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プロローグ
しおりを挟む真っ暗な闇の海中で身動きが取れない私は、あまりの暗さに天地の感覚がわからなくなりそうだった。
不意打ちで落とされたため、息がもうもたない。普段だったら泳ぎが得意な自分なら、すぐさま上に上昇できたが、服を着ていること以上に自分を巻添に落ちた見ず知らずの相手が、パニックでも起こしたのか、私にがむしゃらにしがみ付いたからだ。相手は小柄な女性ではあったが、パニックを起こした相手はものすごい力で私を拘束してくる。同じ女の私ではその手を解くことができなかった。
(溺死はいや────!!)
そう思ったとたん、まわりが明るくなりだし、あたり一面真っ青な世界になった。
ひときわ明るくなった方に目を向けると、黒い影が近づいて来る。それが人で男性だと思ったときには、彼に、しがみ付いている相手ごと抱き寄せられた。
(もう息が…)
救助の人だと喜ぶ間もなく、息が切れて口からコフリと空気を漏らす、とたんに口の中に水が入り込む。
大量に水を飲みそうになったその唇に、突然彼が自分の口で塞いできた。
(…青い…瞳、キ・レ…イ…)
酸欠のボンヤリした頭で意識が途切れる前に思ったことは、まっすぐに自分を見つめたまま口づける彼の瞳の感想だった。
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