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第八話 杀神
しおりを挟む古い倉庫の一角で完成したその箱を目の前にしながら、藤井は喜んで手を叩いた。
「いやぁ上出来、上出来。さすがこの手のオモチャを作らせたら右に出る者のいないワンさんだ。これならきっと盛大な打ち上げ花火ができるぞ!」
「オモチャとは失礼だな。しかしウルフ、こんなやべぇモン本当に作っちまってイイの?」ワンと呼ばれた痩せた中年男性は久々の力作に満足げに頷きながらも、藤井に向かって伺うように言った。
「あぁ。なんせここにいるボクの親友のたっての望みだからな。これでも随分遠慮した方だぜ。なっ、シュウ」藤井は傍らにいるシュウに声を掛けた。シュウはモノ珍しい物でも見るようにその箱をジッと覗き込んでいる。
「さて、それじゃもう一度起動前の接続テストだ。シュウ、万が一の時のために君にも何とか操作方法を覚えてもらうよ。なるべく簡単にしたつもりだから、頑張ってついてきてね。」
(六本木に大きな花火を打ち上げたい…)このシュウの一言で藤井の計画は始まった。
まずはヤミのルートを通じて必要な資材を調達し、池袋でミリタリーショップを営む、仕事仲間で軍事オタクのワンに組み立てを依頼した。組み立てる場所は月島の貸倉庫を利用することにした。
資材を倉庫に集め、頃合いを見て六本木のアジトを抜け出してワンとここで合流した。設計図の作成からパーツの加工、組み立てに約二週間を要した。試行錯誤を繰り返しながら藤井とワンは真剣そのものだったが、シュウは何だか壮大なイタズラに参加しているみたいでワクワクしていた。
「まずはこっち側の本体の主電源スイッチを入れる。その後このパソコンから接続用の信号を送って…ほらこのモニターランプが赤から緑色に変わっただろう。これで接続完了だ」藤井はノートパソコンを手にシュウに操作手順をひとつひとつ丁寧に教えている。聞いているシュウの表情は真剣そのものだ。制御回路は全て藤井が設計しプログラミングも完了した。後は本番に向け誤動作などが無いかチェックを重ねるだけだ。
「そしてこのキーを叩いてログイン画面にし、パスワードを入力したらシステム起動だ。さぁ、やってごらん」シュウは生まれて初めて触るコンピュータに緊張し、震える手でひとつひとつキーを叩いた。
「あぁ、ここはシフトキーを押しながら入力しないと。ダメダメ、別々に押すんじゃなくて一緒に押すんだ」
シュウが悪戦苦闘してるのをよそに、ワンはパイプ椅子に座りながらタバコに火を点けた。
「しかし、これだけの量の火薬よく集めたな」
「なぁに、架空のテロリスト集団を名乗ったら色んな所からわんさか集まったよ。世の中には体制を憎んでいる連中が沢山いるってことさ。あっ、ダメだよこんな所でタバコ吸っちゃ!」
「大丈夫。コイツらはキチンと起爆装置作動させないと爆発しないお利口さんだから、タバコの火ぐらいじゃ爆発しないよ。もっともその筒の中の物はオレも専門外だから分かんねぇけどな」
箱の中には綺麗に並べられた筒状のものが二十本ほど並んでいる。花火大会で使用する仕掛け花火の装置のようだった。そして箱の中心部には粘土の塊のようなブロックが置かれており、そこから何本もの配線が延びて箱の隅にある制御回路らしきものに繋がれている。
「よし。システムが起動したら、後はメニューに従って本体を操作するだけだ。どうだ、簡単だろう? もう一回最初からやるよ」
藤井のレクチャーがまだまだ続くと判断したワンはさっさとその場を去ることにした。
「それじゃ、今日のところはそろそろ失礼するぜ。明日もう一度来て最終確認が済んだら、とりあえず今回の仕事はおしまいだ。金はいつもの口座に振り込んでおいてくれ。それと、コイツを使ってアンタたちが何をしでかすつもりなのかは全く知らんが、商品引き渡し後の返品、クレームは一切受け付けないので、そのつもりでな」そう言うとワンはタバコをくわえたまま去って行った。
藤井とシュウはその後もテストを繰り返し、間違い無く装置が作動することを確認すると、スイッチを切って箱の蓋を閉めパソコンを片付けた。
「さぁ、ボクたちの準備もいよいよ大詰めだ。明日問題が無ければコイツを運送業者に引き渡して、例の場所に運んでもらう。それから本番に向けたシミュレーションをして、荷物が到着するタイミングに合わせてボクらもここを出るよ。楽しみだなぁ。お祭り騒ぎに浮かれてる六本木の連中にコイツをお見舞いしてやったら、いったいどんな顔をするだろうなぁ」
「ねぇトモ、オレたち本当にこんなことしていいのかな?」シュウは箱を見つめたまま尋ねた。
「イイも悪いも、君が言い出したことじゃないか。ボクはただ君がしたいことの手伝いをしているだけだよ。それにシステムは起動後もいつでもキャンセルできるようになっている。もしその時になって君が止めたければ、いつでも止めればイイさ」
藤井はシュウの方に笑顔を向けながら続けた。
「あとはその時に、君の神様がどんな判断を下すかだ」その藤井の言葉にシュウはビクッと弾かれたように反応した。
「今、神様って言った?」
すると藤井は不思議そうな顔をして言った。
「あれ? ボク今何で”神様”なんて言ったんだろう。おかしいな。神様なんて信じてないハズなのに…」
シュウは自分でも気付かないうちに、自分の中に巣食う神が勝手に這い出して来て、藤井や可菜や、自分の身の回りの大事なものを全てさらっていってしまうのではないかと、たまらなく不安な気持ちになった。
その日の晩、シュウはなかなか寝付けなかった。
倉庫の片隅にレジャーシートを広げ、寝袋を並べただけの質素なベッドルームに慣れず、初めの頃は体が痛くてどうにも眠れなかったが、ものの数日もすると昼間の作業の疲れもあってか横になるとすぐに眠りに落ちるようになった。
しかし、さっき藤井と交わした会話が気になって、今夜はどうにも勝手が違っていた。
その存在など信じないという藤井に、思わず”神様”という言葉を吐かせてしまうモノの正体に、シュウは得体の知れない恐怖を感じていた。
初めて藤井と出会った時、彼は殺すつもりのない檜室たち三人組を容赦なく撃ち殺したが、本人も何故そのようなことをしたのか正直なところ分からないと言った。
もしかすると、自分にとり憑いている殺しの神が、自分だけでなく廻りの人までどうにかし始めてしまっているのではないだろうかと思うと、シュウは心底から恐ろしい気持ちになった。
ふと横を見ると、寝袋にくるまったままの藤井は、何事も無かったかのように安らかな寝息を立てている。
シュウは改めて自分の両手のひらを眺めた。
その手には、あの日可菜の首を絞めた感触がハッキリと残っている。
シュウは、あれほどまでに自分のことを気遣い、怒りに我を忘れた自分を止めてくれようとした可菜を自分自身が殺そうとしてしまったことに対して、ショックを受けていた。
藤井のアジトにいた時も、何度可菜のマンションに会いに行きたいと思ったか知れないが、これ以上可菜のそばにいると、いつか彼女にとんでもない災いがふりかかってしまうのではないかと思い、どうしても会いに行くことができなかった。
可菜は、大丈夫だろうか…
シュウは、半年前に比べて明らかに自分が変わってきていることに気付いていた。
あの時、父親の声で暗闇の底から目覚め、その父親を殺すことだけを考えていた頃の自分には、とてもそれ以外の廻りの人を思うような余裕は無かった。
しかし、父親を殺すという目的を果たした後で、あてども無い放浪の旅を続け、その中で様々な人たちと出会い、その思いを知ることを通じて、徐々に自分の中にひとを思いやる気持ちのようなものが芽生えていったことを、シュウは不思議な感覚として捉えていた。
そして、それと同時に自分の中に巣食う恐ろしい神の存在が徐々に大きくなり、やがてそれが自分の廻りの大切な人たちを傷付けてしまうのではないかという恐怖に襲われるようになった。
この恐ろしい神を消し去る方法はひとつしか無い…
シュウの中で、あるひとつの決意が芽生え始めていた。
次の日、装置の最終確認にやって来たワンに、シュウが訪ねた。
「ねぇ、この装置に仕掛けられた爆弾って、そんなに凄いモノなの?」
熱心に箱の中を覗き込んでいたワンは、突然のシュウの質問に不意を突かれて驚いた様子だった。
「お前、そんなことも分からないで、ウルフにこいつを作ってくれて頼んだのか?」
「いや、頼んだって言うか、ただ大きな花火でみんなを驚かせてあげたいな~って言っただけなんだけど…」
ワンは呆れたような表情で、掛けていたサングラスの奥からシュウの顔を覗き込んだ。
「全く、ウルフもお前さんも、どうにかしてるぜ」
肝心の藤井は、運送業者に箱の輸送を頼むために出掛けており、この場にはいなかった。
「あのなぁ、オレも実際にこの目で見たわけじゃないが、この装置に仕掛けた爆弾が本当に爆発すれば、恐らく花火どころの騒ぎじゃなくなるぜ」
「そうなの?」
「あぁ。コイツに使用している爆薬はtnt火薬と言って、安価な上に安定性に優れていて広く使われているプラスチック爆弾の材料だが、一㎏もあれば家一軒分くらいは軽く吹っ飛ばせる威力がある。この装置に使われているのは何とその二十倍の量だ。想像しただけで恐ろしくなるぜ。正直、ガキの悪戯にしちゃあちょっと度を越してると思うがな」
「ふぅ~ん」
シュウはその威力が分かっているのかいないのか、何となく曖昧な表情で返事を返したまま、しばらく考えた後で新たな質問をワンにぶつけた。
「ねぇ、この爆弾の威力をもっと小さくすることってできない?」
シュウの突拍子もない質問に、ワンは崩れそうになった。
「はぁ? 何言ってんだ、お前?」
「いや、だからそんなに凄い威力じゃなくてイイから、もう少し弱くできないかな~って思って…」
「弱くって、具体的にどのくらいだ?」
「だから… ひと一人分吹っ飛ばせるくらいの…」
ワンはしばらくサングラスの奥から疑いの眼差しをじっと向けていたと思うと、やがて重々しく慎重な口調で答えた。
「あのな、オレは爆弾を爆発させることに関してはプロフェッショナルの腕を持っているが、爆弾を爆発させなくする技術なんざ持ち合わせていねぇ。悪いが無理だ。一番手っ取り早いのは火薬の量を減らすことだが、そんなことすれば一発でウルフに気付かれちまうが、それでもイイのか?」
「それは…」思わずシュウは口ごもった。
「それと…」ワンはタバコを一本取り出すと口にくわえたまま、シュウの方を向いて尋ねた。
「ひと一人分吹っ飛べばイイって、お前、何考えてるんだ?」
「…」
シュウは押し黙ったまま何も答えようとしなかった。
「あのな…」ワンはくわえていたタバコに火を点けて、軽く一息つくと、諭すようにシュウに語りかけた。
「オレは仕事柄色んなやべえヤツらとも付き合ってきた。戦争オタクやいっぱしの革命家気取りの連中には、自分の欲望や大義とやらのためには、他人の命などどうなっても構わないと本気で思ってるイカれたヤツも沢山いたよ。だけどそいつらのほとんどは、今もちゃんと社会の中で生活してる。何でだか分かるか?」
シュウはワンの質問に答えられなかった。
「それは、そのイカれた考えを自分の頭の中で巡らせるだけで、実際には行わないからだ。フツーの人間とそうじゃない人間を線引きする境目は、ただそれだけだとオレは思ってる」
シュウには、ワンの言わんとしていることが今ひとつ理解できなかった。
「お前さんを見た時…」ワンは続けた。
「悪いがオレは、お前さんは間違いなくその一線を越えた”向こう側の人間”だと思ったよ」
シュウは思わず自分の頭の血が引いていくのを感じた。
「お前は、ホンモノの”殺し”を見てきている。あるいは…」
そこまで言った時、倉庫の入口の扉が開いて、用事を済ませた藤井がこちらに戻って来るのが見えた。
「まぁとにかく、お前さんが何を考えているのかは分からんが、あまり無茶なことはやめておいた方がイイぜ。こんなオレが言うのも何だが、どんな人間だって死んじまってイイことなんて何も無いハズだからな」
「お待たせ。すっかり打合せが長引いちゃって、帰るのが遅くなったけど… あれ? 何か問題でもあった?」
何やら神妙な面持ちでいるシュウとワンに向かって、藤井は不思議そうな顔をして声を掛けた。
「いや、何でもねぇ。ただ、そこのボウヤにコイツの凄まじい威力をレクチャーしてたところだ」ワンは何食わぬ顔で再び箱の中に首を突っ込んで確認作業を続けた。
シュウは、ロクに会話もしていないのに、ワンに自分の正体を見抜かれていることに衝撃を受けると共に、やはり自分の身には見る者にただならぬ気配を感じさせる何かが常につきまとっているのだと、改めて思い知らされた気がした。
(やっぱり、コイツをこのままにしておく訳にはいかない。オレがオレ自身の手でコイツを何とかしなくちゃならないんだ)
昨夜芽生えた決意が、シュウの中で次第に大きくなっていった。
久しぶりに戻って来た夜の六本木の街はすっかりサッカーワールドカップのお祭りムード一色だった。
街中至る所にブルーのユニフォーム姿の若者たちが溢れ返り、歩道を埋め尽くすほどの勢いで人々はどこからどこへ向かう訳でもなく流れに身を任せていた。その人の流れに翻弄されながら藤井とシュウは目的の場所に向かっていた。
「全く、こんなに酷いとは思わなかったよ。とにかく、さっさと準備をしてどこかで高みの見物と行こうぜ」シュウは藤井の後ろで離されまいと必死に歩いている。
二人はブルーの作業服を着ており、片手に工事用のヘルメットを持っていた。一見するとどこかの建設工事業者の作業員のようだった。藤井は背中にリュックサックを背負っており、これがまた一段と作業現場の監督らしい雰囲気を醸し出している。二人が向かっているのは再開発工事を行っている高層ビル群の方だった。
六本木通りを進み、六本木交差点を過ぎた所でシュウが急に言った。
「トモ、悪いけどちょっとアジトに寄ってイイかな?」
「え~、何で?」
「何か緊張してきたせいか、オシッコしたくなっちゃった」
「マズいよ、アジトはもう二週間以上空けてるし、既に警察に見つかっているかもしれない。貸倉庫にいた時も戻るのはやめようってわざわざそこで寝泊まりしたじゃないか」
「お願い、用を足したらすぐに出るから」
「もう~、しょうがないなあ」
仕方なく二人は作業員を装うためにヘルメットを被るとアジトに向かった。
アジトがあるテナントを見通せる位置にある少し離れた雑居ビルの一角に安井たちは陣取っていた。
シュウたちがアジトを出て行った後、必ずここに戻ると踏んだ安井は捜査本部を説得し、この場所を張り込みの場所として押さえてもらったのだ。始めのうちは捜査本部も気を遣って交代要員などを派遣していたが、サッカーワールドカップが始まるとそちらの方の警備やトラブル対応で人を裂かれるようになり、やがて誰も応援に来なくなり、結局安井と青柳、小野と谷村のペアで交代で張り込むこととなった。
「ヤスさん、もうそろそろ諦めた方がイイんじゃないですかね。大林課長からも、「いったいいつまでそっちにいるんだ!」ってお怒りの電話が掛かってくるし…」青柳は疲れ果てた様子で窓からテナントの方を眺めている。安井も自分のカンを信じここまで粘って張り込みを続けてきたが、さすがに少し自信を失いかけていたところだった。
「おやっ?」その時青柳が妙な声を上げた。安井が見るとテナントの入り口に作業服にヘルメット姿の二人連れが近付いてくる。安井は思わず腰を浮かせた。
「こんな時間に解体工事の下見ですかね?」これまでも何度か工事業者がテナントを訪れることはあった。青柳が喋っているうちに、ふたりはテナントの中に入っていった。
「青柳、テナントのオーナーに確認だ」すぐさま携帯電話で連絡を取ると、青柳は慌てた様子で安井に言った。
「今日は下見の予定は無いそうです!」
ふたりはすぐさま雑居ビルを飛び出した。
テナントに向かう途中、作業服姿のひとりが飛び出して六本木通りの方へ走り始めた。手にはリュックサックを持っている。安井はその姿を見て思わず叫んだ。
「シュウ!」
作業服姿は一瞬立ち止まりこちらを振り返ったが、すぐさま向こうを向いて走り出した。その顔はシュウに間違い無かった。安井はその後を追って六本木通りに出たが、たちまち押し寄せる人波に飲み込まれた。
「シュウ、おいシュウ。どこだ!」そう叫んで安井は辺りを見渡すが、シュウの姿は大勢のブルーの人混みに紛れてしまい、いつの間にか見えなくなってしまった。
諦めてテナントに戻ると、中にはもうひとりの作業服姿が足から血を流して倒れており、その横で青柳が携帯電話で救急車を呼んでいた。
「おい、大丈夫か!」安井が近付くと作業服姿の男は足を押さえながらうめいていたが、安井の顔を見ると不覚を取ったという顔で声を絞り出した。
「参ったなぁ。またアイツに噛みつかれちゃったよ」
傷口の止血を済ませると、救急車が来るまでの間安井たちは藤井から今回の計画の概要を聞いた。今夜建設中の高層ビルの屋上で大きな打ち上げ花火を上げるつもりだというのだ。
「花火って言ってもただの打ち上げ花火じゃないよ。最後にはtnt火薬約二十㎏を使用した特製爆弾のオマケ付きさ。まだ建設中のビルの屋上でそんなものが爆発すれば、資材や窓ガラスなんかが吹っ飛んで、下にいる人たちがどうなるかボクらにも想像つかないけどね」
「シュウはいったいどこに向かったんだ!」
「花火の仕掛けが入った箱は他の建設資材に紛れて運ばせ、今頃はビルの屋上にあるハズだ。ボクたちは工事業者に偽装してビルの屋上に行き、箱を開けて花火を打ち上げる装置の電源スイッチを入れに行く予定だった。スイッチは直接操作しないと入れられないからね」
「でもスイッチを入れたらお前たちも吹っ飛んでしまうじゃないか?」
「電源を入れた後でパソコンと無線接続すれば、離れた所から操作ができるようになる。あとはどこか眺めのイイ所に陣取って花火見物をしようって算段だったんだけど… シュウのヤツいきなりアジトに寄りたいって言って中に入ったとたん後ろからボクの足をナイフで刺して、パソコンの入ったリュックを奪って出て行きやがった」
そう言った後で藤井はハッと気付いたように言った。
「アイツ…もしかしたら自分も死ぬつもりなのかもしれない。刑事さん、お願いだからシュウを止めてくれ!」
やがて救急車のサイレンの音が大きくなって止まったかと思うと、入り口から救急隊員が入って来た。
「青柳、行くぞ」安井は立ち上がり入り口の方に向かいかけたが、ふと立ち止まり振り返って藤井に尋ねた。
「そう言えばあの路地裏で三人組を撃ち殺したのは君か?」安井の問いに藤井は痛みで顔をしかめながらも頷いた。
「そうか…」安井は心なしかホッとした表情を浮かべると去って行った。
救急隊員が藤井を担架に乗せようとすると、藤井はそれを手で制した。
「ちょっと待って。ボクにはまだここでやらなきゃいけないことがある」そして救急隊員に応急処置だけしてもらうと、片足を引きずりながら事務机のパソコンに向かっていった。
六本木通りを人混みに揉まれながら、安井たちは六丁目交差点の前にある再開発工事の出入口ゲートに辿り着いた。昼間は多くの工事関係者や工事車両がひっきりなしに出入りしているゲートも、さすがにこの時間は人影もまばらだった。
安井たちはガードマンに警察手帳を見せ事情を説明すると、ゲートの中に入り高層ビルの入り口に向かった。近くで作業をしている作業員を捕まえ屋上に出る方法を聞くと、工事用のエレベーターに乗り最上階を目指した。そしてエレベーターを降りて、作業員に教えてもらった仮設の階段を上がって行くとやがて目の前に屋上に出るドアが現れた。
ドアを開けるとそこにはだだっ広い空間が広がっており、まだ建設中の屋上スペースには天井クレーンが設置され建設資材があちこちに置かれていた。ドアの外に出ると頭上には夜空が広がり遠くに東京の美しい夜景が広がっていた。頬に風を受けながら安井たちは辺りを見渡しシュウの姿を探し求めた。
「おーい、シュウ! どこにいるんだ!」
するとひと気の無い屋上スペースの一角に、しゃがみ込みながら動く怪しい人影を見つけた。
「シュウ! そこにいるのか?」安井たちが近付こうとすると人影は立ち上がりノートパソコンを手に叫んだ。
「来ないで! 今装置のシステムを起動した。ボクがパソコンのボタンを押すとこの箱から花火が上がり、もう一度押すと爆弾が爆発するよ!」シュウの横には膝から腰に掛けての高さくらいの木箱が置かれており、蓋が外されている。安井たちは思わず足を止めた。
「シュウ、久しぶりだな」安井が懐かしさを込めてシュウに語り掛けた。
「おじさん…誰?」シュウはいぶかしげにこちらを見ている。
「覚えていないのも無理もない。あの頃お前はまだ十歳だったからな」安井は久しぶりに会った友達に話すようにやさしく言葉を繋いだ。
「初めて会った時、お前はまるで魂の抜けた人形のようだった。オレがいくら話し掛けても何も答えようとせず、ただ暗い穴蔵のような眼でジッと宙を見つめているだけだった。お前があの浦和のアパートでいったい何を見たのかオレはただ想像することしかできないが、きっとそれはお前の心を打ち砕いてしまうのに十分過ぎるものだったんだろう」
シュウは相変わらず疑わしげな顔でこっちを睨んでいるが、安井は構わず続けた。
「確かにお前のお父さんはどうしようもないヤツだったよ。お前に酷い名前を付け、自分の勝手な理屈を押し付け、言うことを聞かないと構わず暴力を振るう。きっとお前のお母さんも沢山苦労したことだろう。例えお前に殺されても文句も言えないハズだ」
母の話が出た瞬間、一瞬シュウの体がビクッと反応した。
「だけど、お前のお父さんの死に顔を見た時、オレはなぜかお前のお父さんが笑っているように見えた。お前のお父さんだけじゃない。親不知で見た老人の死に顔を見ても、そこには不思議と穏やかな満ち足りた何かがオレには感じられたんだ」
シュウは次第に安井の言葉に引き込まれていった。
「なぁシュウ、オレは何十年とこの仕事をやってきて数え切れないくらいの殺人事件に関わってきたが、あんな顔をした被害者を見たのは初めてだよ。誰だって死ぬのは苦しい。ましてや他人に無理やり命を奪われる殺人事件の被害者の顔は、恐怖と苦痛、それにどうしようもない無念さで歪んでいるのが当たり前だ。だけどお前のお父さんたちの顔にはそれが見られなかった。オレはその理由を懸命に考えた。そして、もしかしたらお前のお父さんたちは、自分を殺した者に自分の大切な何かを託すことによって、自分がこれまで大事に守り通してきたものをその相手に受け取ってもらうことによって、その重荷から解き放たれ、あんな穏やかな表情をしていたんじゃないかと思うようになったんだ。お前のお母さんだって、あんな形でお前を残してこの世を去ることになって、本当に心残りだったろうと思うが、お前が生き残ってくれたことで、少しでも救われた気持ちになることができたんじゃないだろうか。オレは親不知に行った時にお前のお母さんの若い頃の話を聞いてきたよ。お前のお母さんは役者になりたいという夢を叶えたくて、ご両親とケンカしてまで上京して来たそうだ。訳あってその夢は叶えられなかったが、お父さんと結婚してお前を産んだことでその夢を叶える以上の幸せを手に入れられたんじゃないかな?」
シュウは下を向いたまま、必死に何かに耐えているようだった。
「シュウよ、親不知の老人がなぜ自分の命に代えてまでお前を生かそうとしてくれたか分かるか? それはお前に人並みの、ただありきたりの幸せを味わってもらおうと思ったからじゃないのか? お前は自分の中に特別な神が宿ってるなどと思ってるかもしれないが、オレはそうは思わん! たとえそうだったとしても、人殺しをしないと生かし続けさせてくれない神なんて、そんなモンくそ食らえだ!」
「おじさんに何が分かるって言うんだ!」突然シュウが叫んだ。
「オレがあの晩母さんを殺してしまってどんなに自分を責めたか、オヤジを殺す一心で暗闇の底から這い上がり復讐した後に感じた虚しさがどんなモノだったか、保さんの本当の気持ちを分からないまま殺してしまったことを後から知ってオレがどれだけ後悔したか… おじさんにも、他の誰にも絶対に分かりっこないんだ!」
安井の後ろには連絡を受けて応援に駆け付けた捜査員たちが続々と集まってきた。その中には署で休んでいた小野と谷村、そして加納課長の姿もあった。安井は彼等を手で制すると、シュウの顔をまっすぐ見つめたまま叫んだ。
「分かるさ!」
シュウはその声の迫力に思わずビクッとした。
「オレには分かるぞ、シュウ。あの晩に自らの手で引き起こしてしまった惨劇によって、お前自身がどれほど傷付いてしまったか、そして母の後を追おうと思ってそれができなかった悔しさも、お前に生きることを諦めさせてしまうほど深く、長く抱えられてきた心の奥底にある暗闇も、この七年間オレは何とか理解しようとしてきたつもりだ。そしてお前が再び目を覚まし、新たな罪を重ねてその姿を消す度に、オレは不安でたまらなかった。お前がどこかで苦しい思いをしているんじゃないか、どこかで冷たい遺体になっているんじゃないかと思っただけでオレは生きた心地がしなかった。今やっとこうしてここで会えてオレは改めて思ったよ。お前はあの頃のままだ。あの晩パトカーの中で震えていた迷子のような十歳の子供のままだよ。だからお願いだ。もうこれ以上馬鹿なことはやめて、素直に自首してくれないか。大丈夫。きっと悪いようにはしないから。なぁ頼むよ、シュウ!」安井は両手を広げた。
シュウはずっと下を向いたまま、肩を震わせていた。
「シュウ、お前は決してひとりじゃない。今でもお前の廻りにはお前のことを気遣って、お前のことを愛して、お前のことを理解してくれようとする人たちが沢山いるじゃないか。今からでも遅くない。お前が犯した罪に正面から向き合って、償いを済ませたらその人たちと新しい人生をやり直せばイイ。お前はまだ十分過ぎるくらい若い。やり直すチャンスはいくらでもあるんだ」
「もう…手遅れだよ」シュウはそう呟くと、涙に濡れた顔を安井の方に向けた。
「オレの神様は、そんなに簡単にオレを許してはくれないよ。オレは生きている限り、この手でこれからもひとを殺し続けなきゃならないんだ。いや、オレだけじゃない。オレの廻りにいる大切なひとたちが、この神様のせいできっと他の誰かを傷付けたり、傷付けられたりするんだ。オレはそんなのにはもう耐えられないんだよ。もうこれ以上そんなものは見たくない。だから今夜オレがこの手で、オレ自身の手でこの呪われた神を消し去ってやるんだ。もうこうするより他に方法が無いんだ!」そう言うと、シュウはパソコンのキーボードを叩いた。
次の瞬間、シュウの横に置かれた箱から次々と光の玉が尾を引いて飛び上がり、それは上空で弾けると大音量とともに見事な花をいくつも咲かせた。
六本木の夜空に、突如として現れた幾つもの色とりどりの光の輪。
街をゆく人々は何かの余興でも見るようにその花火を見上げては、驚きの声を上げたり、指を指して喜んだりしている。
安井たちがその目が眩むほどのまばゆい輝きにたじろいでいると、シュウは再びパソコンのキーボードに指を掛けた。
「待て! シュウ、頼むから馬鹿なマネはやめろ!」
安井はアジトで聞いた藤井の言葉を思い出しながら、何とか最悪の事態を止めようと必死に訴えた。
「そんなモンがここで本当に爆発したら、一体何人の命が奪われてしまうことになるのか分かってるのか。お前がやろうとしていることは、その神に力を貸すことになるんだぞ。思い直せ、シュウ!」
安井の言葉に、シュウのキーボードに掛けていた指がわずかに離れかけた。
(どんな人間だって、死んでイイ理由なんてあるハズが無い)
シュウの脳裏に倉庫で聞いたワンの言葉が蘇った。
「オレは、いったいどうすればイイんだ…」シュウの顔には迷いの表情が現れていた。
その瞬間、シュウの後ろに密かに回り込んでいた青柳が、パソコンを奪おうとして背後からシュウに飛び掛かろうとした。
(マズい、青柳やめろ!)
安井は辛うじて叫びそうになるのをこらえ、シュウに悟られぬように目で彼を制しようとした。
しかしシュウは安井のわずかな視線の動きからそれを察知し、後ろを振り返ると、飛び掛かってきた青柳をギリギリのタイミングでかわしながら、反射的にもう一度キーボードを叩いた。
安井は思わず目をつぶった。
しかしシュウの説明とは違い二度目のボタンが押されても爆弾は爆発することは無かった。
「あれ? あれ?」シュウは何度もキーボードを叩くが箱は沈黙を保ったままだ。
やがてシュウが力尽きたようにその場に座り込むと、安井の背後にいた小野と谷村が今だとばかりにシュウに襲い掛かり、その手からパソコンを奪い取ると後ろ手にシュウを組み伏せた。
シュウは何も抵抗できずに、信じられないといった顔で二人の捜査員に押さえつけられている。
安井はいったい何が起こったか全く状況が掴めないまま、呆然とその場に立ち尽くしていた。
アジトの中では事務机の前に座っていた藤井がパソコンのキーボードから手を離すと、やれやれといった格好で椅子の背もたれに身を預けた。
「ハッキング成功。しかしまさか自分が作ったシステムに自分でハッキングを仕掛けることになるとはね」パソコンのモニターには外部アクセス成功のサインが出ている。藤井は別のパソコンからシステムに侵入し、ギリギリのところで爆弾の起爆装置をストップさせたのだ。
「シュウ、君ひとりだけをいかせる訳にはいかないよ」
藤井はジッと窓の外を見つめ、花火が打ち上がった後の煙でかすかに霞む高層ビルの屋上に向かって語り掛けた。
「全く、最後まで手間を掛けさせよって。さっさと自首すれば良かったものを…」
安井の背後から、加納が出てきてゆっくりとシュウの方に歩み寄りはじめた。
安井はふと我に返ると、とりあえずシュウたちが仕掛けた爆弾が不発に終わったことに安堵すると共に、ようやく長いシュウの逃亡劇が終止符を打つことになると思うと、体中に張り詰めていたものが一気にほどけていくのを感じた。
「ようやく終わりましたね」青柳が安井の隣に立ってシュウの方を見ながら呟いた。シュウは身動きひとつせずに、おとなしく小野たちに押さえつけられたままだ。
(触ら…ないで)
その時、安井の耳元で突然女性の声がした。
「!」驚いた安井はふいに辺りを見渡したが、近くにそれらしい声の主の姿は見あたらなかった。
(私のシュウに…触らないで)
再び女性の声が聞こえ、状況が飲み込めないまま視線を前方に向けると、小野と谷村に組み伏せられたシュウの背後から、何やらモヤモヤとした真っ黒な影が煙のように沸き立っているのが見えた。
「何だ、あれは…」安井はその影が持つとてつもない不吉な気配に思わず鳥肌が立つのを感じた。
やがてその黒い影は徐々に大きくなっていき、シュウを押さえつけている小野と谷村を包み込むと共に、そちらに向かって歩み寄っている加納に向けて触手を伸ばし始めていた。
「マズい、おい近付くな!」安井は本能的に危険を察知して思わず加納に向かって叫んだが、もう手遅れだった。
ドス黒い触手が加納の首に纏わり付くと同時に、一瞬加納の動きが止まったと思うと、次の瞬間スーツの懐から拳銃を取り出し、金縛りに遭って身動きが取れなくなっている様子の小野と谷村の頭を次々と撃ち抜いた。
「!!」突然の加納の信じられない行動に、安井をはじめその場にいた捜査員は全員凍りついた。
何の抵抗もせずに頭から血を吹き出しながら、魂の抜けた人形のように次々と倒れる二人を目の前にしたシュウも、いったい何が起こったのか分からない様子だった。
「何てことだ!」青柳や安井の背後にいた他の捜査員たちが加納の方に駆け寄ろうとするのを見て、安井は思わず叫んだ。
「待て! お前たちあの黒い影が見えないのか? 近付くとお前たちもやられるぞ!」
青柳たちは安井の迫力に圧倒されて足を止めたものの、互いに首をかしげ、安井の言っている言葉の意味を理解しかねている様子だった。
(コイツらには、あの黒い影が見えていないのか…)
シュウの背後から怪しくうごめきながら立ち上るものが見えているのは、どうやら安井ひとりだけのようだった。
(誰にも、私のシュウには指一本触れさせない)
それは、ザラザラとした細かい砂粒の集まりのようでもあり、またあるいは、幾つもの伸びた触手ひとつひとつがまるで意思を持って動く生き物のようにも見えた。
そしてその得体の知れない黒い影の中から、例えようもない怒りと哀しみ、そして死を連想させる深い絶望感が湧き上がってくるのを、安井は感じ取っていた。
「これが…シュウの神か」安井は思わず呟いた。
(シュウ、聞こえる? シュウ)
再び女性の声がした。
押さえつけられていた体をゆっくりと起こしはじめていたシュウは、その声にビクッと反応した。
「誰? 母…さん?」シュウは辺りを見回したが、目に入ったのはすっかり血の気を失い、亡霊のように傍で立ち尽くしている加納の姿だけだった。
「母さん…」シュウは姿の見えない母親に向かって語りかけた。
「何故、オレを死なせてくれないんだ。オレのせいで何人ものひとが血を流して…オレはもうこれ以上耐えられないよ!」
(シュウ…)声が応えた。
(私は他の人がどうなろうと、そなものはどうでも構わない。ただ、あなたのことを大切に思っているだけ。あの晩、あなたにあんな辛い思いをさせてしまって本当にゴメンナサイ)
「母さん…オレの方こそ、ゴメンナサイ。オレがアイツらに仕返しをしてやろうと思ってあんなことさえしなければ…まさか母さんまで殺してしまうなんて…」
(あれはどうしようもなかったこと。あなたに罪は無いわ)
「母さん…」シュウの眼からは涙が次々と溢れ、こぼれ落ちていった。
安井はあの七年前に浦和のアパートで起きた惨劇のことを再び思い浮かべ、偶然と言うにはあまりにも残酷なその結末に、今更ながらいたたまれない気持ちになった。
(シュウ、私の大切なシュウ。もう誰にもあなたを渡さない…)
すると先ほどまで怪しくうごめいていた黒い影が、ゆっくりとシュウの体を包み込みはじめた。
「駄目だ! 頼むから止めてくれ!」安井は思わず影に向かって叫んだ。
シュウはまるで幼子が母の懐に抱かれるようにその影に身を委ねながら、次第にその眼からは徐々に光が失われていくのが安井には感じられた。
「シュウ、待て! 行くな!」やがてシュウの体を包む黒い影が薄くなっていき完全に消え去ると、安井はシュウの元へ駆け寄り、その体を抱き寄せた。
「シュウ! 聞こえるか。おい、シュウ!」
すると、安井の声に気付いたのか、虚ろな眼差しのまま、シュウはうわごとのように呟いた。
「ありがとう、おじさん。可菜やトモくん以外にも、オレのことを分かってくれるひとがいて嬉しいよ。さようなら」
それだけ言い残すと、シュウの眼は完全に光を失い、あの七年前に初めてパトカーの中で見たときと同じ、真っ暗な深い洞窟と化した。
「シュウ! おいシュウ! 頼むから返事してくれ!」
しかし安井の悲痛な叫びにもかかわらず、シュウが再びその声に反応することは無かった。
ふたりの傍らでは、ハッと我に返った加納が目の前の惨劇と自分が手に握りしめている拳銃に気付いて、事態を飲み込めずに愕然としていた。
青柳や他の捜査員たちがやがて恐る恐る近付いてきて、加納を連行するとともに、安井とシュウを見守るように周囲を取り囲んだ。
「ヤスさん…」青柳が声を掛けたが、安井はすっかり表情が無くなり人形のようにただ抱きかかえられているシュウの顔を、いつまでもいつまでも眺めていた。
「シュウ…許してくれ。オレがもう少し早くお前を見つけられれば、ここまでお前を追い詰めることは無かったのに…」
しかし、安井の虚しい呟きは、六本木の夜空にただ吸い込まれていくだけだった。
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