あの日、君は笑っていた

紅蘭

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最終章

夏祭り前夜

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明日の夏祭りには何を着て行こうかな。

クローゼットを開けて服を眺めていると、どれもよくて迷ってしまう。

この服は私のお気に入り。

この服はこう君が可愛いって言ってくれた。

この服はアオイちゃんと一緒に買いに行った。

お気に入りで溢れた私のクローゼットの中。

ずっと見ていられるくらい思い出の詰まったものばかり。

このネックレスをしていこう。これはこう君が私の誕生日にくれたんだよね。


「あ、そうだ、手紙書かないと」


誰もいない部屋でそう呟いて机に向かう。

もうすぐこう君の誕生日。

プレゼントはもう買ってある。壁に立てかけたギターを眺めると頬がゆるんでしまう。

きっとこう君は喜んでくれる。早くその顔が見たいな。

本当は今すぐにでも渡したいけど、せっかくだから誕生日まで待たないとね。

ペンを紙に滑らせる。


『こう君へ


 誕生日おめでとう。今年もこう君の誕生日をお祝いできるのが嬉しいです。

 こう君の二十二歳が素敵な一年になりますように。


 こう君と出会ってからもう三年が経ちます。早いものだね。

 もう三年も経つなんて思えない程楽しくてあっという間でした。

 こう君とアオイちゃんに出会えたことが私にとって一番の幸運です。

 あの日、こう君のレポートが再提出になってよかった、なんて言ったらこう君は怒るかな? ごめんね。


 今度こう君とアオイちゃんと三人で会おうね。

 そしたらこう君がギターを弾いて、アオイちゃんがサックスを吹いて私が歌うの。

 今からすごく楽しみ。こう君とアオイちゃんはすっごく仲良くできると思います。

 大好きな二人と過ごす時間はすごく幸せだろうな。

 もちろんこう君と二人で過ごす時間も幸せだからね。


 面と向かっては恥ずかしくて言えないので、ここに書きます。

 この先もずっとこう君と一緒にいたいです。

 ずっと隣にいて、なんでもないことで笑い合いたいです。

 しわくちゃのおじいちゃんとおばあちゃんになっても縁側で並んでお茶を飲もうね。


 私はこう君が大好き。心の底から愛しています。

 こう君も同じ気持ちだったらいいな。

 また一緒にお花を見ようね。ギターを弾いてね。それから北海道にも行こうね』



そこまで書いてふと顔を上げるともう十一時だった。


「あ、もう寝ないと」


途中まで書いた手紙を綺麗に折って、机の端に置いていた本に挟む。

アオイちゃんが教えてくれた、こう君にそっくりな人が出てくる本。私のお気に入り。

表紙をさらっと撫で、布団に入る。

明日が楽しみ。

もしかしたらアオイちゃんも来るのかな?

大きいお祭りだからきっと来るよね。会えたらいいな。

ああ、早く二人に会いたい。


「おやすみなさい」


枕元に置いた、こう君がくれたぬいぐるみにそう言って、目を閉じる。

今日は素敵な夢が見れそうな気がした。
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