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ネクロマンサー
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「よいしょっと・・・ここかな」
クレアが転移魔法で降り立ったのは瓦礫の山。
かつて魔王城だったなれの果て、その場所だ。
クレアは瓦礫の山を見上げ深いため息を吐く。今からやらなくてはならない重労働を考えて面倒くさくなったのだ。
「こっちの方を下僕にやらせたらよかったかなー? まあ今更遅いか」
それにこの仕事は自分以外がやっても意味が無い。
瓦礫をかき分けてお目当てのモノを探す。
女人の細腕。太陽を知らぬといわんばかりの透けるような白い肌。今にも折れそうなその手を伸ばし、クレアは自分の身長よりも大きな瓦礫をひょいと持ち上げると背後に放った。
魔神。
そう呼ばれる彼女は肉体派では無いとはいえ魔族の端くれ。見た目とその腕力は比例しない。何ならヒグマを片手でひねり潰せるだろう。
そうやって大きな瓦礫を除去していき、クレアはついにお目当てのモノを探し当てた。
両断された大きな魔族の死体。
魔王カプリコーンその人だ。
「おやおや、ずいぶんと派手にやられてるねえ」
クレアは死体の側にしゃがみ込むと懐から鋭いナイフを取り出して、何とその場で死体の解剖を始める。
魔王カプリコーンの死体は大きく、家に持って帰るのは手間だと考えたのだろう。
死体をいじくり回すその表情は真剣そのもの。
ネクロマンサーとして、カプリコーンの死体の損傷具合をチェックしていく・・・。
「・・・・・・ちぇっ、これじゃあ蘇らせられないな。細胞の損傷が大きすぎるや」
正確にはこの状況で術の行使が行えない訳では無い。しかし死体の損傷が大きい状況で死術を行使すると、その死体は出来損ないのゾンビになってしまうのだ。
それは誇り高い魔王カプリコーンに対してあまりに無礼というもの。
・・・まあ単純に戦力にならないゾンビを作る手間が惜しいという事もあるのだが。
「・・・名残惜しいけど、このまま死体を腐らせるのも勿体ないわね」
そう言って再びナイフを手に死体を斬ってゆく。しばらくしてクレアが死体から取り出したのはカプリコーンの心臓。
彼女は人のソレと比べて大きなソレを親指と人差し指でつまむと、おもむろにヒョイと口に放り込んだ。
血の滴る心臓をよく噛んで嚥下する。
”ドクンッ”
クレアの心臓が強く鼓動を刻み、額には血管が浮かび上がる。美しかった細腕は筋肉が隆起し、メキメキと音を立てて獣の骨格に変わっていった。
数秒後、そこに立っていたのは怪物だった。
隆起した全身の筋肉と獣じみた骨格。頭からは山羊の角が生え、身体の至る所に魔王カプリコーンの残滓が見える。
「・・・うん、いいかんじ」
自身の身体を眺め、納得した様子のクレアは身体を大きくぶるりと振るわせる。
すると変形した身体が徐々に縮んでゆき、瞬く間に元の美しい姿へと戻った。
「さて、不本意でしょうけどその死体の一片まで有効活用させてもらうわよカプリコーン」
そう言って歪な笑みを浮かべる魔神クレア。
死霊術は禁忌だ。
術者にリスクがあるだとか、そういう事では無い。
その術は死者を冒涜する。
死の安寧を陵辱し、死体を冒涜し、その一片までをもむさぼり尽くす。
死霊術は異端だ。
故にネクロマンサーは淘汰され、その存在は歴史から屠られた。
・・・・・・ただ一人を除いて。
クレア・マグノリアは、・・・世界最後のネクロマンサーはその美しい顔を狂気に歪めて楽しそうに魔王の死体を切り刻むのであった。
◇
クレアが転移魔法で降り立ったのは瓦礫の山。
かつて魔王城だったなれの果て、その場所だ。
クレアは瓦礫の山を見上げ深いため息を吐く。今からやらなくてはならない重労働を考えて面倒くさくなったのだ。
「こっちの方を下僕にやらせたらよかったかなー? まあ今更遅いか」
それにこの仕事は自分以外がやっても意味が無い。
瓦礫をかき分けてお目当てのモノを探す。
女人の細腕。太陽を知らぬといわんばかりの透けるような白い肌。今にも折れそうなその手を伸ばし、クレアは自分の身長よりも大きな瓦礫をひょいと持ち上げると背後に放った。
魔神。
そう呼ばれる彼女は肉体派では無いとはいえ魔族の端くれ。見た目とその腕力は比例しない。何ならヒグマを片手でひねり潰せるだろう。
そうやって大きな瓦礫を除去していき、クレアはついにお目当てのモノを探し当てた。
両断された大きな魔族の死体。
魔王カプリコーンその人だ。
「おやおや、ずいぶんと派手にやられてるねえ」
クレアは死体の側にしゃがみ込むと懐から鋭いナイフを取り出して、何とその場で死体の解剖を始める。
魔王カプリコーンの死体は大きく、家に持って帰るのは手間だと考えたのだろう。
死体をいじくり回すその表情は真剣そのもの。
ネクロマンサーとして、カプリコーンの死体の損傷具合をチェックしていく・・・。
「・・・・・・ちぇっ、これじゃあ蘇らせられないな。細胞の損傷が大きすぎるや」
正確にはこの状況で術の行使が行えない訳では無い。しかし死体の損傷が大きい状況で死術を行使すると、その死体は出来損ないのゾンビになってしまうのだ。
それは誇り高い魔王カプリコーンに対してあまりに無礼というもの。
・・・まあ単純に戦力にならないゾンビを作る手間が惜しいという事もあるのだが。
「・・・名残惜しいけど、このまま死体を腐らせるのも勿体ないわね」
そう言って再びナイフを手に死体を斬ってゆく。しばらくしてクレアが死体から取り出したのはカプリコーンの心臓。
彼女は人のソレと比べて大きなソレを親指と人差し指でつまむと、おもむろにヒョイと口に放り込んだ。
血の滴る心臓をよく噛んで嚥下する。
”ドクンッ”
クレアの心臓が強く鼓動を刻み、額には血管が浮かび上がる。美しかった細腕は筋肉が隆起し、メキメキと音を立てて獣の骨格に変わっていった。
数秒後、そこに立っていたのは怪物だった。
隆起した全身の筋肉と獣じみた骨格。頭からは山羊の角が生え、身体の至る所に魔王カプリコーンの残滓が見える。
「・・・うん、いいかんじ」
自身の身体を眺め、納得した様子のクレアは身体を大きくぶるりと振るわせる。
すると変形した身体が徐々に縮んでゆき、瞬く間に元の美しい姿へと戻った。
「さて、不本意でしょうけどその死体の一片まで有効活用させてもらうわよカプリコーン」
そう言って歪な笑みを浮かべる魔神クレア。
死霊術は禁忌だ。
術者にリスクがあるだとか、そういう事では無い。
その術は死者を冒涜する。
死の安寧を陵辱し、死体を冒涜し、その一片までをもむさぼり尽くす。
死霊術は異端だ。
故にネクロマンサーは淘汰され、その存在は歴史から屠られた。
・・・・・・ただ一人を除いて。
クレア・マグノリアは、・・・世界最後のネクロマンサーはその美しい顔を狂気に歪めて楽しそうに魔王の死体を切り刻むのであった。
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