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会場入り
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会場に入ると、まだあまり人はいなかった。馬車が混むのが嫌だったので少し早めを狙ったのだけど、良い感じだったようだ。皆の姿を探す。
カイ、レオン、マクシミリアンはまだ。ヨハンはあっちの方でノイナー先生と話をしている。今日は教師としての参加なので忙しいのかもしれない。
そして、ラルフもまだいない。婚約破棄がどのタイミングで、どう言われるのかは分からない。いつでも破棄される心の準備はできている。
ラルフに会ったあの日から今日をずっと心待ちにしていたのだ。クリスと並んで壁際に立つ。ヘンドリックお兄様は知っている人がいたのか、私達から離れて行った。
「パーティーは二回目だけどやっぱり慣れないね」
「ええ、本当に。この本格的なドレスは苦しくて仕方がないわ」
お茶会の時に着るドレスとは全く違う今日のドレス。コルセットもしっかりと絞められている。おかげでくびれがいつもよりもすごい。けどとても苦しい。おしゃれは我慢なのはどの世界も変わらない。
ボーっと扉の方を眺めていると、マクシミリアンとカミラの姿が見えた。エスコートされたカミラは慣れない様子で、それもまた可愛い。
「あの二人お似合いだね。このまま本当に婚約してしちゃえばいいのに」
「何を言っているの。マクシミリアン様はおモテになるのよ。もっと身分の高いお家のご令嬢も選べるわ」
うちだって伯爵家の中では結構上の方だし、お父様は宰相なので家柄的にはかなり良い方だ。だけどそう図々しいことは言えない。
やはり身分が高い方が礼儀作法などもろもろがしっかりしている傾向があるので、マクシミリアンはともかく、シュルツ家としては最低でも侯爵家のご令嬢を狙っているだろう。
……それを考えるとあのラルフとマクシミリアンの身分が一緒だって言うのがすごい違和感なんだけど。まあ教育を受けることのできる環境だからってそれが本人の身につくかは別か。
「エレナこそ何言ってるの。マクシミリアンはカミラのこと気に入っているよ」
それはまあ知っている。マクシミリアンは優しいし、穏やかだ。だけど女の子に対して少し冷たいなと感じる時がる。素っ気ないとまでは言わないけど、傍から見ていて、あれ?って思うくらい。
だけどカミラに対してはそれがない。だから私も今回お願いしたんだけど。
「エレナの妹だからってそれだけじゃないよ。あれは脈ありだね!」
「そうであっても決めるのはうちではないわ」
身分の低いうちにそれをどうするかなんて決める権利はない。あちらから言ってもらえたらもちろん、悪い話ではない。
二人はゆっくりと私たちの方へと歩いて来る。その様子を見ている周りの生徒たちはざわざわとしている。中にはマクシミリアンを狙っていた女の子達もいるだろう。
……これは私やらかした? 五年前の自分を思い出し、いたたまれない気持ちになる。カミラがいじめられたらどうしよう。なんて思うが、周りの反応は私の想像とあまりにも違った。
「あんなにも可愛らしい婚約者がいたなんて……わたくし達なんて見向きもされないわね」
「婚約者がいらっしゃるならそうとおっしゃってくださったらよろしいのに」
「エレナ様のご令妹ではありませんか! とてもお似合いですわ」
……あれ?
「なんだかわたくしの時と随分違うようだけど」
「まあ、うん、そうだね」
クリスが何とも言えない表情で頷く。気を遣って言葉にはしなかったんだろうけど、言いたいことは分かっている。
皆悟ったのだ。カミラの可愛さには勝てない、と。
……まあいいけどね。カミラが可愛いのは事実だし。
「ごきげんよう、マクシミリアン様」
挨拶をするとマクシミリアンは小さく頷いて言った。
「まだ皆来ていないみたいだね」
「ええ、そのようですわ」
「僕はレオンと公爵令嬢が並んでるのを見るのが楽しみだよ」
それは私もちょっと楽しみ。二人は一体どんな顔をしてエスコートし、されるのだろう。
「噂をすれば、ですわ」
私の言葉にマクシミリアンが振り返る。レオンとベアトリクスが入ってきているところだった。
会場中のどの女の子と比べても一層華やかで豪華なドレスに身を包んだベアトリクス。そしていつものかっこよさが何倍にも膨れ上がったようなレオン。堂々と入場してくるその姿には思わず見惚れてしまった。
……これはありだ。あの二人が並んでいるところはあまり見ないし、顔を合わせれば嫌味の言い合いになる二人。しかしこうしてみると並んでいる姿に違和感など全く感じなかった。
公爵家のオーラってすごい。
私たちの姿を見つけたレオンの表情がパッと明るくなる。私たちとレオンたちの間にいた人たちはすぐに横に避ける。やはり身分と言うものはすごい。
皇族であるカイを別にすればあのカップルが卒業生、というかこの場で一番身分が高いのだ。そりゃ皆避けるわ。
「よお!」
レオンがいつものように笑い、手を上げる。ベアトリクスもいつもと同じ表情で「ごきげんよう」と言った。着飾ってメイクをして、外見がいつもと違っていても皆は皆だ。
このメンバーで今日を迎えられたことをとても嬉しく思った。
カイ、レオン、マクシミリアンはまだ。ヨハンはあっちの方でノイナー先生と話をしている。今日は教師としての参加なので忙しいのかもしれない。
そして、ラルフもまだいない。婚約破棄がどのタイミングで、どう言われるのかは分からない。いつでも破棄される心の準備はできている。
ラルフに会ったあの日から今日をずっと心待ちにしていたのだ。クリスと並んで壁際に立つ。ヘンドリックお兄様は知っている人がいたのか、私達から離れて行った。
「パーティーは二回目だけどやっぱり慣れないね」
「ええ、本当に。この本格的なドレスは苦しくて仕方がないわ」
お茶会の時に着るドレスとは全く違う今日のドレス。コルセットもしっかりと絞められている。おかげでくびれがいつもよりもすごい。けどとても苦しい。おしゃれは我慢なのはどの世界も変わらない。
ボーっと扉の方を眺めていると、マクシミリアンとカミラの姿が見えた。エスコートされたカミラは慣れない様子で、それもまた可愛い。
「あの二人お似合いだね。このまま本当に婚約してしちゃえばいいのに」
「何を言っているの。マクシミリアン様はおモテになるのよ。もっと身分の高いお家のご令嬢も選べるわ」
うちだって伯爵家の中では結構上の方だし、お父様は宰相なので家柄的にはかなり良い方だ。だけどそう図々しいことは言えない。
やはり身分が高い方が礼儀作法などもろもろがしっかりしている傾向があるので、マクシミリアンはともかく、シュルツ家としては最低でも侯爵家のご令嬢を狙っているだろう。
……それを考えるとあのラルフとマクシミリアンの身分が一緒だって言うのがすごい違和感なんだけど。まあ教育を受けることのできる環境だからってそれが本人の身につくかは別か。
「エレナこそ何言ってるの。マクシミリアンはカミラのこと気に入っているよ」
それはまあ知っている。マクシミリアンは優しいし、穏やかだ。だけど女の子に対して少し冷たいなと感じる時がる。素っ気ないとまでは言わないけど、傍から見ていて、あれ?って思うくらい。
だけどカミラに対してはそれがない。だから私も今回お願いしたんだけど。
「エレナの妹だからってそれだけじゃないよ。あれは脈ありだね!」
「そうであっても決めるのはうちではないわ」
身分の低いうちにそれをどうするかなんて決める権利はない。あちらから言ってもらえたらもちろん、悪い話ではない。
二人はゆっくりと私たちの方へと歩いて来る。その様子を見ている周りの生徒たちはざわざわとしている。中にはマクシミリアンを狙っていた女の子達もいるだろう。
……これは私やらかした? 五年前の自分を思い出し、いたたまれない気持ちになる。カミラがいじめられたらどうしよう。なんて思うが、周りの反応は私の想像とあまりにも違った。
「あんなにも可愛らしい婚約者がいたなんて……わたくし達なんて見向きもされないわね」
「婚約者がいらっしゃるならそうとおっしゃってくださったらよろしいのに」
「エレナ様のご令妹ではありませんか! とてもお似合いですわ」
……あれ?
「なんだかわたくしの時と随分違うようだけど」
「まあ、うん、そうだね」
クリスが何とも言えない表情で頷く。気を遣って言葉にはしなかったんだろうけど、言いたいことは分かっている。
皆悟ったのだ。カミラの可愛さには勝てない、と。
……まあいいけどね。カミラが可愛いのは事実だし。
「ごきげんよう、マクシミリアン様」
挨拶をするとマクシミリアンは小さく頷いて言った。
「まだ皆来ていないみたいだね」
「ええ、そのようですわ」
「僕はレオンと公爵令嬢が並んでるのを見るのが楽しみだよ」
それは私もちょっと楽しみ。二人は一体どんな顔をしてエスコートし、されるのだろう。
「噂をすれば、ですわ」
私の言葉にマクシミリアンが振り返る。レオンとベアトリクスが入ってきているところだった。
会場中のどの女の子と比べても一層華やかで豪華なドレスに身を包んだベアトリクス。そしていつものかっこよさが何倍にも膨れ上がったようなレオン。堂々と入場してくるその姿には思わず見惚れてしまった。
……これはありだ。あの二人が並んでいるところはあまり見ないし、顔を合わせれば嫌味の言い合いになる二人。しかしこうしてみると並んでいる姿に違和感など全く感じなかった。
公爵家のオーラってすごい。
私たちの姿を見つけたレオンの表情がパッと明るくなる。私たちとレオンたちの間にいた人たちはすぐに横に避ける。やはり身分と言うものはすごい。
皇族であるカイを別にすればあのカップルが卒業生、というかこの場で一番身分が高いのだ。そりゃ皆避けるわ。
「よお!」
レオンがいつものように笑い、手を上げる。ベアトリクスもいつもと同じ表情で「ごきげんよう」と言った。着飾ってメイクをして、外見がいつもと違っていても皆は皆だ。
このメンバーで今日を迎えられたことをとても嬉しく思った。
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