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ポンコツなおっさんに召喚されてしまった。

13話 オンボロ船

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「え? 今誰のことポンコツって言ったんじゃ? もしかしてわしの事か??」
 
「この場にポンコツもおっさんも、一人しかいないじゃない。 
 で、おっさんがポンコツな事が何で貴方が帰らない理由になるのかしら??」
 
「えぇ……わし、ポンコツなんて初めて言われたんじゃが。 本当にそう思っているのか? ゆ、結衣殿もか?」
 
 おっさんの質問に結衣ちゃんは気まずそうに視線を逸らす。 

 その動作が答えになっている事に気付いたおっさんは、ガクッと肩を落としていた。
 
 多分だけど今までも言われていると思うぞ……影では。
 
「ちょっと! 聞いてるの??」
 
「あ、あぁ。 聞いてるさ。 えっとだな……とりあえず青蜜もおっさんがポンコツなのはわかってくれてるんだよな??」
 
「えぇ、それは間違ないでしょうね」
 
「も、もうわかったからあんまりポンコツ言うのはやめて貰えんかの? 流石に悲しいぞわしも」
 
 す、すまんなおっさん。 後でちゃんと謝るから……今回は我慢してくれ。
 
「だったらさ。 青蜜は俺達が帰った後、本当にこのポンコツのおっさんが一人で世界を救うなんて事出来ると思えるのか??」
 

「し、失礼な!! ワシにだって意地があるわい! 世界を救う事など造作もなっ」
 
「思えないわ、おっさんの力だけでは不可能でしょうね」
 
「あ、青蜜殿……」 
 
「だけど、おっさんはこの国の王様なんでしょ?? 正直信じられないけど、あの女がそう言ってたし、おっさんも否定しなかったしね。 
 まどかちゃんはまだこの部屋から出てないの?? 
 出てないならわからないかも知れないけど、この国結構栄えているのよ。
 

 人も大勢いるみたいだし、おっさんの力だけじゃ無理でも誰かに協力して貰えるなら不可能じゃないんじゃないかしら?
 少なくともこの世界に詳しくない私達よりは役にも立つと思うわよ??」
 
 まさにその通りだ、青蜜の言葉は何一つ間違っていない。 
 
 王様だったらきっと色々な人から知恵を出して貰えるだろうし、協力を得るのも難しくないだろう……皆のイメージする普通の王様だったら。
 
 俺はおっさんに目を向ける。 
 
 今でさえ傷ついているおっさんをこれ以上の事を言うのは気が引けるな……。 

 でも言わないといけないんだ、許してくれよ! おっさん!
 
「こ、これは俺の勘なんだけどさ。 今この世界におっさんに協力してくれる人なんているのか??」
 
「なっ、なんて事を言うんじゃ!! わしは仮にも一国の王じゃぞ?? 
 わしに協力してくれる者達など国中を探せば沢山おるわい!!」
 
 おっさんは俺の言葉にムキになって反論する。 

 その言葉が既におっさんの周りには誰も頼る人などいないと言う証明になっているとも知らずに。
 
「な、なるほど。確かにまどかちゃんが帰らないって言った理由がわかったわ……要はまた同じ事を繰り返すだけだって言いたいのね??」
 
「私も納得しました……まどかさん帰るのを躊躇した理由が」
 
 俺の言いたい事を即座に理解してくれた二人はほぼ同時にため息を吐く。 
 
 まぁこの反応が普通だよな……。
 
「え? 一体どう言う事じゃ?? 話の流れがまるでわからんぞ」
 
 一人だけわかっていないおっさんを見て俺も一緒になってため息を吐く。 
 
 乗り掛かった船とは言え、流石にオンボロすぎるんじゃないだろうか。
 
「おっさん、さっき探せばいくらでもいるって言ったけどさ。 どうやって探すつもりなんだ??」
 
「そんなの当然じゃろ、また一から世界を救う方法を知っている者を見つけるだけじゃ! あっ! もしやお主らわしがまた占い師に騙されると思っておるのか?? 
 はぁー、舐められたもんじゃな。 わしだってそう馬鹿ではない、次は占い師なんぞに頼りはせぬさ!!」
 
「次はどんな人を探そうとしているのかしら??」
 
「おお! 良くぞ聞いてくれたのぅ青蜜殿! 次はな、超能力者を探そうと思っておる!! 
 考えてみれば簡単な話じゃったのじゃよ! 超能力者ならば未来を見る事が出来るじゃろ??

 その者にどうやったら良いのかを聞くのが一番だとお主らも思わぬか?? しかも今度は確実じゃ! 
 だってその者は未来を見てきたのだからな! 間違えようがないわい!!」
 
「も、もし仮にその超能力者さんが見つかったとして、世界を救う為には異世界から来る三人の勇者が必要です! みたいな事を言われたら王様はどうするのですか??」
 
「ふむ、確かにそれだと問題があるのぅ……」
 
「そ、そうですよね! 流石にもう誰かを召喚したりなんてしませんよね!!」
 
「ん? いやいや違うぞ結衣殿、問題はあの機械では三人までしか呼べない事なのじゃよ。 
 じゃから、もしそうなった場合には心苦しいがお主達には強制的に帰って貰うしか無くなるのぅ! まぁこれも世界を救う為じゃ。 わかってくれるな??」
 
 思ってた以上のおっさんのポンコツ具合に質問した二人は言葉を失っていた。 
 
 ついさっきまで最大限のサポートをするって言ってた人が言う台詞じゃないもんな……。

 少しだけ耐性のあった俺はもうおっさんには話しかける事はやめた。

 青蜜と結衣ちゃんにはもう充分過ぎるほどに俺の気持ちは伝わっただろうから。
 
「って事で、俺はこの世界に残っておっさんの手伝いをしようと思っている。 勿論何の手掛かりもないし、どうするかも決めてないけど、このまま放っておくとほら、その、次の奴も困るだろ?」
 
「え、えぇそうね。 完全にまどかちゃんの言う通りだったわ」
 
「分かってくれて良かったよ。
 それでさここからは相談なんだけど、良かったら青蜜も結衣ちゃんも一緒に残ってくれないか??」
 
「えっ??」
 
「わ、私は良いですよ。 もし今回と同じ様な事が起こったら……あの人最悪殺されちゃうんじゃないかと心配になります。 世界を救う手助けは出来なくても王様に無駄な事を辞めさせる事くらいは出来そうですから」
 
「ありがとう結衣ちゃん。 青蜜はどうだ??」
 
「私は……」
 
 残りたい気持ちはあるのだろうけど、一度帰ると口にしたプライドからか、青蜜は手を絡み合わせながらもじもじと恥じらい、素直に自分の気持ちを言えない様だった。
 
「頼む青蜜! お前が手伝ってくれたら百人力なんだ!!」
 
 こう言う時は下手に出るに限る。 本当は煽っても良かったんだが、それで失敗したらここまでの話が何の意味もなくなっちゃうからな。 
 今回は我慢しておこう。
 
「し、仕方ないわね! まどかちゃんがそこまで言うなら協力してあげるわよ!!」

 
 口角を僅かに上げ嬉しそうな表情を浮かべる青蜜を見て、やっぱり悲しい顔よりこっちの方が良いと改めて思った。
 

 ふぅー、なんとか上手くいったな。

 だけど、やっぱり俺はアニメや漫画、他の異世界の男達の様な格好良い主人公にはなれそうも無いな。
 
 結局、俺は自分で決めた事を曲げてしまったのだ。 帰ると決めていたのに、自ら望んでこの世界に留まる事にしたんだから。
 
 
 間違えで召喚された俺と、出鱈目な嘘によって召喚された青蜜と結衣ちゃん、そしてポンコツのおっさん。
 この四人でこの世界を救う道を俺は選んだのだ。
 
 
 
 ……あれ? 本当にこれでこの先大丈夫なのだろうか??

 改めて考えてみると自分の判断に不安しか無い事に俺は気付いた。
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