ゲームは終わっても人生は続く〜入れ替わり令嬢のその後〜

紅蘭

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たどり着いた答え

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「おやすみなさいませ、エレナ様」


アリアが部屋を出て行くと、急に静かになった。ベッドに横になってみるが寝れそうではなかった。

静寂がうるさい。何度も寝返りをうつ。

誰でもいいから話をしたかった。だけどもう夜も遅い。誰かを付き合わせるわけにはいかない。

……もしもクリスに何かあったら。悪いことばかり考えてしまう。私はこの先を何も知らない。ゲームは終わって、その先のストーリーなんて何も知らない。クリスが無事に帰って来る未来など、分からない。

あの時、クリスを一人置いてきたことを心から後悔している。どんなに危険でも一緒に残るべきだった。

ーー大丈夫、私、男だから。

あの時のクリスの言葉を思い出す。そんなこと信じるわけないのに。そんな突拍子のない嘘をついてまで守ろうとしてくれたのだろう。

はあ、と深いため息をついてまた寝返りをうった時だった。

ユリウス殿下の部屋へと続く扉の向こうから人の気配がした。

……帰ってきたのかな。

もう真夜中だ。ごそごそと動く気配がする。殿下は私が帰ってきていることは知っているのだろうか。クリスが捕まったことは?

私が不安な時、悲しい時、殿下はいつも側にいてくれた。今だって話を聞いてほしい。何も喋らなくても、隣にいてほしい。

だけどそんなこと言えるわけがなかった。そして、結局、扉が開くことはなく、また静寂が訪れた。

こんな時にクリスが側にいてくれたら話を聞いてくれるのに。そう思ったら涙が出てきた。



カーテンの隙間から入ってくる光がだんだんと濃くなるのを眺めるのを止めて、体を起こす。

結局一睡もすることができなかった。今は六時くらいだろう。そろそろアリアを呼んでも迷惑じゃないかな。

そう思った時だった。ユリウス殿下が部屋を出て行く音がした。

まだ朝も早いしご飯も食べていないだろう。どこへ行くのだろう。特に何も考えずに着替えて部屋の扉をそっと開けた。ユリウス殿下がいないことを確認して廊下へ出る。

……どこから探すか。騎士団かな。昨日騎士団の人と一緒にいたって言ってたし。

なんとなく気配を消して歩く。騎士団の訓練場へ着くと、もう何人もの騎士達が訓練を始めていた。

大声を出し、汗を流す人たち。なんだかここにユリウス殿下がいるところは想像できなかった。

パッと見た感じいないようだし、ここじゃなかったかな。

というか探してどうしよっていうんだ、私。話をしたいけど何て話しかけたらいいか分からないし、殿下だって私を避けてるみたいだし。

もしかしたらこのまま離婚ルートかもしれない。


「はは、皆になんて言われるか……」


……笑えない。皇族の離婚なんて論外だ。

まあいいや。とりあえず部屋に戻ろ。踵を返した時だった。


「おはようございます、殿下。本日は……」


女の人の声が聞こえ、振り向くと、ユリウス殿下がいた。さっと柱の陰に隠れる。

昨日一緒にいたと言う騎士団の女の人はあの人だろうか。

私よりも年上っぽい、きりっとしている美人だ。少し話をして、殿下は「行こうか」と歩き出した。その隣を女の人が歩く。

あの場所は、ユリウス殿下の隣は私の場所だ。あそこにいるのは私のはずだ……!

ハッとした。そんな風に思っていることに私が驚いた。

いやいやいや、魔獣の討伐って言ってたし、仕事だろう。ユリウス殿下ほど強かったら、騎士団の手に負えないような魔獣をやっつけに行かないといけないだろう。そんな風に思うことがおかしいのだ。

深く息を吐いて落ち着きを取り戻す。再び二人に視線を向けると、二人は笑い合っていた。あのユリウス殿下が他の女の人に笑いかけていた。

カッとなり、気が付いた時には飛び出していた。楽しそうに話しながら歩く二人の間に割り込んでいた。


「え……?」

「わたくしの夫です……!」


驚く女の人にそう言っていた。


「も、申し訳ございません……!」


慌てた様子で頭を下げる女の人を見てハッとした。

ぎゃあぁぁぁぁ!やってしまった!完全にやらかした!

後ろを見上げると、驚いた顔のユリウス殿下が。

ああああぁぁぁ!


「申し訳ありません!!」


私はそう叫んで、その場から逃げ出した。後ろも見ずに全力で走る。

やばいやばいやばい!私何言った!?

お城に仕える騎士団の人に皇族の私があんな責めるような言い方。完全にパワハラじゃん!

殿下もびっくりしてたし!終わった、私の人生。『パワハラエレナ』とか影で言われたらどうしよう。なんならユリウス殿下もパワハラしてそうだし、『パワハラ夫婦』かもしれない。

あああああ!

全力で走る私を皆が見る。それもまた恥ずかしいが、ここで止まるのもなんだか恥ずかしい。一度人目が気になったら走り抜けるしかない。

そうして私は全力疾走で部屋へと飛び込んだ。

肩で息をする。ここまできてようやく胸につかえた感情の正体に気がついた。

もやもやも気持ち悪さも、全部嫉妬だ。ユリウス殿下に笑いかけられる他の人に嫉妬をしているんだ。

いつからかは分からない。だけど思えばずっと前からもやもやの片鱗はあった気がする。

夫婦だからとかじゃない。私がユリウス殿下のことが好きだから。

私はようやくその気持ちにたどり着いた。

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