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本題
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話はもう終わりでいいんだよね?
そう思って立ち上がろうとすると、カイは私を見て言った。
「それで、相談なのだが……」
え、まさかの本題はこれから!? 相談したいことってベアトリクスの一件じゃなかったの!?
何気ない顔で浮かしかけた腰を再び椅子に沈める。にっこりと笑って「なんでしょう」と言うとカイは少しだけ表情を曇らせて言った。
「私達の婚約は実際、実現すると思うかい?」
……いや、そんなこと私に聞かれたって分かんないし。決めるのは私ではなく大人たちだ。だけどカイは真剣と不安の入り混じった表情だ。こんな顔されたら真面目に考えて答えるしかない。
ゲーム内では婚約できていた、とは言え、状況はかなり違うんじゃないかと思う。
まあ邪魔なのは私の存在だよね。
「わたくしとリリー様の立場はお城ではどうなのでしょうか?」
「多分エレナの考えている通りだよ。貴族の間ではエレナ派とリリー派に分かれている。というか、宰相派か反宰相派だね」
やっぱりそうなるよね。娘が皇族に入るなんて親や家にとってはかなり力のつくことだ。これ以上お父様に力を付けて欲しくない貴族たちにとって私がカイの婚約者になるなんて論外だろう。
宰相の娘の私か、元平民のリリー。どちらがマシかという話だ。
「ちなみに婚約者候補はリリー様以外には上がっていないのですか?」
「いや、数人いるにはいる。が、やはり光属性の使い手であるエレナとリリーが最有力候補だ」
意外と今のベアトリクスとかいいと思うけど、それは言わないでおく。それこそ陛下はクラッセン公爵家にいい感情を持っていないようだし。
「一応わたくしには既に婚約者がいるのですけどね……」
なんで勝手にそんな話になっているのか。私は一言もカイの婚約者になりたいなんて言っていないし、お父様も言っていないだろう。
まあボヤいたって仕方がない。
「エレナとラルフの婚約は既に破棄されているものだと思っている貴族が半数。残りはすぐに破棄されると思っている者か、破棄させて私の婚約者にさせようと考えている者だ」
あ、なるほど。誰も私とラルフがこのまま結婚すると思っていないようで。まあ私もそんなつもりさらさらないけど。でもカイと結婚するくらいならラルフの方がマシ。すんごい嫌だけど。皇后にだけはなるつもりはない。
カイが更に詳しく教えてくれる。曰く、
私を婚約者に、と押している人たちの言い分は、全属性+光属性持ちの私の方が皇后に相応しい。魔法学校に入学したとはいえ平民を皇族になど論外だ。
リリーを婚約者に、と押している人たちの言い分は、私には既に婚約者がいる。成績も申し分なく、心優しいリリーはカイの婚約者に相応しい。
とのことらしい。やっぱり私に婚約者がいるというのがギリギリのラインを保っているようだ。初めてラルフに感謝している。
私はにっこりと笑顔を浮かべてカイとリリーを見た。
「大丈夫ですわ。お二人はとてもお似合いですもの。皆様きっと分かってくださいます」
私の言葉にカイの表情が少し和らかくなった気がした。
「お二人の婚約は実現します。わたくしが保証しますわ」
根拠のない保証だけど、実際に二人が結ばれた世界を知っているのだ。不可能ではないだろう。
「もし殿下がお望みでしたらお父様と少しお話をしてみますが? お父様がわたくしと殿下の婚約を望んでいないと分かれば声を少し小さくする方もいらっしゃるのでは?」
人望に厚いお父様だ。お父様の一言で少し私を押す声も弱まるかもしれない。
カイは首を横に振った。真っすぐの瞳で。
想像通りだ。カイが頷くなんて思っていない。
「いや、宰相とは私が話すよ。これ以上エレナに迷惑をかけるわけにはいかないからね」
「いいえ、迷惑だなんて思ったことはありませんわ。わたくしにできることがあればいつでもおっしゃってくださいませ。わたくしはお二人の味方ですから」
迷惑だと思ったことはない。面倒だと思ったことはあるけど。心の中で付け加える。
だけど私にも無関係ではないから。カイとリリーの婚約の手助けなら喜んでするよ。
「ありがとう。エレナが大丈夫と言うのならきっと大丈夫だ」
カイはそう言うと立ち上がり、ドアへと向かう。リリーもその後ろをついて行き、部屋を出る前にカイは振り返って私を見た。
「二人で精一杯頑張ってみるよ」
「はい、頑張ってくださいませ」
笑顔を浮かべてそう言うと、二人は部屋から出て行った。私は伸ばしていた背筋を少しゆるめ、クリスを見た。
「わたくし、大したことは何も言っていないのだけど、あれで良かったのかしら?」
クリスは「いいと思うよ」と頷く。
「多分エレナに背中を押してもらいたかっただけなんじゃない? ほら、これから大変だろうから」
「それだけの為に呼び出されたの? ……分からないわ」
私が背中を押したところで何かが変わるわけではないだろうに。
「いいんだよ」
クリスはそう言うと勢いよく立ち上がった。
「エレナの望み通りになりそうだね」
「ええ、そうね。一安心だわ」
だけどまだ婚約が決まったわけではない。しばらく私は影を薄くして過ごそう。そう心に決め、椅子から立ちあがった。
そう思って立ち上がろうとすると、カイは私を見て言った。
「それで、相談なのだが……」
え、まさかの本題はこれから!? 相談したいことってベアトリクスの一件じゃなかったの!?
何気ない顔で浮かしかけた腰を再び椅子に沈める。にっこりと笑って「なんでしょう」と言うとカイは少しだけ表情を曇らせて言った。
「私達の婚約は実際、実現すると思うかい?」
……いや、そんなこと私に聞かれたって分かんないし。決めるのは私ではなく大人たちだ。だけどカイは真剣と不安の入り混じった表情だ。こんな顔されたら真面目に考えて答えるしかない。
ゲーム内では婚約できていた、とは言え、状況はかなり違うんじゃないかと思う。
まあ邪魔なのは私の存在だよね。
「わたくしとリリー様の立場はお城ではどうなのでしょうか?」
「多分エレナの考えている通りだよ。貴族の間ではエレナ派とリリー派に分かれている。というか、宰相派か反宰相派だね」
やっぱりそうなるよね。娘が皇族に入るなんて親や家にとってはかなり力のつくことだ。これ以上お父様に力を付けて欲しくない貴族たちにとって私がカイの婚約者になるなんて論外だろう。
宰相の娘の私か、元平民のリリー。どちらがマシかという話だ。
「ちなみに婚約者候補はリリー様以外には上がっていないのですか?」
「いや、数人いるにはいる。が、やはり光属性の使い手であるエレナとリリーが最有力候補だ」
意外と今のベアトリクスとかいいと思うけど、それは言わないでおく。それこそ陛下はクラッセン公爵家にいい感情を持っていないようだし。
「一応わたくしには既に婚約者がいるのですけどね……」
なんで勝手にそんな話になっているのか。私は一言もカイの婚約者になりたいなんて言っていないし、お父様も言っていないだろう。
まあボヤいたって仕方がない。
「エレナとラルフの婚約は既に破棄されているものだと思っている貴族が半数。残りはすぐに破棄されると思っている者か、破棄させて私の婚約者にさせようと考えている者だ」
あ、なるほど。誰も私とラルフがこのまま結婚すると思っていないようで。まあ私もそんなつもりさらさらないけど。でもカイと結婚するくらいならラルフの方がマシ。すんごい嫌だけど。皇后にだけはなるつもりはない。
カイが更に詳しく教えてくれる。曰く、
私を婚約者に、と押している人たちの言い分は、全属性+光属性持ちの私の方が皇后に相応しい。魔法学校に入学したとはいえ平民を皇族になど論外だ。
リリーを婚約者に、と押している人たちの言い分は、私には既に婚約者がいる。成績も申し分なく、心優しいリリーはカイの婚約者に相応しい。
とのことらしい。やっぱり私に婚約者がいるというのがギリギリのラインを保っているようだ。初めてラルフに感謝している。
私はにっこりと笑顔を浮かべてカイとリリーを見た。
「大丈夫ですわ。お二人はとてもお似合いですもの。皆様きっと分かってくださいます」
私の言葉にカイの表情が少し和らかくなった気がした。
「お二人の婚約は実現します。わたくしが保証しますわ」
根拠のない保証だけど、実際に二人が結ばれた世界を知っているのだ。不可能ではないだろう。
「もし殿下がお望みでしたらお父様と少しお話をしてみますが? お父様がわたくしと殿下の婚約を望んでいないと分かれば声を少し小さくする方もいらっしゃるのでは?」
人望に厚いお父様だ。お父様の一言で少し私を押す声も弱まるかもしれない。
カイは首を横に振った。真っすぐの瞳で。
想像通りだ。カイが頷くなんて思っていない。
「いや、宰相とは私が話すよ。これ以上エレナに迷惑をかけるわけにはいかないからね」
「いいえ、迷惑だなんて思ったことはありませんわ。わたくしにできることがあればいつでもおっしゃってくださいませ。わたくしはお二人の味方ですから」
迷惑だと思ったことはない。面倒だと思ったことはあるけど。心の中で付け加える。
だけど私にも無関係ではないから。カイとリリーの婚約の手助けなら喜んでするよ。
「ありがとう。エレナが大丈夫と言うのならきっと大丈夫だ」
カイはそう言うと立ち上がり、ドアへと向かう。リリーもその後ろをついて行き、部屋を出る前にカイは振り返って私を見た。
「二人で精一杯頑張ってみるよ」
「はい、頑張ってくださいませ」
笑顔を浮かべてそう言うと、二人は部屋から出て行った。私は伸ばしていた背筋を少しゆるめ、クリスを見た。
「わたくし、大したことは何も言っていないのだけど、あれで良かったのかしら?」
クリスは「いいと思うよ」と頷く。
「多分エレナに背中を押してもらいたかっただけなんじゃない? ほら、これから大変だろうから」
「それだけの為に呼び出されたの? ……分からないわ」
私が背中を押したところで何かが変わるわけではないだろうに。
「いいんだよ」
クリスはそう言うと勢いよく立ち上がった。
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