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勇者に出会ってしまった。

17話 ゲームオーバーフラグ

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「ちょっと!! 何でみんな黙ってるのよ??」
 
 全員が呆然立ち尽くしていた最中、ルカが大きな声で叫ぶ。
 
「あの変な格好の人達はいつの時代の人になるの?? さっきも言ったけど私には随分と時代が進んだ様に見えるわよ??」
 
 ……あぁ、そうか。 ルカはこの世界の事は詳しくないもんな。
 
「えっーと……そうだな。 ルカの考えてる通りで間違いないよ、昨日の走馬灯の映像からはかなり時代が進んでるな」
 
「え?? 本当なの?? だとしたらそれって……」
 
「あぁ、かなりやばい状況だな」
 
 俺の言葉にルカは事態を把握したのか、それ以上は何も言わなかった。
 
 さてとどうしようかなこれ……と、とりあえず今の状況を整理するしかないよな。 
 
「青蜜、一体何がどうなってるとおもっ」
 
 青蜜の顔を見て俺は直ぐに口を閉じた。
 
 ……うん、完全に放心状態だわ。 青蜜だけじゃくてみんな目が死んでるし。 

 まぁ気持ちは分かるか、昨日あれだけ派手に戦ってたのに最悪な結果になってるんだもんな。 俺も参加してたら同じ状況になってたと思うし。
 
 よ、よし!! 今は俺1人で考えてみよう!! 精神的ダメージを負ってないのはこの場では俺しかいないみたいだしな。
 
 一旦呼吸を整え、俺はさっき見た映像を思い出す。
 
 詳しい事はわからないけど、火縄銃みたいな物を持ってたから多分戦国時代かな?? 
 まぁかなり安易な考え方だけど……ってかそれ以外に情報が無いしな。
 殿って呼ばれてる奴も誰だかわからなかったし。
 あーあ、折角の地球の走馬灯なんだからもっと有名な武将とかにしてくれれば良かったのにさ!! 地球さんもそこら辺あんまり融通が利かないよな。
 
 ……ま、まぁ今はそんな文句を言ってる場合じゃないか。 
 にしても仮にあれが戦国時代だとすると大体500年前くらいか?? 
 恐竜が地球にいたとされてるのが大体2億年前だっけ?? あっ、でも見たのはティラノサウルスだから6700年前くらいか??
 
 うん、正直言って詳しくは覚えてないんだよな。
 
 あんまり恐竜とか興味無かったしな………ってあれ??えっ?? ちょっと待って!! 
 いくら何でも進みすぎじゃないか??

 恐竜が居た時代なんて詳しくは知らないし、そもそもあれが本物のティラノサウルスかどうかも自信ないけど、とにかく進みすぎだわ!!
 
 こんなん今すぐにでも地球が滅亡してもおかしく無いじゃん!! 戦国時代なんて地球さんからしたら昨日の出来事みたいなもんだもん!!
 今更になって青蜜達が呆然としてる理由がわかったわ、あいつらもう死を覚悟してんじゃねぇーか!! 事態を把握出来てなかったのは俺の方だったわ!! 
 
「お、おい!! 青蜜!!」
 
 俺は急いで青蜜の肩を揺らす。 
 
 多少強引だけど、今は放心状態とか関係ない!! だってまだ死にたくないもん!!

「…… 何よ」
  
「い、今すぐ何か行動しないともう間に合わないぞ!! 気持ちはわかるけどやる気を失ってる場合じゃないだろ?? 早くみんなの目も覚させないと!!」
 
「……無理よ。 私達は失敗したの。
 さっきの映像はまどかちゃんも見てたでしょ?? あれが走馬灯だって言うならもう終わり間際じゃない。 今更何をしても間に合わないと思うわ」
 
 生気のない声で青蜜は小さく言葉を返す。
 
 ぐっ……駄目だ、完全に諦めモードに入ってる。 いつも思うけど、こいつ割と直ぐに諦めるよな。 
 いつもはあんなに元気な癖に!!
 
「そ、それはそうかも知れないけどさ。 でもまだ俺達は生きてるし、地球だって無事だろ?? まだ何かやれる事があると思うんだ!!」
 
「何も無いわよ。 だって私達は魔王を倒したのよ?? これ以上何もする事なんて無いじゃない」
 
「いや……まぁそうなんだけど」
 
 青蜜の言葉に俺は何も言えなくなってしまった。
 
 確かに青蜜の言う通りだ。 俺達は、いや、青蜜達は魔王を倒したのだ。 
 これ以上何もで出来る事は無いのかも知れないな。 
 それにしても魔王を倒してゲームオーバーなんてクソゲー確定だな。 
 普通逆だもん、勇者がやられたらゲームオーバーの筈っ……ん?? 
 
 い、いや、まさかな。 流石にそんな訳ないよな??

 たった今思い付いた可能性が間違いであって欲しいと思いながら、俺は青蜜へ尋ねた。
 
「……なぁ?? そう言えばさ青蜜達って、どうやって魔王を見つけたんだ??」
 
「えっ?? 何よ急に」
 
「いや、だって気になるだろ?? 俺が寝てたあの短い時間でどうやって日本から魔王を見つけたんだ??」
 
「どうやってって言われても見つけたのは私達じゃないから何とも言えないわ。
 おっさんが自信あるって言うから任せたのよ。 私も魔法には詳しくないけど、なんか探索魔法で探し出してそのまま召喚魔法で……って、ま、まどかちゃんもしかして私達が倒した人って」
 
 どうやら青蜜もその可能性に気付いたらしいな……名前通りに顔が真っ青になってるし。
 
「あぁ、あのあっさんが呼び出したなら多分間違い無いだろうな……青蜜達が戦った相手は多分勇者だったんだと思う」
 
 我ながら完璧な推理だと思うわ。 
 だってあのおっさんだもん、魔王と勇者を間違えるなんて本来なら有り得ないだろうけど、あのおっさんだもんな。
 むしろ間違えてない可能性の方が低いと思えるわ。
 
 俺達がよく知ってるあのおっさんはどうしようもなくポンコツなのだから。
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