その場にいたのは僕だけだった

桜井 海來

文字の大きさ
10 / 10

その場にいたのは僕だけだった(夕暮れ3)

しおりを挟む
兎のように跳ねてしまった僕。「キャハキャハ」と笑う声、こんな事をしてくるのは彼女しかいないと思い苛立った表情で振り向いた。案の定そこにはヘラヘラと笑う夏陽さんがたっていた。「時愛君っていいリアクションするよね!」っと全く反省していない様子だった。「あのねっ」っと呆れた態度を見せたがそれも効かず、「うぃうぃよっ」と横腹あたりをツツこうとフェイントしてくる、僕もそれにビクビクしながらも避けていた。 
 「あの~」っと申し訳ない様子で衣里さんが一段下で両手で鍵を持って待っていた。いつの間にいたの?っと思ったが、どうやら来たばかりだったようで、
 「お!衣里ちゅわーん!」甲高い声で抱き付く夏陽さん。一方衣里さんは顔が真っ赤になり嬉しそうには見えたが抱きつく力が強いのか苦しそうにも見えた。
暫くして夏陽さんの縄から解き放たれた衣里さんは扉に近かった僕に鍵を渡してきた。腰を下ろし鍵で開けようとした時、「時愛君、明日休みだし私暇だからさデートしようよ!」軽快な声と驚きを隠せれない吐息が背後から聞こえた。突然の出来事で僕も鍵を落とす。しかし「あははっ」っと夏陽さんは腰に手を当て笑っていた。その横で口元を両手で塞ぐ衣里さんの姿、僕はポカーンっと口を開け暫くその光景を眺めていた。開いた口が塞がらないと言うのは、まさにこういう事だと実感した。夏陽さんはまだクスクスと笑っていて、衣里さんは目を見開いたまま僕と夏陽さんを交互に見ていた。
「え?夏陽先輩付き合ってたんですか?」驚きのあまり言葉がままならない様子で、夏陽さんの方へゆっくりと目を向ける。
 「そだよ!」軽く返事をする夏陽さん。
衣里さんの表情は一変し何故か目はキラキラと輝かせ僕の方を見てきた。目が合った僕はジワジワと顔が熱くなってきた。「これはそのっ、ち、違うんだよ、なんか、その~」両手をバタバタと横に振り必死に悲しませないと誤魔化そうとした。僕と夏陽さんの関係は誰にもバレずにいたかったが、よりによって衣里さんにバレてしまった。というか夏陽さんが突然この場でカミングアウトするからこんな事になったんだ。衣里さんが悲しんでた理由をしているはずなのに、一体、夏陽さんは何を考えているんだ。きっと衣里さんの心はズタボロのはずだろう。
 「違わないよ私達付き合ってるもの」でも夏陽さんの言っていることは事実、僕は何も言い返せなかった。
 「お、応援してます!」っと満更(まんざら)でもない様子で、まだ目をキラキラさせていた。僕は予想外の出来事で本日2度目の口がポカーンっと開いた。泣くと思っていたしガッカリすると思った。女の子というものは本当に分からない。
 「おっ!ありがとう!ありがとう!」っと夏陽さんは腕を組んで組み大きく頷いていた。戸惑いながらも「うん」っと僕は小さく声発した。
「よしゴミ拾いしましょうか!」何故か当番でもない夏陽さんが1番気合いが入っていた。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

しおいなり
2021.08.19 しおいなり

私自身恋愛に悩んでいて共感する所もあり、恋愛の例え方が素敵だなと思いました。
次回も楽しみにしてます!

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。