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部屋割り
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ふらふらながらもなんとか村へ入ると、すぐにクルトお兄様がこちらへ走って来るのが見えた。もう馬を下りているということは、宿はそう遠くはないのだろう。
まああまり広くない村だろうし。
「エレナ様、お身体は大丈夫なのですか?」
開口一番にそれ。大人しく抱えられていろという空気も出ている。が、無視。
「大丈夫です。ご心配をかけました」
「そうですか。宿は見つかりました。クリスが部屋をとってくれています」
何か言いたそうな表情を浮かべるものの、それ以上は何も言わない。
「すぐそこです。行きましょう」
そう言って先を歩くお兄様の後を、私はブランに乗ったままついて行った。
宿に着き、ブランから降りるとすぐに宿のおじさんがやってきた。ブランを馬小屋へと連れて行ってくれるのだろう。
「疲れたでしょう?ありがとう、ブラン。ゆっくり休んでね」
『ええ、喉が渇いたわね』
ブランは私の言葉に頷いた。おじさんにお水をたっぷりあげてもらうようにお願いして、皆の方を向いた。
「だーかーらぁ!部屋がふた部屋しか空いていないんですよ。エレナと私、殿下とクルト様でいいじゃないですか!」
「忘れてはいないだろうけど、僕とエレナは夫婦だ。僕達が同じ部屋で休むから、君たちは君たちでくつろげばいい」
「エレナは殿下より私とのほうがリラックスできますから」
先程からこれである。
どうも他の貴族がいるらしく、その一行がほとんどの部屋を使っているらしい。貴族がこうして平民の宿に泊まるなんてとてつもなく珍しい話ではあるけど悪いことではない。例え何部屋取ろうとお金さえ払えば。
後から来た私たちは四人いるのにふた部屋しか残ってない。となると気になるのは部屋割りだが、まあ簡潔に言うと、クリスとユリウス殿下の二人とも私と同じ部屋がいいらしい。
二人はバチバチと睨み合った後、私を見た。
「ねえ、エレナも何か言って」
「夫婦なんだ。一緒に休もうじゃないか」
……どっちでもいいから早く決めてくれ。
先程から宿のご主人がとても不安そうな表情で私達を見ている。普段、貴族が泊まることなんて滅多にないだろうに、今日一日で二組も来て、更に部屋が空いていないことが原因でこんなにも揉められたらおろおろする気持ちは分かる。
ここまで揉める理由はというと、旅に出てからこんな状況に陥ったことがないからだ。貴族の館に泊まったり野宿をしたり、平民の宿に泊まったり、色々と夜は明かしてきた。
しかし平民の宿というものはそうすぐに埋まるものではない。祭りがある時や観光地の近くくらいだ。だから一人一部屋とることしかなかった。ああ、一度だけ大部屋で一部屋とったこともあったな。
まあつまり、2×2になることは今までなかったということだ。
「あー、もう、どこの貴族か知らないけど、頼んであとふた部屋空けてもらおうよ」
面倒になったのだろう。それまでグダグダと言い合いをしていたクリスが私を見て言った。
「それはしないわ。わたくしたちの方が後から来たもの」
「別に寄越せって命令するわけじゃないからいいじゃん。ちゃんと丁寧にお願いするから。それに変な話だよ。もう少し行けば貴族の館があるだろうにわざわざここに泊まるなんて」
まあ確かに貴族の館に泊めてもらったらいいのに、とは思うけど。でもそれはそれだ。それに、どこの貴族だとしてもこちらの方が身分が上なのはほぼ間違い無いだろう。だからといってクリスが横柄な態度をとるとも思っていない。
それでも、
「貴族の館ではなくここに泊まろうとしているのはわたくし達も同じ話でしょう?身分が上なわたくしたちがお願いをするということは、命令と同義なのよ。分かるでしょ?」
殿下一行の私たちからの『お願い』を断れる貴族はまずいない。
クルトお兄様も困っている。さっさと部屋割りを決めてしまおう。まず、私×ユリウス殿下。まあ夫婦だから別に問題はない。次に、私×クリス。これも同性だからOK。そして、私×クルトお兄様。兄弟なので全く問題はない。ということは別の視点で考えて……。
「さ、行きましょう」
私が手を取ったのはクリスだった。クリスは少し驚いたように私を見て、そして嬉しそうに頷いた。
対して面白くなさそうなのはユリウス殿下だ。「どうして?」といつもと変わらない笑みを浮かべているが、少し不満そうだ。私には分かる。
「別に殿下と一緒が嫌だったわけではありません。ただ、クリスとお兄様が二人で夜を越すというのは外聞が悪いかと思いまして」
クリスは私の上のお兄様と婚約をしている。クルトお兄様も王都に婚約者がいる。二人とも異性と二人きりになるなんてアウトだ。何かあるなんて思ってはいないけど、どこで誰が見ているかなど分からない。私たちは色々なところで恨みを買っているだろうから。
「……そうだね。君はいつも正しい」
ユリウス殿下がそう言う。何か含みがあるような言い方なのが気になったが、それがどういう意味なのかは分からなかった。
私に手を引かれて部屋へ向かうクリスも、思うところがあったのか、ユリウス殿下を気にしながら歩いていた。
まああまり広くない村だろうし。
「エレナ様、お身体は大丈夫なのですか?」
開口一番にそれ。大人しく抱えられていろという空気も出ている。が、無視。
「大丈夫です。ご心配をかけました」
「そうですか。宿は見つかりました。クリスが部屋をとってくれています」
何か言いたそうな表情を浮かべるものの、それ以上は何も言わない。
「すぐそこです。行きましょう」
そう言って先を歩くお兄様の後を、私はブランに乗ったままついて行った。
宿に着き、ブランから降りるとすぐに宿のおじさんがやってきた。ブランを馬小屋へと連れて行ってくれるのだろう。
「疲れたでしょう?ありがとう、ブラン。ゆっくり休んでね」
『ええ、喉が渇いたわね』
ブランは私の言葉に頷いた。おじさんにお水をたっぷりあげてもらうようにお願いして、皆の方を向いた。
「だーかーらぁ!部屋がふた部屋しか空いていないんですよ。エレナと私、殿下とクルト様でいいじゃないですか!」
「忘れてはいないだろうけど、僕とエレナは夫婦だ。僕達が同じ部屋で休むから、君たちは君たちでくつろげばいい」
「エレナは殿下より私とのほうがリラックスできますから」
先程からこれである。
どうも他の貴族がいるらしく、その一行がほとんどの部屋を使っているらしい。貴族がこうして平民の宿に泊まるなんてとてつもなく珍しい話ではあるけど悪いことではない。例え何部屋取ろうとお金さえ払えば。
後から来た私たちは四人いるのにふた部屋しか残ってない。となると気になるのは部屋割りだが、まあ簡潔に言うと、クリスとユリウス殿下の二人とも私と同じ部屋がいいらしい。
二人はバチバチと睨み合った後、私を見た。
「ねえ、エレナも何か言って」
「夫婦なんだ。一緒に休もうじゃないか」
……どっちでもいいから早く決めてくれ。
先程から宿のご主人がとても不安そうな表情で私達を見ている。普段、貴族が泊まることなんて滅多にないだろうに、今日一日で二組も来て、更に部屋が空いていないことが原因でこんなにも揉められたらおろおろする気持ちは分かる。
ここまで揉める理由はというと、旅に出てからこんな状況に陥ったことがないからだ。貴族の館に泊まったり野宿をしたり、平民の宿に泊まったり、色々と夜は明かしてきた。
しかし平民の宿というものはそうすぐに埋まるものではない。祭りがある時や観光地の近くくらいだ。だから一人一部屋とることしかなかった。ああ、一度だけ大部屋で一部屋とったこともあったな。
まあつまり、2×2になることは今までなかったということだ。
「あー、もう、どこの貴族か知らないけど、頼んであとふた部屋空けてもらおうよ」
面倒になったのだろう。それまでグダグダと言い合いをしていたクリスが私を見て言った。
「それはしないわ。わたくしたちの方が後から来たもの」
「別に寄越せって命令するわけじゃないからいいじゃん。ちゃんと丁寧にお願いするから。それに変な話だよ。もう少し行けば貴族の館があるだろうにわざわざここに泊まるなんて」
まあ確かに貴族の館に泊めてもらったらいいのに、とは思うけど。でもそれはそれだ。それに、どこの貴族だとしてもこちらの方が身分が上なのはほぼ間違い無いだろう。だからといってクリスが横柄な態度をとるとも思っていない。
それでも、
「貴族の館ではなくここに泊まろうとしているのはわたくし達も同じ話でしょう?身分が上なわたくしたちがお願いをするということは、命令と同義なのよ。分かるでしょ?」
殿下一行の私たちからの『お願い』を断れる貴族はまずいない。
クルトお兄様も困っている。さっさと部屋割りを決めてしまおう。まず、私×ユリウス殿下。まあ夫婦だから別に問題はない。次に、私×クリス。これも同性だからOK。そして、私×クルトお兄様。兄弟なので全く問題はない。ということは別の視点で考えて……。
「さ、行きましょう」
私が手を取ったのはクリスだった。クリスは少し驚いたように私を見て、そして嬉しそうに頷いた。
対して面白くなさそうなのはユリウス殿下だ。「どうして?」といつもと変わらない笑みを浮かべているが、少し不満そうだ。私には分かる。
「別に殿下と一緒が嫌だったわけではありません。ただ、クリスとお兄様が二人で夜を越すというのは外聞が悪いかと思いまして」
クリスは私の上のお兄様と婚約をしている。クルトお兄様も王都に婚約者がいる。二人とも異性と二人きりになるなんてアウトだ。何かあるなんて思ってはいないけど、どこで誰が見ているかなど分からない。私たちは色々なところで恨みを買っているだろうから。
「……そうだね。君はいつも正しい」
ユリウス殿下がそう言う。何か含みがあるような言い方なのが気になったが、それがどういう意味なのかは分からなかった。
私に手を引かれて部屋へ向かうクリスも、思うところがあったのか、ユリウス殿下を気にしながら歩いていた。
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