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お願いの相手
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「大変お心苦しいお願いなのですが……」
そう前置きをしてお願いすると、唯一の心当たりは全く問題ないという顔で頷いた。
「いいよ。エレナの妹をエスコートすればいいんだね?」
頼んでおいてなんだけど、こうすんなり頷かれるとそれはそれで不安になる。婚約者でも身内でもない女の子を連れて行くのは大丈夫なのだろうか。マクシミリアン的に。
あまりにもあっさり頷かれたからか、カミラが唖然としていた。その表情を見てマクシミリアンは柔らかい笑みを浮かべる。
「大丈夫だよ。僕は婚約者はいないし、別に欲しいとも思っていないから。多少誤解されたところで何の問題もない。それより、君は大丈夫? 僕と婚約しているって思われるかもしれないけど」
カミラはその言葉に首を横に振った。
「そのような心配は杞憂ですわ。シュルツ侯爵家のご子息と噂になって困る令嬢などいませんもの」
それは本当にそうだと思う。マクシミリアンは攻略対象なだけあって顔が良く、頭も良く、性格もいい。どこぞの侯爵家の息子とは大違いだ。噂になって喜ぶ子はいても困る子なんていない。
「そんなふうに言ってもらえるなんて光栄だよ」
「ああっ、もちろん婚約者のお顔なんてするつもりはありませんので、安心してくださいませ」
カミラが慌てたようにそう言う。確かに噂に乗っかってここぞとばかりに婚約者面するようなカミラではない。その辺の図々しい令嬢たちと同じではないのだ。
だからこそ私だってマクシミリアンにこんなお願いをすることができるのだけど。……でも段々申し訳なくなってきたぞ。モテモテのマクシミリアンだ。レオンがベアトリクスと婚約してから特に。
……これで誤解が広まってマクシミリアンの婚約も遠のいたらどうしよう。婚約者はいなく、信頼ができる上に、ラルフに何かされそうになっても守ることのできる相手。そんな丁度いい相手はマクシミリアン以外にいないとはいえ、これで迷惑がかかってしまったらとても申し訳ない。
「このようなことを頼んでしまって本当に申し訳ありません。あの、本当に迷惑でしたら断ってくださってもよろしいのですよ?」
そう言う私をクリスが「何を今更」とでも言いたげな顔で見た。うん、本当にその通りだと思う。頼みに来る前に踏みとどまるべきだった。
しかしマクシミリアンは全く表情を変えない。
「僕は一向に構わないよ。当日はよろしくね、カミラ。僕のことは名前で呼んで」
「は、はい、よろしくお願い致します。マクシミリアン様」
マクシミリアンの差し出した手をそっと取るカミラ。その様子はまるで王子様とお姫様のようだ。
……結構お似合いだよ、この二人。
姉のひいき目なしでもとても整った、だけど可愛らしい顔立ちのカミラ。美形のマクシミリアンと並んでも劣らない。
……本当になんでうちの兄妹は私以外皆顔が良いのだろう。デザイナーさんがエレナのキャラデザだけ手を抜いたとしか思えない。まあいいけど。
マクシミリアンは「じゃあまた後日」と言うと寮へと戻って行った。
私は浮かべていた笑顔を消し、サッと立ち上がる。カミラが勢いよく立ち上がった私を驚いたように見た。
「カミラ、すぐにうちに帰るわよ」
アリアに声を飛ばし、すぐに馬車を出してくれるようにお願いする。そしてお義母様にも謝罪を飛ばしておく。
『卒業パーティーでカミラをエスコートしたいとおっしゃってくださる殿方がいらっしゃいました。急で申し訳ありません。今からそちらへ帰りますので、詳しいことはその時にお話しいたします』
私の言葉を聞いてカミラがサッと顔色を変える。どうやら卒業パーティーに出席するにあたっての準備のことなど全く考えていなかったようだ。
もう数日でパーティーの日。準備する時間なんて全くない。分かっていら上でカミラを誘った。お義母様やアリアには怒られる覚悟はしている。
「クリス、ごめんなさい、今日はうちへ戻りますわ。寮母さん――クラウディア様に伝えておいてくれるかしら?」
「うん、任せて。頑張って」
呑気な顔で手を振るクリスと別れ、学園の門の方へ歩く。早足で歩きたいところだけど人目もある以上そうせかせかできない。
カミラへ視線を向けるととても不安そうな顔をしていた。
「ど、どうしましょう、お姉さま。わたくし、ただ行きたいとそればかりで、準備のことなんて全く考えておりませんでしたわ……」
「大丈夫よ、カミラ。うちの使用人たちは皆優秀ですもの。絶対に準備は間に合いますわ」
それに怒られるとしたら私だ。誘ったのは私だし、マクシミリアンに頼んだのも私。カミラは悪くない。
にこっと笑うと、カミラは「はい」とまだ不安そうな表情で頷いた。
そう前置きをしてお願いすると、唯一の心当たりは全く問題ないという顔で頷いた。
「いいよ。エレナの妹をエスコートすればいいんだね?」
頼んでおいてなんだけど、こうすんなり頷かれるとそれはそれで不安になる。婚約者でも身内でもない女の子を連れて行くのは大丈夫なのだろうか。マクシミリアン的に。
あまりにもあっさり頷かれたからか、カミラが唖然としていた。その表情を見てマクシミリアンは柔らかい笑みを浮かべる。
「大丈夫だよ。僕は婚約者はいないし、別に欲しいとも思っていないから。多少誤解されたところで何の問題もない。それより、君は大丈夫? 僕と婚約しているって思われるかもしれないけど」
カミラはその言葉に首を横に振った。
「そのような心配は杞憂ですわ。シュルツ侯爵家のご子息と噂になって困る令嬢などいませんもの」
それは本当にそうだと思う。マクシミリアンは攻略対象なだけあって顔が良く、頭も良く、性格もいい。どこぞの侯爵家の息子とは大違いだ。噂になって喜ぶ子はいても困る子なんていない。
「そんなふうに言ってもらえるなんて光栄だよ」
「ああっ、もちろん婚約者のお顔なんてするつもりはありませんので、安心してくださいませ」
カミラが慌てたようにそう言う。確かに噂に乗っかってここぞとばかりに婚約者面するようなカミラではない。その辺の図々しい令嬢たちと同じではないのだ。
だからこそ私だってマクシミリアンにこんなお願いをすることができるのだけど。……でも段々申し訳なくなってきたぞ。モテモテのマクシミリアンだ。レオンがベアトリクスと婚約してから特に。
……これで誤解が広まってマクシミリアンの婚約も遠のいたらどうしよう。婚約者はいなく、信頼ができる上に、ラルフに何かされそうになっても守ることのできる相手。そんな丁度いい相手はマクシミリアン以外にいないとはいえ、これで迷惑がかかってしまったらとても申し訳ない。
「このようなことを頼んでしまって本当に申し訳ありません。あの、本当に迷惑でしたら断ってくださってもよろしいのですよ?」
そう言う私をクリスが「何を今更」とでも言いたげな顔で見た。うん、本当にその通りだと思う。頼みに来る前に踏みとどまるべきだった。
しかしマクシミリアンは全く表情を変えない。
「僕は一向に構わないよ。当日はよろしくね、カミラ。僕のことは名前で呼んで」
「は、はい、よろしくお願い致します。マクシミリアン様」
マクシミリアンの差し出した手をそっと取るカミラ。その様子はまるで王子様とお姫様のようだ。
……結構お似合いだよ、この二人。
姉のひいき目なしでもとても整った、だけど可愛らしい顔立ちのカミラ。美形のマクシミリアンと並んでも劣らない。
……本当になんでうちの兄妹は私以外皆顔が良いのだろう。デザイナーさんがエレナのキャラデザだけ手を抜いたとしか思えない。まあいいけど。
マクシミリアンは「じゃあまた後日」と言うと寮へと戻って行った。
私は浮かべていた笑顔を消し、サッと立ち上がる。カミラが勢いよく立ち上がった私を驚いたように見た。
「カミラ、すぐにうちに帰るわよ」
アリアに声を飛ばし、すぐに馬車を出してくれるようにお願いする。そしてお義母様にも謝罪を飛ばしておく。
『卒業パーティーでカミラをエスコートしたいとおっしゃってくださる殿方がいらっしゃいました。急で申し訳ありません。今からそちらへ帰りますので、詳しいことはその時にお話しいたします』
私の言葉を聞いてカミラがサッと顔色を変える。どうやら卒業パーティーに出席するにあたっての準備のことなど全く考えていなかったようだ。
もう数日でパーティーの日。準備する時間なんて全くない。分かっていら上でカミラを誘った。お義母様やアリアには怒られる覚悟はしている。
「クリス、ごめんなさい、今日はうちへ戻りますわ。寮母さん――クラウディア様に伝えておいてくれるかしら?」
「うん、任せて。頑張って」
呑気な顔で手を振るクリスと別れ、学園の門の方へ歩く。早足で歩きたいところだけど人目もある以上そうせかせかできない。
カミラへ視線を向けるととても不安そうな顔をしていた。
「ど、どうしましょう、お姉さま。わたくし、ただ行きたいとそればかりで、準備のことなんて全く考えておりませんでしたわ……」
「大丈夫よ、カミラ。うちの使用人たちは皆優秀ですもの。絶対に準備は間に合いますわ」
それに怒られるとしたら私だ。誘ったのは私だし、マクシミリアンに頼んだのも私。カミラは悪くない。
にこっと笑うと、カミラは「はい」とまだ不安そうな表情で頷いた。
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