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ライアとヴィルはふたりぼっち。白い空間で向かい合っていました。無数の光の糸に縛られたライア。ヴィルはその頬をそっと撫でました。
結論からいえば、2人はとある《ゲーム》に参加することになりました。
「ルールは簡単。おまえ達がおまえ達であることを楽しむこと、それだけよ。制限時間は設けない、この空間もおまえ達に譲りましょう」
そのゲームに参加すれば、この空間に自由に人の意識を連れてくる能力が持てる、そう女神様は説明し、簡単でしょう?と笑いました。
「それが出来れば私の力を使って村が燃える前の時間に戻してあげましょう」
そう言った次の瞬間、白い世界は炎に包まれ、真っ赤に染まる。聞こえる悲鳴は幻か、耳を塞ぎたくなるほどのものでした。そんな中、ひとつの声が聞こえました。
「ヴィル…ライア…今頃…元気にしとるだろうか」
それは紛れもなくおじいさんの声でした。さらに、
「そうねえ…きっと、どこかで…笑っているわ」
と、おばあさんの声も聞こえます。声の方に視線を向けると、今にも炎に飲まれそうな2人の姿。おじいさん!おばあさん!とヴィルは声を荒らげましたがその声は届かず、あっという間に老夫婦は炎にのまれてしまいました。
するとまた、白い空間が目の前に広がり、あまりの白さに目が眩みました。
「しかし、一つだけ。ヴィル、ライア、2人の意識をひとつの人格に持たせる」
つまりは、二人でひとつの体を有することになるんだと女神様は話しました。
「さあ、それでは目を瞑って。次に目を開けた時、それがゲームスタートの合図だよ」
ヴィルが理解する前にパチン、とひとつ指を鳴らしました。
「まあ、やって見ればわかるさ。おまえ達…いや、お前の名前は[ラヴィリア]。ふふ、健闘を祈るよ」
「待っ…て、まだっ…聞きたい、こと、が…」
女神様を掴もうとヴィルは手を伸ばしましたが、そこで意識は途切れました。
次に目を覚ました時、目の前には変わらず光の糸に縛られたライアがいました。しかし、女神様はおらず、二人ぼっちでした。そして、冒頭へ。
力なく垂れたライアの手を握ると、ヴィルは頭の中に違和感を感じました。何かが聞こえるのです。集中してみると、それはライアの声であることに気づきました。
「ヴィル、聞こえる?」
「ライア…?」
ヴィルは目の前のライアに目を向けると、彼女は尚も、目を瞑ったまま、ピクリともしていません。
「ふふ、やっぱり不思議だよね…私今あなたの中にいるみたい」
ライアの声はとても楽しそうでした。
「ライ…」
「あ、でも、体の主導権はヴィルみたい!ほら、今も動かそうと思ってるけど…うう…ん…やっぱり指一本動かないもの」
「ライア」
「あの人が2人でひとつの体~なんて言い出した時は全然意味わかんなかったけどさ」
「ライア…っ」
「こうしてヴィルと一緒にいられるならこれも悪くな」
「ライア!!!!」
ヴィルはライアの話を遮るように大声で彼女の名前を呼びました。ライアは驚いたのか、その後に続く彼女の声は聞こえません。
「…ライアは、こんな風に…やりたい放題されて…腹が立たないの…?」
出来るだけ冷静に、そう考えると怒気を含んだその声は震え今にも破裂してしまいそうな程でした。
しかし、彼女からの返答はありません。
「ライ…っ」
「もちろん、嫌に決まってるじゃない」
1拍置いて、彼女は静かに話し始めました。
「どうして私だけこんな目にあうの、ヴィルは自由に動けるのに。永遠にこのままなの?嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!!!!」
一息で言い終えるとまた静けさに包まれます。ヴィルはなんと答えればいいか、正解が思い浮かびません。
「…なんて、」
再び聞こえた彼女の声は何かを押し殺したように震えていました。丁度、さっきのヴィルのように。
「ヴィルは悪くないのに、当たってごめんね。今まで、ヴィルの方がしんどかったのにね」
次は私の番、と自分に言い聞かせるように話すと、ライアはさて!と務めて明るい声で話し出しました。
「悩んでも仕方ないし、私も早く動きたい。あの人は、これをゲームだと言っていた。なら、さっさと終わらせて、おじいさんやおばあさんも生き返らせてもらって、もう一度、やり直そう」
ふと、動くはずのないライアの体を見ると、彼女は口元に笑みを浮かべていました。
「まずは、何からしようか」
「そうね、私たちであることを楽しむってなんだろうね」
「ところで、服、着替えたいな」
ヴィルはぴらりと何故か自分が着ていたスカートの裾を摘むと、可愛いからだめと、どこか楽しそうなライアの声が聞こえました。
「でも、本当に2人でひとつの体なんだね…」
「ね、早いとこ戻してもらわなきゃ」
「それじゃあ、それまでの間…」
「「よろしくね、ラヴィリア」」
2人は、ラヴィリアはその後、自分たちが楽しいことを探しました。カードゲームに、好きなだけ食べたお菓子。しかしゲームが終了されることはありませんでした。
だんだんと2人だけの遊びに飽きてきた2人は楽しいこととは何かと考えました。そして、思い浮かんだのはあの忌々しい男の1番楽しそうだった時の顔でした。
「「そうだ、どうせゲームが終わらないならば」」
「イタズラしちゃえ」
こうしてラヴィリアは次第に夢に現れる邪悪神として人々の間で語り継がれる存在となりましたとさ。
おしまい
結論からいえば、2人はとある《ゲーム》に参加することになりました。
「ルールは簡単。おまえ達がおまえ達であることを楽しむこと、それだけよ。制限時間は設けない、この空間もおまえ達に譲りましょう」
そのゲームに参加すれば、この空間に自由に人の意識を連れてくる能力が持てる、そう女神様は説明し、簡単でしょう?と笑いました。
「それが出来れば私の力を使って村が燃える前の時間に戻してあげましょう」
そう言った次の瞬間、白い世界は炎に包まれ、真っ赤に染まる。聞こえる悲鳴は幻か、耳を塞ぎたくなるほどのものでした。そんな中、ひとつの声が聞こえました。
「ヴィル…ライア…今頃…元気にしとるだろうか」
それは紛れもなくおじいさんの声でした。さらに、
「そうねえ…きっと、どこかで…笑っているわ」
と、おばあさんの声も聞こえます。声の方に視線を向けると、今にも炎に飲まれそうな2人の姿。おじいさん!おばあさん!とヴィルは声を荒らげましたがその声は届かず、あっという間に老夫婦は炎にのまれてしまいました。
するとまた、白い空間が目の前に広がり、あまりの白さに目が眩みました。
「しかし、一つだけ。ヴィル、ライア、2人の意識をひとつの人格に持たせる」
つまりは、二人でひとつの体を有することになるんだと女神様は話しました。
「さあ、それでは目を瞑って。次に目を開けた時、それがゲームスタートの合図だよ」
ヴィルが理解する前にパチン、とひとつ指を鳴らしました。
「まあ、やって見ればわかるさ。おまえ達…いや、お前の名前は[ラヴィリア]。ふふ、健闘を祈るよ」
「待っ…て、まだっ…聞きたい、こと、が…」
女神様を掴もうとヴィルは手を伸ばしましたが、そこで意識は途切れました。
次に目を覚ました時、目の前には変わらず光の糸に縛られたライアがいました。しかし、女神様はおらず、二人ぼっちでした。そして、冒頭へ。
力なく垂れたライアの手を握ると、ヴィルは頭の中に違和感を感じました。何かが聞こえるのです。集中してみると、それはライアの声であることに気づきました。
「ヴィル、聞こえる?」
「ライア…?」
ヴィルは目の前のライアに目を向けると、彼女は尚も、目を瞑ったまま、ピクリともしていません。
「ふふ、やっぱり不思議だよね…私今あなたの中にいるみたい」
ライアの声はとても楽しそうでした。
「ライ…」
「あ、でも、体の主導権はヴィルみたい!ほら、今も動かそうと思ってるけど…うう…ん…やっぱり指一本動かないもの」
「ライア」
「あの人が2人でひとつの体~なんて言い出した時は全然意味わかんなかったけどさ」
「ライア…っ」
「こうしてヴィルと一緒にいられるならこれも悪くな」
「ライア!!!!」
ヴィルはライアの話を遮るように大声で彼女の名前を呼びました。ライアは驚いたのか、その後に続く彼女の声は聞こえません。
「…ライアは、こんな風に…やりたい放題されて…腹が立たないの…?」
出来るだけ冷静に、そう考えると怒気を含んだその声は震え今にも破裂してしまいそうな程でした。
しかし、彼女からの返答はありません。
「ライ…っ」
「もちろん、嫌に決まってるじゃない」
1拍置いて、彼女は静かに話し始めました。
「どうして私だけこんな目にあうの、ヴィルは自由に動けるのに。永遠にこのままなの?嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!!!!」
一息で言い終えるとまた静けさに包まれます。ヴィルはなんと答えればいいか、正解が思い浮かびません。
「…なんて、」
再び聞こえた彼女の声は何かを押し殺したように震えていました。丁度、さっきのヴィルのように。
「ヴィルは悪くないのに、当たってごめんね。今まで、ヴィルの方がしんどかったのにね」
次は私の番、と自分に言い聞かせるように話すと、ライアはさて!と務めて明るい声で話し出しました。
「悩んでも仕方ないし、私も早く動きたい。あの人は、これをゲームだと言っていた。なら、さっさと終わらせて、おじいさんやおばあさんも生き返らせてもらって、もう一度、やり直そう」
ふと、動くはずのないライアの体を見ると、彼女は口元に笑みを浮かべていました。
「まずは、何からしようか」
「そうね、私たちであることを楽しむってなんだろうね」
「ところで、服、着替えたいな」
ヴィルはぴらりと何故か自分が着ていたスカートの裾を摘むと、可愛いからだめと、どこか楽しそうなライアの声が聞こえました。
「でも、本当に2人でひとつの体なんだね…」
「ね、早いとこ戻してもらわなきゃ」
「それじゃあ、それまでの間…」
「「よろしくね、ラヴィリア」」
2人は、ラヴィリアはその後、自分たちが楽しいことを探しました。カードゲームに、好きなだけ食べたお菓子。しかしゲームが終了されることはありませんでした。
だんだんと2人だけの遊びに飽きてきた2人は楽しいこととは何かと考えました。そして、思い浮かんだのはあの忌々しい男の1番楽しそうだった時の顔でした。
「「そうだ、どうせゲームが終わらないならば」」
「イタズラしちゃえ」
こうしてラヴィリアは次第に夢に現れる邪悪神として人々の間で語り継がれる存在となりましたとさ。
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