまった。シスコンって訳じゃないはずなんだけどなあ。そう自嘲しながら歩みを進めようとすると
「ちょっと、兄さん!」
さらにハチの声が聞こえた。振り向くとそこにはハチの姿があった。
「ああ、ハチ!買い物終わった?」
「ああ、ハチ!じゃない!いつも突然いなくならないでって言ってるでしょう!?」
「あはは、ごめんて」
そんなやり取りをしていると、隣から笑い声が聞こえた。ハチの姿を見つけ、それしか気にしていなかったが、どうやら隣に人がいたようだ。
「いつも、本当に仲がいいね」
「あれ、坊ちゃ……ミヤさんじゃないですか」
本人に坊ちゃんというと怒られるので言いかけた言葉を飲み込んで言い直す。それを知ってか知らずか笑う、ミヤの両手には重そうな荷物がいくつも。よく見ると、中身は薬の材料のようだ。
「こんな重そうな荷物を持ってるハチさんが見えてね。いてもたってもいられなくて」
持たせてもらってるんだ、と両手の荷物を持ち上げる。それは荷物を持たずにどこかへフラフラといなくなってしまった兄への嫌味ではなく、本心から心配しているような言葉だった。
「ああ、すいません。うちの妹がご迷惑を…あ、荷物貰います」
謝罪をして荷物を引き取るとミヤは何故かありがとうなんてお礼を言う。本当に、お人好しというか、なんというか。
しかし、ミヤは身分の高い貴族だったはず。それが何故こんなところに。と、ひとつの疑問が浮かんだが、まあ、そういう事もあるんだろうと、特に何かを聞くこともなくその疑問は忘れ去ってしまった。
「ああ、そうだ。君たちはリンゴは好き?」
そう聞きながら、ミヤが唯一持っていた自分の荷物の中からリンゴを二つ、取り出した。
「さっき、知り合いからリンゴを沢山もらってね、私一人じゃ食べきれないし、貰ってくれないかい?」
リンゴ、と聞いて、さきほど食べたハナのリンゴタルトを思い出して思わず涎が出かける。有り難くリンゴを受け取り、ミヤと別れるとハチが口を開いた。
「美味しそうなリンゴだね。帰ったら剥いて食べようか」
「ん~、なあ、ハチ」
「ん?」
「リンゴでタルトとか作れないの?」
「は?タルト?」
なぜ突然タルトが出てきたのか、不思議そうに目をパチクリさせる妹が可愛くて
「やっぱなんでもない、早く帰ろう」
なんて可愛い妹が剥いてくれるリンゴを楽しみにしながら帰宅することにした。
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