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箱隠しの章
驚愕
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「ふぅ…」
ようやく、息が整え終わった。
暗い林の中をゆっくりと進む。
くぼみに足を取られないように、一歩、一歩、慎重な足取りで。
グランドにはまだ、ソフトボール部とサッカー部が残っていた。
ボールを追いかけるのに夢中で、誰も雑木林の方など見ていない。
100メートルほどの距離を歩くのに、相当時間がかかった。
雑木林を抜けると、良太は旧校舎の脇に着いた。
旧校舎は入口には鎖で封印され、南京錠で鍵が掛かっている。
けれど、窓は別だった。
どこの窓も鍵は開いていて、少し、よじ登れば中に入れるようになっていた。
高校に入学した時、冒険気分で、1年なら誰でもやっていた。
旧校舎の中は老朽化が進み、床に穴などが所々に空いている。
グラウンドと校舎からの光で、旧校舎の中は明かりがなくても、
目をこらせば、何とか手探りで進めるほどだった。
隠す場所は、探さなくてもあらゆるところに存在したが、
良太は二階の工作室に向かった。
間違っても、立って歩くわけにはいかない。
四つん這いになり、旧校舎を芋虫のように張って歩く。
旧校舎の廊下は、校舎からもグランドからも丸見えになっていた。
誰もいない事はわかってはいるが、歩くたびに床がミシミシと音を立てる。
その音が、誰かに聞こえるのではないかと、緊張感をもたらした。
二階の工作室に続く階段に辿り着いたが、そこには人が二、三人寝られるほどの
大きな穴が開いていた。
慎重にうかいして、階段の手すりによじ登る。
一度、窓の方を確認して、誰もこちらを見ていない瞬間を狙う。
(よし、今だ)
良太は手すりを乗り越えると、一目散に階段を駆け上がる。
二階に到着すると、今度はゆっくりと窓から、
校舎とグランドをのぞき込む、誰もこちらを見ている人はいない。
また、四つん這いになりながら、工作室までゆっくりと進んでいく。
工作室のドアは開け放たれており、容易に中に入れた。
中に入ると、立ち上がり、辺りを見渡す。
1年の時に忍び込んだ状態のままである。
生徒たちが作成した作品が、散乱しており、
工作室の隅の方には、昔の作品が山を作っていた。
山と言ってもさほど大きくはない、
45リットルのごみ袋を、パンパンにしたぐらいの大きさである。
良太はその山をかき分けて、
自分の赤い箱を山の中心に隠す算段である。
手探りでやると効率が悪いじれったさから、ライターに火をつける。
周囲は明るくなり、作品の山をかき分けて行く。
中心まで掘り当てた時に、自分のポケットから、
赤い箱を取り出した。
中に入れようと手を伸ばすとそこには、
信じられないものが目に入ってきた。
赤い箱である。
誰かの赤い箱が、もう一個入っているのである。
自分が安心しきっている場所に、赤い箱がすでに入っているのである。
「あちっ」
ライターの金属部分が熱くなり、良太の指を熱した。
思わず、ライターの火を消してしまった。
落ち着きを取り戻すのに深呼吸をする。
「ふぅ」
どこか、よどんだ空気だが、鼓動が早くなっている今は、
一刻も早く冷静に戻りたかった。
今日、二個目の箱である。
まるで赤い箱が自分に見てくれと言わんばかりに
姿を現す。
関の赤い箱は、いずれ、ばれるような場所に隠してあった。
だから、自分で理由をつけて開いたが、今度は状況が違う。
自分で掘り当ててしまった。
良太は考えた。
これをこのまま、元に戻して、
作品の下の方に埋もれさせたら、
仮に、誰かが同じ状況で掘り返しに来ても、
見つかるのは、他の人の赤い箱で、
俺のは下の方にあるから見つからないのでは。
まさか、掘り返す人も2個も同じ物が入っているとは考えないだろ。
旧校舎に出入りしている噂がたつと、先生たちも何らかの形で見回りを始めるから、
危なそうなら、卒業までにどこかに移せば大丈夫だろ。
そう考えると、良太は大急ぎで掘り返した穴を元に戻し、
作品の山の裏側に回って、再度、山が崩れないように慎重に
穴を作っていった。
そこに自分の赤い箱を入れると、箱が見えなくなるまで、作品で多いかぶせたのだ。
「はぁ~」
かなり大きな溜め息を付き、工作室からグランドの方を見る。
すでに明かりは小さくなっており、部活動をしていた生徒たちもいなくなっていた。
後は、また慎重に旧校舎を抜け出せば、いいだけの事。
万が一を考え、来た道をまた、這いつくばって、戻る。
旧校舎から出て、グランドの時計に目をやると、
時刻は19時40分を指していた。
完全にバスがなくなって、徒歩で帰る事になったが、
遅くなった言い訳を考えるより、旧校舎に存在した赤い箱は、
誰の物なのかが、良太にとって気がかりであった。
ようやく、息が整え終わった。
暗い林の中をゆっくりと進む。
くぼみに足を取られないように、一歩、一歩、慎重な足取りで。
グランドにはまだ、ソフトボール部とサッカー部が残っていた。
ボールを追いかけるのに夢中で、誰も雑木林の方など見ていない。
100メートルほどの距離を歩くのに、相当時間がかかった。
雑木林を抜けると、良太は旧校舎の脇に着いた。
旧校舎は入口には鎖で封印され、南京錠で鍵が掛かっている。
けれど、窓は別だった。
どこの窓も鍵は開いていて、少し、よじ登れば中に入れるようになっていた。
高校に入学した時、冒険気分で、1年なら誰でもやっていた。
旧校舎の中は老朽化が進み、床に穴などが所々に空いている。
グラウンドと校舎からの光で、旧校舎の中は明かりがなくても、
目をこらせば、何とか手探りで進めるほどだった。
隠す場所は、探さなくてもあらゆるところに存在したが、
良太は二階の工作室に向かった。
間違っても、立って歩くわけにはいかない。
四つん這いになり、旧校舎を芋虫のように張って歩く。
旧校舎の廊下は、校舎からもグランドからも丸見えになっていた。
誰もいない事はわかってはいるが、歩くたびに床がミシミシと音を立てる。
その音が、誰かに聞こえるのではないかと、緊張感をもたらした。
二階の工作室に続く階段に辿り着いたが、そこには人が二、三人寝られるほどの
大きな穴が開いていた。
慎重にうかいして、階段の手すりによじ登る。
一度、窓の方を確認して、誰もこちらを見ていない瞬間を狙う。
(よし、今だ)
良太は手すりを乗り越えると、一目散に階段を駆け上がる。
二階に到着すると、今度はゆっくりと窓から、
校舎とグランドをのぞき込む、誰もこちらを見ている人はいない。
また、四つん這いになりながら、工作室までゆっくりと進んでいく。
工作室のドアは開け放たれており、容易に中に入れた。
中に入ると、立ち上がり、辺りを見渡す。
1年の時に忍び込んだ状態のままである。
生徒たちが作成した作品が、散乱しており、
工作室の隅の方には、昔の作品が山を作っていた。
山と言ってもさほど大きくはない、
45リットルのごみ袋を、パンパンにしたぐらいの大きさである。
良太はその山をかき分けて、
自分の赤い箱を山の中心に隠す算段である。
手探りでやると効率が悪いじれったさから、ライターに火をつける。
周囲は明るくなり、作品の山をかき分けて行く。
中心まで掘り当てた時に、自分のポケットから、
赤い箱を取り出した。
中に入れようと手を伸ばすとそこには、
信じられないものが目に入ってきた。
赤い箱である。
誰かの赤い箱が、もう一個入っているのである。
自分が安心しきっている場所に、赤い箱がすでに入っているのである。
「あちっ」
ライターの金属部分が熱くなり、良太の指を熱した。
思わず、ライターの火を消してしまった。
落ち着きを取り戻すのに深呼吸をする。
「ふぅ」
どこか、よどんだ空気だが、鼓動が早くなっている今は、
一刻も早く冷静に戻りたかった。
今日、二個目の箱である。
まるで赤い箱が自分に見てくれと言わんばかりに
姿を現す。
関の赤い箱は、いずれ、ばれるような場所に隠してあった。
だから、自分で理由をつけて開いたが、今度は状況が違う。
自分で掘り当ててしまった。
良太は考えた。
これをこのまま、元に戻して、
作品の下の方に埋もれさせたら、
仮に、誰かが同じ状況で掘り返しに来ても、
見つかるのは、他の人の赤い箱で、
俺のは下の方にあるから見つからないのでは。
まさか、掘り返す人も2個も同じ物が入っているとは考えないだろ。
旧校舎に出入りしている噂がたつと、先生たちも何らかの形で見回りを始めるから、
危なそうなら、卒業までにどこかに移せば大丈夫だろ。
そう考えると、良太は大急ぎで掘り返した穴を元に戻し、
作品の山の裏側に回って、再度、山が崩れないように慎重に
穴を作っていった。
そこに自分の赤い箱を入れると、箱が見えなくなるまで、作品で多いかぶせたのだ。
「はぁ~」
かなり大きな溜め息を付き、工作室からグランドの方を見る。
すでに明かりは小さくなっており、部活動をしていた生徒たちもいなくなっていた。
後は、また慎重に旧校舎を抜け出せば、いいだけの事。
万が一を考え、来た道をまた、這いつくばって、戻る。
旧校舎から出て、グランドの時計に目をやると、
時刻は19時40分を指していた。
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遅くなった言い訳を考えるより、旧校舎に存在した赤い箱は、
誰の物なのかが、良太にとって気がかりであった。
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