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第一章
ギターⅠ
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週が明けた月曜日、いつものようにギターを背負ってアパートを出た。
チャリ、とストラップが揺れる音が背中で聞こえる。
外はうっすらと雪が積もっていた。今日はギターは弾けないな。
こんな中で斜面に座ったらお尻が濡れてしまう。
そう思いながらもとりあえず河原に向かう。
最近は寒いので外でギターを弾くのも、手がかじかんで難しい。
それに麗奈ちゃんにはもう僕が教えられることはなかった。
分からないことがあったらインターネットで調べることができるし。
河原で過ごす時間もそろそろ終わりだろうな。
河原につくと、思った通り雪で斜面の草も見えない状態だった。
下手に足を踏み入れたら滑ってこけそうだ。さて、どうしようか。
突っ立って考えていると、後ろから声が聞こえた。
「雪ですね」
少しはしゃいだような声。
全く気が付いていなかった僕は少しだけ驚いて振り返った。
「こんにちは」
麗奈ちゃんは僕を見上げて笑う。
先週会ったばかりだというのに、なぜかすごく久しぶりに感じた。
「こんにちは、早いね」
「はい、今日は学校が早く終わったので」
「センター試験はどうだった?」
「ばっちりです」
指で丸を作って笑うその笑顔はとても眩しかった。
勉強をする素振りなんて全然見せなかったのに、すごいな。
麗奈ちゃんが通う高校は進学校だ。その中でも麗奈ちゃんは頭が良い方なんじゃないかな、と根拠もなく思った。
どこに進学する予定なのかは知らない。聞かない。今だけここで会う。
あと数か月もしたらきっと他人になる。
僕もそろそろ仕事を探さないといけないし。
「ところで」
麗奈ちゃんがしゃがんで足元の雪を掬いながら言った。
「二月になったら三年生は学校に行かなくてもいいんです。そうしたら、弘介さんはもうここに来ませんか?」
ああ、そうか、ここで会うのは麗奈ちゃんの学校帰りだけだ。
麗奈ちゃんが学校に行かなくなったらここで会うこともない。
「もうここでギターは弾きませんか?」
麗奈ちゃんが僕を見て言う。
「私は、まだここに来たいんですけど」
僕を見上げる真っすぐな目と言葉に、僕は頷いていた。
なぜかは分からない。何も考えずに言葉が出ていた。
「麗奈ちゃんが来るなら僕も来るよ」
麗奈ちゃんは嬉しそうに笑った。
雪を持っている手は真っ赤になっている。僕もしゃがんで雪を手に取った。
背中で金属の無機質な音が鳴る。
「冷たいね」
「はい」
二人で並んで雪をいじる姿は周りから見るとだいぶ変だっただろう。
だけど、僕らはしばらくの間、しゃがんで雪遊びをしていた。
チャリ、とストラップが揺れる音が背中で聞こえる。
外はうっすらと雪が積もっていた。今日はギターは弾けないな。
こんな中で斜面に座ったらお尻が濡れてしまう。
そう思いながらもとりあえず河原に向かう。
最近は寒いので外でギターを弾くのも、手がかじかんで難しい。
それに麗奈ちゃんにはもう僕が教えられることはなかった。
分からないことがあったらインターネットで調べることができるし。
河原で過ごす時間もそろそろ終わりだろうな。
河原につくと、思った通り雪で斜面の草も見えない状態だった。
下手に足を踏み入れたら滑ってこけそうだ。さて、どうしようか。
突っ立って考えていると、後ろから声が聞こえた。
「雪ですね」
少しはしゃいだような声。
全く気が付いていなかった僕は少しだけ驚いて振り返った。
「こんにちは」
麗奈ちゃんは僕を見上げて笑う。
先週会ったばかりだというのに、なぜかすごく久しぶりに感じた。
「こんにちは、早いね」
「はい、今日は学校が早く終わったので」
「センター試験はどうだった?」
「ばっちりです」
指で丸を作って笑うその笑顔はとても眩しかった。
勉強をする素振りなんて全然見せなかったのに、すごいな。
麗奈ちゃんが通う高校は進学校だ。その中でも麗奈ちゃんは頭が良い方なんじゃないかな、と根拠もなく思った。
どこに進学する予定なのかは知らない。聞かない。今だけここで会う。
あと数か月もしたらきっと他人になる。
僕もそろそろ仕事を探さないといけないし。
「ところで」
麗奈ちゃんがしゃがんで足元の雪を掬いながら言った。
「二月になったら三年生は学校に行かなくてもいいんです。そうしたら、弘介さんはもうここに来ませんか?」
ああ、そうか、ここで会うのは麗奈ちゃんの学校帰りだけだ。
麗奈ちゃんが学校に行かなくなったらここで会うこともない。
「もうここでギターは弾きませんか?」
麗奈ちゃんが僕を見て言う。
「私は、まだここに来たいんですけど」
僕を見上げる真っすぐな目と言葉に、僕は頷いていた。
なぜかは分からない。何も考えずに言葉が出ていた。
「麗奈ちゃんが来るなら僕も来るよ」
麗奈ちゃんは嬉しそうに笑った。
雪を持っている手は真っ赤になっている。僕もしゃがんで雪を手に取った。
背中で金属の無機質な音が鳴る。
「冷たいね」
「はい」
二人で並んで雪をいじる姿は周りから見るとだいぶ変だっただろう。
だけど、僕らはしばらくの間、しゃがんで雪遊びをしていた。
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