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路地裏と僕と黒い猫
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しおりを挟む周りの目はいつも同じで。
育ての母もまるで汚物を見るかのような目だった。
父の死は電話のコールだった。
父は体が悪く喘息持ちだった。もちろん僕にも父の遺伝かなんかで喘息を持っていた。
父は死の2、3日前から病院に入院した。
理由を教えてはくれなかったけど、すぐに退院できるものだと信じてた。
数少ないお金で買い物をした帰り、
家に帰ると、育ての母の書き置きがあった。
【夜は外で遊んでなさい。家には帰らないで。】
育ての母は、父が入院してから毎日、他の男を家に連れ込んでいるようだった。
その時は毎回近所の公園で時間を潰してた。
金を巻き上げようとする奴らも僕の身なりを見て、
視線を合わせようともしなかった。
2、3日後のお葬式では、
父の遺影の前で立ち尽くす僕を見て、育ての母は、
嘲笑うかのように言った。
「ふふ、あなたもお荷物な父親がいなくなって良かったんじゃなぃ?遺産も少なくて、あなたの父親。
すごく使えないわね?少しは容姿がいいんだから身体でお金を稼いだら??あなたにはそれくらいしか価値ないでしょ?」
後半なんか全く覚えてない。
僕は父をすごく尊敬していた。
収入が少なくても僕のためにちゃんと学費を払ってくれていた。
僕が学校やめて働くと言っても、父は笑って学業に勤しめと、僕の背中を押してくれていた。
そんな父に応えようと、僕は勉強を頑張り、学年主席まで上り詰めた。
父の収入の半分は育ての母の遊ぶ金に消えて行った。
そんな育ての母を僕はどうしても恨めなかった。
何度も、何度も何度も。
暴言、暴力を受けても、これでも僕をここまで育ててくれたから。と恨むことができなかった。
生みの母は僕を産んですぐに亡くなってしまった。
僕の容姿は母に似て、色素の薄い黒の髪に、ブルーとグリーンが混じった瞳。
写真で見た母によく似ていた。
そんな僕を見て、育ての母は憎く思ったのだろうか。
「あなたには価値がないの。そんな、汚いあなたを見たら周りの人はどう思うかしら??」
「……嫌、だと、思う。」
幼少期の頃の僕は、涙ぐんでそれしか答えられなかった。
年齢を重ねるごとに周りの子は体が成長していくが、僕はなぜか身長も体重も少ししか成長しなかった。
実の年齢が中学1年の時も小学4年かと間違われるほどだった。
父が亡くなる時。僕は中学3年で、1年の頃に比べれば大きくなった方だと思う。
身長は165cmで、低かったが中学1年の頃よりは全然ましだった。
体重もいくらか増え、でもまだまだ軽すぎると診断された。
父の遺影の前では、立ち尽くすことしかできなかった。
それこそ、育ての母の言葉など耳にも入りやしなかった。
そのあとの一言だった。
少しだけ。
これまで恨みや不満などなかったのだけれども、一つだけ。嫌で嫌で今すぐに殴りかかりたいと思ったことがある。
それが
「あなたの父親、あなたを産んですぐに死んだ母の次に愛人のあたしと寝たのよ?あなたの母親、随分と愛されていなかったのねぇ?」
と言う言葉だった。
父の苦しみの逃げ場が育ての母のところしかないことなど等にわかっていた。
それに、僕は痛みに苦しみながら僕を産んでくれた母親を愚弄されたことに腹が立った。
けれど、そんな熱もすぐに覚めてしまった。
ましてや、亡くなった父の前だ。
今まで耐えてきたじゃないか。我慢をしろ。
そう自分に言い聞かせた。
握りしめた掌には血が滲んだ。
父の葬儀の終わりに、まだ愚痴があるのか、育ての母はいつもの人を嘲笑うかのような顔で。
「あなたはこれからどうするつもりなの??まさか、このままあたしと暮らすわけじゃないわよね?
あたしもあなたみたいな汚い鼠を見なくて済むから。どこにも行くあてがないなら紹介してあげてもいいわぁ?オシゴトをね。」
僕はそんな育ての母をボーッと見つめて、横を通り過ぎた。
育ての母は通り過ぎた僕の肩に手を置き、まだ
何かぐちぐちと言っているようだが、一つだけ、確信的にわかったことがあった。
それは。
パシンッ____!
「僕にもう触れないでください。お願いします。」
肩に置かれた育ての母の手を弾き、まだ後ろで騒いでいるのを無視し、夜の街へ足を踏み始めた。
持っているのは父が買ってくれた大きめの、
黒いパーカーだった。
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