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第二章
麗奈と弘介Ⅲ
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「うん、それは本当なんだろうね。だけど今は『こう君』の話はしてないよ。俺が今話しているのは『弘介さん』で、麗奈が好きなのも『こう君』じゃなくて『弘介さん』だ」
意味が分からなかった。
今しているのは弘介さんの話。だからこう君の話。
「一緒でしょ?」
意味が分からない。その気持ちが表情に出ていたんだと思う。
ひろ君は私の顔を見てため息をついた。
「違うよ。『こう君』は麗奈が紗苗さんから聞いた話で『弘介さん』は麗奈が五年前に会った人だ。同一人物ではあるけど、麗奈の知っている『弘介さん』は『こう君』じゃない。話で聞いただけの実体を持たない『こう君』じゃない。だから、麗奈も弘介さんのことを『こう君』とは呼ばないだろ」
最後の言葉ではっとした。そう言われてみればそうだ。
十年前は「こう君」と呼んでいた人を私は一度もそう呼んだことがない。
考えてみると確かに弘介さんとこう君は重ならなかった。
「頭では同じ人だと分かっているけど、無意識に別人として扱ってない? その辺は俺にはよく分からないけど。でもさ」
呆然としている私に向かってひろ君が微笑んだ。
その笑顔の意味は私には分からなかったし、考える余裕もなかった。
だけどどこか悲し気に見えた気がした。
「麗奈は弘介さんが好きだ。だから俺を選んだ。違う?」
違う。そう言おうとしてなぜか言えなかった。
だけど一つだけはっきりしていることがあった。
私はひろ君が好き。こう君も弘介さんも関係ない。
「……私はひろ君が好きなんだよ。弘介さんじゃ駄目。弘介さんじゃひろ君の代わりにはならない」
「違うよ」
ひろ君は私の言葉を即座に否定した。
なんで、なんでそんなこと言うの。
じわっとにじんだ涙がこぼれないように目に力を入れる。
今は泣いちゃだめだ。私は泣いたら駄目。
「弘介さんが俺の代わりになるんじゃない。俺が弘介さんの代わりなんだ。初めから」
ひろ君が弘介さんの代わり……? そんなわけない。
ひろ君はさっきから何を言っているんだろう。
そう思ったけど今何か言ったら泣いてしまいそうで、何も言えない。
ひろ君はそれを分かっているんだろう。私の言葉を待つことなく続けた。
「俺はひろゆき。弘法大師の弘に介護の介で、弘介」
はっとする。
それはひろ君が私に向けて言った言葉だった。
聞いたのはいつだったか。
そうだ、講義で何度か隣に座っていたひろ君。またこの人か、そう思うようになった時にひろ君から話しかけてくれた。その時の言葉だ。
同じだ。そう思った。
そして、それを知ってからは私からも話しかけるようになった。
そう、私はひろ君の名前を聞いたから、聞いてからひろ君に興味を持ったんだ。
「……でも私が好きなのはひろ君だよ」
他に何も言えなくてそう言うと、ひろ君は頷いた。
「うん、知ってる」
知ってるならなんで私が弘介さんが好きだなんて言うんだろう。
ひろ君は「でも」と続けた。
「弘介さんのことも好きなんだよ」
あり得ない。ひろ君も弘介さんも好きなんて、絶対にあり得ない。
「そんなわけないよ。私はひろ君が好きなの!」
半ば叫ぶようにそう言うとひろ君は困った顔のまま言った。まるで子供を諭すように。
「麗奈、好きな人が二人いたって不思議じゃないんだよ。たまたま同じ時に出会ってしまっただけなんだ。だからおかしいことでもないし悪いことでもない」
おかしいことでもないし悪いことでもない。そうなのかもしれない。
だけどそれじゃあまるで私の気持ちが軽いみたいだ。
私のひろ君へのこの気持ちが嘘みたいじゃないか。
意味が分からなかった。
今しているのは弘介さんの話。だからこう君の話。
「一緒でしょ?」
意味が分からない。その気持ちが表情に出ていたんだと思う。
ひろ君は私の顔を見てため息をついた。
「違うよ。『こう君』は麗奈が紗苗さんから聞いた話で『弘介さん』は麗奈が五年前に会った人だ。同一人物ではあるけど、麗奈の知っている『弘介さん』は『こう君』じゃない。話で聞いただけの実体を持たない『こう君』じゃない。だから、麗奈も弘介さんのことを『こう君』とは呼ばないだろ」
最後の言葉ではっとした。そう言われてみればそうだ。
十年前は「こう君」と呼んでいた人を私は一度もそう呼んだことがない。
考えてみると確かに弘介さんとこう君は重ならなかった。
「頭では同じ人だと分かっているけど、無意識に別人として扱ってない? その辺は俺にはよく分からないけど。でもさ」
呆然としている私に向かってひろ君が微笑んだ。
その笑顔の意味は私には分からなかったし、考える余裕もなかった。
だけどどこか悲し気に見えた気がした。
「麗奈は弘介さんが好きだ。だから俺を選んだ。違う?」
違う。そう言おうとしてなぜか言えなかった。
だけど一つだけはっきりしていることがあった。
私はひろ君が好き。こう君も弘介さんも関係ない。
「……私はひろ君が好きなんだよ。弘介さんじゃ駄目。弘介さんじゃひろ君の代わりにはならない」
「違うよ」
ひろ君は私の言葉を即座に否定した。
なんで、なんでそんなこと言うの。
じわっとにじんだ涙がこぼれないように目に力を入れる。
今は泣いちゃだめだ。私は泣いたら駄目。
「弘介さんが俺の代わりになるんじゃない。俺が弘介さんの代わりなんだ。初めから」
ひろ君が弘介さんの代わり……? そんなわけない。
ひろ君はさっきから何を言っているんだろう。
そう思ったけど今何か言ったら泣いてしまいそうで、何も言えない。
ひろ君はそれを分かっているんだろう。私の言葉を待つことなく続けた。
「俺はひろゆき。弘法大師の弘に介護の介で、弘介」
はっとする。
それはひろ君が私に向けて言った言葉だった。
聞いたのはいつだったか。
そうだ、講義で何度か隣に座っていたひろ君。またこの人か、そう思うようになった時にひろ君から話しかけてくれた。その時の言葉だ。
同じだ。そう思った。
そして、それを知ってからは私からも話しかけるようになった。
そう、私はひろ君の名前を聞いたから、聞いてからひろ君に興味を持ったんだ。
「……でも私が好きなのはひろ君だよ」
他に何も言えなくてそう言うと、ひろ君は頷いた。
「うん、知ってる」
知ってるならなんで私が弘介さんが好きだなんて言うんだろう。
ひろ君は「でも」と続けた。
「弘介さんのことも好きなんだよ」
あり得ない。ひろ君も弘介さんも好きなんて、絶対にあり得ない。
「そんなわけないよ。私はひろ君が好きなの!」
半ば叫ぶようにそう言うとひろ君は困った顔のまま言った。まるで子供を諭すように。
「麗奈、好きな人が二人いたって不思議じゃないんだよ。たまたま同じ時に出会ってしまっただけなんだ。だからおかしいことでもないし悪いことでもない」
おかしいことでもないし悪いことでもない。そうなのかもしれない。
だけどそれじゃあまるで私の気持ちが軽いみたいだ。
私のひろ君へのこの気持ちが嘘みたいじゃないか。
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