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第二章
33 ~何だ、呼んではおらんぞ
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若き日のカイの回想の後、少し智美の事が入ります。
──────────
皇族男子の成人の儀式は、二十一になった年に青神泉に限界まで潜り、その場にて得られる青魔晶を、誕生祝いで青龍様に頂いた青魔晶と一緒に、青龍様にピアスとして両耳につけてもらう。
この一連が成人の儀式だが、カイは青龍にその時言われた言葉があまりにもショックで、一時期家出までしていた。
まだ若かったカイは、今は団長だが当時同じ騎士訓練を受けていた、ザッジの妹に淡い好意を抱いていた。自分は皇族なので、きっと泉侶ができるとカイは思っていたので、彼女だったら良いなぐらいの淡い思いだった。
そこに、自分の泉侶はいつ来るとはわからない別盤者だと言われ、それまで品行方正な皇子だったカイは初めてぐれた。
そこまで好きだった訳ではないのだが、ザッジの妹を見るたびに、自分の考えの幼さが突きつけられているようで辛く、辺境のカ領に婿入りした大叔父のもとに家出した。
大叔父は時代と血筋の関係上、皇族ではあったが青神泉での成人の儀式をしてなかったせいなのか、もともとなのか、泉侶の啓示がなかったので、これ幸いと政略結婚で婿入りさせられていた。
政略結婚といっても、相手は実は見知った相手で、夫婦仲は良好で子供が7人もいる。
そんな所に家出したのも大概の皇族は泉侶もちで、今のカイには泉侶持ちの親族の元は、いたたまれないからだった。
大叔父の妻は泉侶では無かったが、夫婦仲は睦まじく、とても幸せな家庭に見える。
大叔父の元ならば、この遣る瀬無い気持ちでいても大丈夫だろうと、大叔父に頼んでカ領の騎士団に加えてもらった。
身分を偽るために成人の証であるピアスも、皇族とばれないようにミエルに頼んで一般的なものを作った。青魔晶のピアスなど、皇族ですという目印の他ならない。
そこまでして、身分を隠しても、カイの瞳の色は皇族特有の色で貴族や、准貴族にはばれてはいるが、普段一緒にいる騎士団の者にはわからなかった。
カイはそこで生活するうちに、良いことも悪いことも覚えていった。
言葉遣いは悪くなり、騎士達と酒を飲み交わし、仲間と一緒に花街にいったりする。
別にカイは童貞ではなかったが、顔のわりに物慣れないカイが面白かったのか、カイを連れてくと、花街のお姉さま方に喜ばれるからなのか、騎士団の荒くれ仲間は、彼をよく花街に連れて行った。度々連れて行かれるので、カイはそのうち女慣れしていった。
別に玄人さんばかりを、相手していたわけでもない。
辺境は特に【淵源】ができやすいらしく、魔獣が多い。
城都など目じゃないほど、騎士団には討伐事案が多く、この地区の人々に騎士達は頼りにされ、独身の騎士団員などもはや若い娘たちの憧れの人たちだ。
カイはその中でも見目麗しいので、街に出れば必ずと言っていいほど、女性から声を掛けられるほどだった。
別盤の泉侶なんていつ来るかもわからない。
明日来るかもしれないし、カイが死ぬ間際に来るのかもしれない。
実際、なかなか現れない泉侶に恋い焦がれながらも、伴侶を得て子供を生した者もいる。
聞いた話では奥さんが亡くなくなった後、もう老後の余生を静かに暮らそうというときに、泉侶に会えたということだ。
同じ盤園でもそんな事があるのだ、ましてや別盤者など本当に来るのかすら怪しい。
カイは気にせず恋人を作ろうとも思うが、心の中でいまいちわだかまりが解けず、本気になれなかった。
そうこうするうちに、泉侶が別盤者という衝撃も薄れ、辺境の騎士団での生活を謳歌するようになった頃、辞令が下った。
城都の騎士団へ参上せよと。
青国は領ごとに年に二人、城都へ騎士を差し出す。
名目は騎士団の強化のための訓練を、城都で受けるためで、数年で戻されることになっているのだが、大概一人しか戻ってこない。下手をすると二人とも戻っては来ないが、戻ってくれば大概その領での地位が与えられていた。
本来は名誉な指名なのだが、カイは皇子だ城都に行ったらすぐばれる。
人目を避けて辞令の許可を出した、大叔父に抗議しに行った。
『もう、大丈夫だろう』
そう言われて、カイは自分の心が癒えているの改めて気付いた。
そしてこのままここに居る事は、皇子としての義務を放棄していることに他ならないことを、諭される一言だった。
今の生活が楽しくて、ついこのままでいたいと思ってしまっていたことを、少し恥ずかしく思って、黙って辞令に従い大叔父のもとを去った。
城都へ戻り、家出していた事(と言っても、大叔父がカイを預かっていることは、話してあるようだったが)を家族に謝った。
そして、青龍様のもとに赴いた。
『何だ、呼んではおらんぞ』
青龍様のその言葉に、カイは素直に言葉を口にする。
『ああ、呼ばれてはいない。
だが、だからこそ、それまでに教えてほしいんだ』
カイの願いに青龍は静かに見つめ返す。
『別盤者の泉侶と想いを合わせるためにも、【言の葉】の魔法を俺に教えてくれ』
カイは執務室で一人、昔の事に思いを馳せていた。
そのころ智美は、今だ渡り廊下で、先日の事を思い出しているうちに、日が傾いていることにやっと気付いた。
しかし、さしてすることがない智美は、何をしようかと一先ず部屋に戻ることにする。
先日の愛子との一軒を思い出して、カイの行動を頭から追い出したのに、またすぐ頭の中を支配していくカイに、少しイライラしつつ部屋に戻って、手にしていた紙ばさみを机の上に少し乱暴にばさりと置くと、差し込み過ぎていたのか、色々書いてあるメモが、置いた勢いで飛び出してきた。
(だいぶ溜まったな…、少し整理して、纏めて清書するか)
机に座り紙ばさみを開いて、残ったメモを全部出す。
さらっと眺め、書いた内容ごとに分けて、時系列に並べる。
この地の事は多すぎてまとめるのに時間がかかりそうなので、簡単なのからと、最初に聞いた皇族の名前を書いたものを取り出して眺めた。
(カタカナが長くて覚えられないよ…)
家系図でも書こうかと、眺めた名前の羅列にカイの名を見つけ、そのあとに己で書いた文字に目が吸い寄せられた。
第二皇子 カイゼジャール・セイ・ラソルデ・セイコク
婚約者有り
──────────
後書き
あー、カイのイメージ壊してたらどうしよう。
それと、浮かれてるから肝心なことを忘れるのです。
よく考えると、少し ん?と思う事が有ると思うんですが、それもフラグのつもりなんです。
──────────
皇族男子の成人の儀式は、二十一になった年に青神泉に限界まで潜り、その場にて得られる青魔晶を、誕生祝いで青龍様に頂いた青魔晶と一緒に、青龍様にピアスとして両耳につけてもらう。
この一連が成人の儀式だが、カイは青龍にその時言われた言葉があまりにもショックで、一時期家出までしていた。
まだ若かったカイは、今は団長だが当時同じ騎士訓練を受けていた、ザッジの妹に淡い好意を抱いていた。自分は皇族なので、きっと泉侶ができるとカイは思っていたので、彼女だったら良いなぐらいの淡い思いだった。
そこに、自分の泉侶はいつ来るとはわからない別盤者だと言われ、それまで品行方正な皇子だったカイは初めてぐれた。
そこまで好きだった訳ではないのだが、ザッジの妹を見るたびに、自分の考えの幼さが突きつけられているようで辛く、辺境のカ領に婿入りした大叔父のもとに家出した。
大叔父は時代と血筋の関係上、皇族ではあったが青神泉での成人の儀式をしてなかったせいなのか、もともとなのか、泉侶の啓示がなかったので、これ幸いと政略結婚で婿入りさせられていた。
政略結婚といっても、相手は実は見知った相手で、夫婦仲は良好で子供が7人もいる。
そんな所に家出したのも大概の皇族は泉侶もちで、今のカイには泉侶持ちの親族の元は、いたたまれないからだった。
大叔父の妻は泉侶では無かったが、夫婦仲は睦まじく、とても幸せな家庭に見える。
大叔父の元ならば、この遣る瀬無い気持ちでいても大丈夫だろうと、大叔父に頼んでカ領の騎士団に加えてもらった。
身分を偽るために成人の証であるピアスも、皇族とばれないようにミエルに頼んで一般的なものを作った。青魔晶のピアスなど、皇族ですという目印の他ならない。
そこまでして、身分を隠しても、カイの瞳の色は皇族特有の色で貴族や、准貴族にはばれてはいるが、普段一緒にいる騎士団の者にはわからなかった。
カイはそこで生活するうちに、良いことも悪いことも覚えていった。
言葉遣いは悪くなり、騎士達と酒を飲み交わし、仲間と一緒に花街にいったりする。
別にカイは童貞ではなかったが、顔のわりに物慣れないカイが面白かったのか、カイを連れてくと、花街のお姉さま方に喜ばれるからなのか、騎士団の荒くれ仲間は、彼をよく花街に連れて行った。度々連れて行かれるので、カイはそのうち女慣れしていった。
別に玄人さんばかりを、相手していたわけでもない。
辺境は特に【淵源】ができやすいらしく、魔獣が多い。
城都など目じゃないほど、騎士団には討伐事案が多く、この地区の人々に騎士達は頼りにされ、独身の騎士団員などもはや若い娘たちの憧れの人たちだ。
カイはその中でも見目麗しいので、街に出れば必ずと言っていいほど、女性から声を掛けられるほどだった。
別盤の泉侶なんていつ来るかもわからない。
明日来るかもしれないし、カイが死ぬ間際に来るのかもしれない。
実際、なかなか現れない泉侶に恋い焦がれながらも、伴侶を得て子供を生した者もいる。
聞いた話では奥さんが亡くなくなった後、もう老後の余生を静かに暮らそうというときに、泉侶に会えたということだ。
同じ盤園でもそんな事があるのだ、ましてや別盤者など本当に来るのかすら怪しい。
カイは気にせず恋人を作ろうとも思うが、心の中でいまいちわだかまりが解けず、本気になれなかった。
そうこうするうちに、泉侶が別盤者という衝撃も薄れ、辺境の騎士団での生活を謳歌するようになった頃、辞令が下った。
城都の騎士団へ参上せよと。
青国は領ごとに年に二人、城都へ騎士を差し出す。
名目は騎士団の強化のための訓練を、城都で受けるためで、数年で戻されることになっているのだが、大概一人しか戻ってこない。下手をすると二人とも戻っては来ないが、戻ってくれば大概その領での地位が与えられていた。
本来は名誉な指名なのだが、カイは皇子だ城都に行ったらすぐばれる。
人目を避けて辞令の許可を出した、大叔父に抗議しに行った。
『もう、大丈夫だろう』
そう言われて、カイは自分の心が癒えているの改めて気付いた。
そしてこのままここに居る事は、皇子としての義務を放棄していることに他ならないことを、諭される一言だった。
今の生活が楽しくて、ついこのままでいたいと思ってしまっていたことを、少し恥ずかしく思って、黙って辞令に従い大叔父のもとを去った。
城都へ戻り、家出していた事(と言っても、大叔父がカイを預かっていることは、話してあるようだったが)を家族に謝った。
そして、青龍様のもとに赴いた。
『何だ、呼んではおらんぞ』
青龍様のその言葉に、カイは素直に言葉を口にする。
『ああ、呼ばれてはいない。
だが、だからこそ、それまでに教えてほしいんだ』
カイの願いに青龍は静かに見つめ返す。
『別盤者の泉侶と想いを合わせるためにも、【言の葉】の魔法を俺に教えてくれ』
カイは執務室で一人、昔の事に思いを馳せていた。
そのころ智美は、今だ渡り廊下で、先日の事を思い出しているうちに、日が傾いていることにやっと気付いた。
しかし、さしてすることがない智美は、何をしようかと一先ず部屋に戻ることにする。
先日の愛子との一軒を思い出して、カイの行動を頭から追い出したのに、またすぐ頭の中を支配していくカイに、少しイライラしつつ部屋に戻って、手にしていた紙ばさみを机の上に少し乱暴にばさりと置くと、差し込み過ぎていたのか、色々書いてあるメモが、置いた勢いで飛び出してきた。
(だいぶ溜まったな…、少し整理して、纏めて清書するか)
机に座り紙ばさみを開いて、残ったメモを全部出す。
さらっと眺め、書いた内容ごとに分けて、時系列に並べる。
この地の事は多すぎてまとめるのに時間がかかりそうなので、簡単なのからと、最初に聞いた皇族の名前を書いたものを取り出して眺めた。
(カタカナが長くて覚えられないよ…)
家系図でも書こうかと、眺めた名前の羅列にカイの名を見つけ、そのあとに己で書いた文字に目が吸い寄せられた。
第二皇子 カイゼジャール・セイ・ラソルデ・セイコク
婚約者有り
──────────
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