ゲームは終わっても人生は続く〜入れ替わり令嬢のその後〜

紅蘭

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止められた試合

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改めて訓練場に立つ。少し離れて向かい合うヴェルナー様はここから見ても大きい。


「エレナー!勝ってねー!」


クリスが離れたところから叫んでくるが、「無理」としか言いようがない。魔法を使ってもヴェルナー様に勝てたことなど一度もない。というかヴェルナー様に勝てる人間がこの国にいるのかすらも怪しい。


「こちらは剣のみ。エレナはなんでもあり、でいいか?」

「ええ、もちろん」


できればヴェルナー様は素手でお願いしたいところだけど、流石に図々しすぎて言えない。私はいかに魔法を上手く使うか、が重要。

空気が変わる。深く息を吐き、魔力を集めて防御をはる。


「始め!」


クルトお兄様の号令で私は地面を蹴った。と、同時だった。


「お待ちください……!」


大きな声で止められ、私は勢いを殺して止まる。ヴェルナー様も剣を下げ、声の持ち主を見た。

……げっ!

そこにいたのはベアトリクスだ。クリスが慌ててベアトリクスに駆け寄った。


「ベアトリクス様、今いいところなんですから」


しかしベアトリクスはクリスではなく私を見ている。


「その手合わせは中止してくださいませ」

「いやあの、ベアトリクス?ここまできて中止というのはヴェルナー様にとても申し訳ないのですけど……」


ベアトリクスに近寄り、そう言うが譲ってくれそうな表情ではない。


「騎士団長様、申し訳ありませんが手合わせはエレナ様以外とお願いします」


ヴェルナー様は不満そうな表情だ。怒ってはいないけど、楽しみを邪魔されたのだからまあ仕方がない。


「でもベアトリクス様、エレナと同レベルの人なんてそうそういないと思うけど……」

「そうですよ、大丈夫ですから」


そう言うとキッと睨まれた。

ここにベアトリクスが来るのは完全に想定外だった。今回ばかりは勝てる気がしない。

というのも、私はベアトリクスが止めた理由を完全に理解しており、まあそうだろうな、と思ったから。

しかし事情を知らない他の人からすると納得がいかないのもわかる。


「でしたらあの方がお相手されますわ」


ベアトリクスは曲がり角の方を指した。そこには誰もいない。皆が首を傾げた時、顔を出したのは、


「で、殿下……」


クリスがギョッとした顔で呟いた。

……んー、まあ魔力的にそうだろうなとは思っていたけど。でもユリウス様がはいはい、と手合わせをオッケーするかな?

なんて考えていると、注目されているユリウス様は私に視線を向けて微笑んで首を傾げた。

違う違う、今回は私じゃない。

何かあれば私の仕業だと思うのは本当にやめてほしい。これはユリウス様に限らずだけど。


「殿下、事情がございます。エレナ様の代わりに騎士団長様と手合わせをお願い致します」


ベアトリクスがはっきりと言った。クリスだけでなく皆がギョッとした顔でベアトリクスを見る。そりゃそうだ。ユリウス様にこんなにも遠慮のない言葉をかけるのは陛下と私くらいしかいない。

ベアトリクスにしては珍しい。

ユリウス様はベアトリクスから私はと視線を移した。


「事情があるのかい?」


もう逃げられなさそうだ。ため息を一つ。


「ええ、まあ。今は何も聞かずにお願いしたいところです」


ユリウス様は微笑んだ。


「いいよ。君のお願いなら」

「ありがとうございます」


訓練場がざわめきに包まれ、その中に入っていくユリウス様を眺めていると、後ろから声をかけられた。


「エレナ様、行きますわよ」

「えっと、あの、わたくしお二人の手合わせを見たいのですが……」


ユリウス様とヴェルナー様の戦いなんて滅多に見られるものではない。せっかくなのでどちらが勝つか見たい。が、ベアトリクスは許してくれなかった。


「行きますわよ」


腕を引っ張られた。


「クリス、後は頼むわ」


ベアトリクスの言葉にクリスは「ええっ!?」と不満そうな声を上げたが、ベアトリクスはそれも無視。

観念してたしも歩き始めると、ベアトリクスはやっと手を離してくれた。


「それで?確信はありますの?」


歩きながら聞いてくるので小声で答える。


「なんの話ですか?」

「すっとぼけてどうするのです。腹部に魔力を集めていたのは守るためでしょう?」


……やっぱりバレている。


「確信なんてありませんわ。月の障りが少し遅れているのでもしかしたら、という程度です。まだ分からないから誰にも言いたくなかったんですけど」


子供を、という話になってから早数ヶ月。身籠っていても不思議ではないが、ほんっとうになんの症状もないので分からない。この世界には検査薬なんてないし。


「どのくらい遅れておりますの?」

「二週間ほどですわ」


答えるとベアトリクスは信じられない、と言いたそうな顔で私を見た。


「……ほぼ確定ですわよ、それ」


あ、そうなの?いやー、なんせ経験も知識もないものだからね。


「ところで、どこへ向かっているのです?」

「医務室です。お医者様に診てもらいましょう」


ほう、医務室ね。初めて行く。怪我をしたって光魔法ですぐに治せるので縁のない場所だ。

しっかしまあこの世界でどんな検査をするのやら……。



と、考えていた私がアホみたいだ。結果から言うと妊娠していた。しかしそれ以上に衝撃的だったのは普通にエコー検査をしたこと。あっちの世界でしたことがないので分からないけど、明らかにそこだけ世界観が違っていた。

……お父さんの考えた設定、どうなってんの。
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