【更新再開】ショコラ伯爵の悩ましい日常〜イケメン騎士様とのBL営業が甘すぎる!〜

あさひてまり

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エメラルド ※リフエール

「それにしてもお前への歓声ヤバイな。
写真撮ったら売れるんじゃね?」

確かに。
謙遜と言う言葉に欠ける物言いを許して欲しいのだがーー俺の名を呼ぶ歓声が凄い。
いつもはこれ程でもないんだが…。

「マントつけてっからなぁ。
その顔面で副隊長補佐って優良物件すぎだろー。何なら俺が嫁になってやってもいいぜ!」

「前向けバカ。」

ジェシーの軽口をバッサリ斬り捨てると、奴はカラカラ笑った。
お前は少し緊張感を持て。

そんな事を思っていると、前方から騒めいた空気を感じた。
傍目には隊列を乱すこと無く進んでいるように見えるかもしれないが、俺達には明らかに何かあったと分かる。

「今度は何だ?」

「そー言えばそろそろロワーヌ広場の前っすね。」

くだんの陛下が気に掛けた場所だ。
やはり、何かあったのだろうか。
そう思って沿道を良く見ると、何故か観衆の少ない一角がある。
先頭にいる人物と、その後ろにピッタリくっついている人物がいるのだか、その周りにスペースが空いているのだ。
この大観衆でそこだけが異常だった。

先頭の人物は華奢な体躯だが、服装からしておそらく男性だろう。
彼は一心に隊長達の方を見ていて、俺達からは後頭部しか見えない。
アッシュブラウンの柔らかそうな髪が、緩やかに風に揺れている。
近付く程に、俺は彼から目が離せなくなった。
心の中に衝動が沸き起こる。

こっちを、見て欲しいーーー。

何故、突然こんなことを思ったのか。
今までに感じたことの無い感情が心に生まれようとしている。
内心で狼狽える俺が、それでも目を離せないでいるとーーー彼が此方を振り返った。

エメラルドグリーンの瞳が俺を見たその瞬間、周りから音が消えた。
彼の瞳と存在だけを強く感じるーー。

声が聞きたい。名前が知りたい。
そのエメラルドに、俺だけを映して欲しい。

時間にすると数十秒の出来事だっただろう。
だが俺の心は強烈に彼に惹きつけられていた。

絶対に、彼を逃したくないーー。

そう思った時、刺すような視線を感じた。
重い圧を纏ったそれは、明らかに俺に向けられている。
出処は、俺の視線の後ろ。
彼を守るように背後に立つ男が、腕組みをして此方を睨んでいた。
周りより頭1つ分以上高い身長、服の上からでも筋肉質だと分かる身体。
鋭い眼光と発される圧が只者ではないことを物語っている。

何者だ?
俺に向けてくるのは明らかな牽制だ。
彼とどんな関係なのだろう。

ブルル

ラビから小さな鳴き声が漏れた。
俺の巻き添えで一緒に威圧されてしまったんだろう。
呼吸が少し早い。

「ラビ、大丈夫だ。俺がいるだろ。」

背中をポンポン叩いてやると、安心したように呼吸が穏やかになる。
俺がホッとしてラビから視線を戻した時には、既に彼らを追い越してしまっていた。

振り返りたくてたまらない。
もう一度その姿を見たい。


「驚いたな。ありゃ不死鳥の姫だ。」

ひっそりと言ったのは、最古参の団員であるハリマーさんだ。
ジェシーの隣で馬を操りながら何か思案している。
その言葉に、俺は勿論近くの仲間が一斉に反応した。

「ハリマーさん、知り合いか?」

「はー!俺にだけ見えてるんじゃなくて良かったっす!残業し過ぎて妖精が見えるようになったかと思ったっすよ…。」

「僕には女神に見えましたよ…。」

「男性…ですよね?性別を超越した美人ってああ言う人のことなんですねぇ…。」

口々に言う仲間の言葉に負けないよう、俺は声を上げた。

「ハリマーさん、不死鳥の姫って?」

すると、彼は考えながらこう言った。

「そうか、若い奴らは知らないのか。
コーンウォール伯爵家の三男だよ。
あの見た目から付いた渾名が不死鳥の姫。
あの一族では唯一だと思うが、不死鳥に所属してない。」

まぁでもあれだけ別嬪なら剣は握らせたくないだろうなぁと続けるハリマーさんに、俺は妹の言葉を思い出す。


『あの方に剣は似合わないわ!』

ユーナの恩人にしてコンウォール家の三男。
王都で店のオーナーをしていると言う彼は…

「ショコラ伯爵…。」

鮮烈なエメラルドが頭を過った。
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