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目の前の女性は、2人を男と老夫婦の元へ連れてきた女神様でした。女神様は呆然とするライアとヴィルを見てくすくすと笑いました。
「ああ、可愛い私の子。こんなに大きく立派になって」
女神様は2人を抱きしめようとしましたが、ヴィルがそれを押しのけて自分たちと女神様との距離を取りました。すると女神様はすっと表情を変え言いました。
「…人間に育てさせたのはやっぱり間違いだったかしら」
その冷たい目はなるほど流石は女神様。それだけで人を殺してしまえそうな視線でした。2人は足を竦ませながらも警戒を解こうとはせず女神様を睨みつけました。
「人間は弱い。いざとなれば自分が一番可愛いもの。おまえ達は人間の弱さを持ってしまった」
「どういうことだ」
「どういうこともなにも、おまえ達がこの村を焼け野原にしちゃったんじゃない」
腕を広げて言う女神はどこか嬉しそうで、それは後ろにある焼け野原とはとても似合わしくないものでした。
「ふう……けれど、私だって我が子は可愛いものだもの、チャンスを上げましょう」
瞬きをした一瞬でしたた。目を閉じて、開く、この一瞬で目の前の焼け野原はあとかたもなく消え去り、その代わりにただ、ただ何も無い真っ白な空間がありました。先程の女神様はおらず、2人きり、そのうち白に飲み込まれてしまいそうな錯覚をおぼえながら、2人はキョロキョロと周囲を見渡しました。壁などは見えないのか、存在しないのか、少なくとも見渡せる範囲に把握することは出来ません。
「やあ、おかえり」
先程まで姿を消していた女神様が突然目の前に現れ、それはそれは美しい笑顔で笑いました。
「ここはおまえ達が生まれた場所だよ」
女神様はすっとライアの手を取りました。ライアは自分の身に起こったことが理解できませんでした。なぜなら、彼女は女神様を警戒していたのです。近づかせないように、近づかないように。それなのに。
「ライア!」
ヴィルも咄嗟に手を伸ばしましたがもうその場にはおらず、少し離れたところに女神様に後ろから抱かれるように立っていました。
「本当に鈍いわね…ねえライア?」
「っ…う…」
後ろから回される手はライアの首を圧迫するように置かれ、ライアは満足に声を出せません。
「くそ…っライアを離せよ!!」
「ええ、そうするつもりよ」
そう言うと、女神様の手はスルリとライアから引き、ライアは圧迫からは開放されたものの、急に流れ込んできた空気にむせ返りました。その様子をまた楽しそうに眺める女神様は3、2…とカウントダウンをはじめ、そして0と数えた瞬間、ライアを無数の光の糸が縛り上げました。
「ヴィル!」
「ライア!」
2人は手を伸ばしましたが、もうわずか数センチのところでライアの腕は力を失いだらりと垂れました。そしてその体も崩れ落ちるように倒れましたが、光の糸が支えとなり、座り込むような形で項垂れました。
「ライアに何をした!」
「チャンスをあげると言ったでしょう」
ライアの隣にしゃがむとにこりと笑う女神様。慈愛に充ちたその笑顔に、ヴィルはぞくりと背筋を震わせました。
「さあ、交渉を始めましょう」
「ああ、可愛い私の子。こんなに大きく立派になって」
女神様は2人を抱きしめようとしましたが、ヴィルがそれを押しのけて自分たちと女神様との距離を取りました。すると女神様はすっと表情を変え言いました。
「…人間に育てさせたのはやっぱり間違いだったかしら」
その冷たい目はなるほど流石は女神様。それだけで人を殺してしまえそうな視線でした。2人は足を竦ませながらも警戒を解こうとはせず女神様を睨みつけました。
「人間は弱い。いざとなれば自分が一番可愛いもの。おまえ達は人間の弱さを持ってしまった」
「どういうことだ」
「どういうこともなにも、おまえ達がこの村を焼け野原にしちゃったんじゃない」
腕を広げて言う女神はどこか嬉しそうで、それは後ろにある焼け野原とはとても似合わしくないものでした。
「ふう……けれど、私だって我が子は可愛いものだもの、チャンスを上げましょう」
瞬きをした一瞬でしたた。目を閉じて、開く、この一瞬で目の前の焼け野原はあとかたもなく消え去り、その代わりにただ、ただ何も無い真っ白な空間がありました。先程の女神様はおらず、2人きり、そのうち白に飲み込まれてしまいそうな錯覚をおぼえながら、2人はキョロキョロと周囲を見渡しました。壁などは見えないのか、存在しないのか、少なくとも見渡せる範囲に把握することは出来ません。
「やあ、おかえり」
先程まで姿を消していた女神様が突然目の前に現れ、それはそれは美しい笑顔で笑いました。
「ここはおまえ達が生まれた場所だよ」
女神様はすっとライアの手を取りました。ライアは自分の身に起こったことが理解できませんでした。なぜなら、彼女は女神様を警戒していたのです。近づかせないように、近づかないように。それなのに。
「ライア!」
ヴィルも咄嗟に手を伸ばしましたがもうその場にはおらず、少し離れたところに女神様に後ろから抱かれるように立っていました。
「本当に鈍いわね…ねえライア?」
「っ…う…」
後ろから回される手はライアの首を圧迫するように置かれ、ライアは満足に声を出せません。
「くそ…っライアを離せよ!!」
「ええ、そうするつもりよ」
そう言うと、女神様の手はスルリとライアから引き、ライアは圧迫からは開放されたものの、急に流れ込んできた空気にむせ返りました。その様子をまた楽しそうに眺める女神様は3、2…とカウントダウンをはじめ、そして0と数えた瞬間、ライアを無数の光の糸が縛り上げました。
「ヴィル!」
「ライア!」
2人は手を伸ばしましたが、もうわずか数センチのところでライアの腕は力を失いだらりと垂れました。そしてその体も崩れ落ちるように倒れましたが、光の糸が支えとなり、座り込むような形で項垂れました。
「ライアに何をした!」
「チャンスをあげると言ったでしょう」
ライアの隣にしゃがむとにこりと笑う女神様。慈愛に充ちたその笑顔に、ヴィルはぞくりと背筋を震わせました。
「さあ、交渉を始めましょう」
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