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第二章
別れⅡ
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「あの時渡した本は大事にしていますか?」
「うん、あの本は、」
弘介さんが何かを言おうとしたのを遮って私は言った。
何が言いたいのか分かっていたから。
「あれは、紗苗さんが持っていた本です。お葬式の後にもらいました」
本を開いて手紙を取り出す。
綺麗な封筒に入った手紙。本当は封筒には入っていなかったけど、汚れるのが嫌で私が入れた。
挟まっているそのページは紗苗さんが挟んでいたところと同じページ。
「紗苗さんがこの本が好きな理由が弘介さんには分かりましたか?」
どうして私が紗苗さんに薦めたのか。
どうして紗苗さんのお気に入りだったのか。
きっと弘介さんには分からないだろう。
思った通り弘介さんは首を横に振った。
「麗奈ちゃんにもらって、あれからも何度か読んだよ。だけど僕には分からない。麗奈ちゃんは知っているの?」
「弘介さんも知っているかもしれませんが、この本は私が紗苗さんに薦めたんです」
中学生になって図書室で読んだ本。
読んで思った。主人公の彼氏が紗苗さんが話す『こう君』と重なった。
だから紗苗さんにも読んでみて欲しくて、私は次に会った時に真っ先に薦めた。
それを読んだ紗苗さんは言った。
「『アオイちゃんの言った通りだね。この主人公の彼氏こう君にそっくり!』」
紗苗さんの口調に似せてそう言うと、弘介さんは驚いたように私を見た。
「そんな理由で……?」
「はい。驚きましたか?」
本当に自分でも『そんな理由で』と思う。
だけど私はこれを紗苗さんに薦めずにはいられなかったし、私も好きな本だ。
『そんな理由で』。
「うん、驚いた。本当に紗苗さんがそう言ったの?」
「はい、そうですよ。女の子はそんなものなんです。好きな人に似ている登場人物が出てきたらその人が好きなんです。少なくとも私と紗苗さんは」
きっと弘介さんには理解できないだろう。分かっていた。
だけど、最初にあの本を渡した時、もしかしたらそれに気付いてくれることを期待していたのかもしれない。
だからあの瞬間、少し残念だった。
「だから紗苗さんが本当に好きだったのはこの本ではなくて弘介さんだったんです」
私がそう言うと弘介さんは小さな声で「そっか」と言った。
一体弘介さんは今どんな気持ちなのだろうか。
きっと私には理解できないんだろうなと思った。
こういうのは大切な人を亡くした人にしか分からない。
そんな思いをしたことのない私にはその気持ちを推量することもしてはいけないような気がして、黙って川面を眺めた。
私が紗苗さんを亡くした気持ちと、弘介さんが紗苗さんを亡くした気持ちは、悔しいけれど違うのだろう。
「うん、あの本は、」
弘介さんが何かを言おうとしたのを遮って私は言った。
何が言いたいのか分かっていたから。
「あれは、紗苗さんが持っていた本です。お葬式の後にもらいました」
本を開いて手紙を取り出す。
綺麗な封筒に入った手紙。本当は封筒には入っていなかったけど、汚れるのが嫌で私が入れた。
挟まっているそのページは紗苗さんが挟んでいたところと同じページ。
「紗苗さんがこの本が好きな理由が弘介さんには分かりましたか?」
どうして私が紗苗さんに薦めたのか。
どうして紗苗さんのお気に入りだったのか。
きっと弘介さんには分からないだろう。
思った通り弘介さんは首を横に振った。
「麗奈ちゃんにもらって、あれからも何度か読んだよ。だけど僕には分からない。麗奈ちゃんは知っているの?」
「弘介さんも知っているかもしれませんが、この本は私が紗苗さんに薦めたんです」
中学生になって図書室で読んだ本。
読んで思った。主人公の彼氏が紗苗さんが話す『こう君』と重なった。
だから紗苗さんにも読んでみて欲しくて、私は次に会った時に真っ先に薦めた。
それを読んだ紗苗さんは言った。
「『アオイちゃんの言った通りだね。この主人公の彼氏こう君にそっくり!』」
紗苗さんの口調に似せてそう言うと、弘介さんは驚いたように私を見た。
「そんな理由で……?」
「はい。驚きましたか?」
本当に自分でも『そんな理由で』と思う。
だけど私はこれを紗苗さんに薦めずにはいられなかったし、私も好きな本だ。
『そんな理由で』。
「うん、驚いた。本当に紗苗さんがそう言ったの?」
「はい、そうですよ。女の子はそんなものなんです。好きな人に似ている登場人物が出てきたらその人が好きなんです。少なくとも私と紗苗さんは」
きっと弘介さんには理解できないだろう。分かっていた。
だけど、最初にあの本を渡した時、もしかしたらそれに気付いてくれることを期待していたのかもしれない。
だからあの瞬間、少し残念だった。
「だから紗苗さんが本当に好きだったのはこの本ではなくて弘介さんだったんです」
私がそう言うと弘介さんは小さな声で「そっか」と言った。
一体弘介さんは今どんな気持ちなのだろうか。
きっと私には理解できないんだろうなと思った。
こういうのは大切な人を亡くした人にしか分からない。
そんな思いをしたことのない私にはその気持ちを推量することもしてはいけないような気がして、黙って川面を眺めた。
私が紗苗さんを亡くした気持ちと、弘介さんが紗苗さんを亡くした気持ちは、悔しいけれど違うのだろう。
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