僕の家族!!!【ぼくのやぞく!!!】

ウツギ 遊先生

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ご飯とシャツとお別れ

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そう。本当に覚えていない。


チアキさんが僕を男だと確かめるために、結城さんと口論になったり。


その後、結城さんが


「…ごめんマキナ。チアキの部屋にある美容関係のもの全て捨てて来て。…今すぐ。」


と言って、


「わぁかりましたぁ!!!!」


と勢いよく、なんだか晴れ晴れとした表情をしてマキナさんが部屋を出て行ったり。


「な!結城ちゃん!?それは卑怯よ!!!!
ちょっと待ちなさい!!!マキナ!!!!!!」


そう言って、チアキさんが追いかけて行ったり
だなんて、全然覚えていない。



あ、覚えてた。



そんなことよりも、その後のことだ。



「…姫。大丈夫だった?」



「あ、はい。大丈夫です。ありがとうございました。」



何気ない会話だった。



「……それと。背中はもう痛くはない…?」



「え、」



「………ん?」



「え、もう一度言ってくれますか?」



「あぁ…!背中はもう痛くはない?って言ったんだよ?」



何で、知って…だって、見られてなんかっ……!
いや、でも…


「…さっき、チアキに追い詰められた時、背中ぶつけてたでしょ…?」



「へ?て、結城さん、見ていたなら助けてくださいよ…!危ぶなかったんですよ……」


ははは、と笑いながら結城さんは僕のひたいに手を当てて、



「…本当に大丈夫??顔色悪いけど…」



「ぁぁぁぁあ!!!!だ、だだだ大丈夫です!!」



いきなりで驚いて大声を上げてしまった。



良かった。とりあえずばれてはいなかった。



「そ、そんなことより!マキナさんを放っておいて良いんですかっ…??」
 


「…そうだね。まぁ、マキナなら今頃……………
チアキに締め上げられている頃だと思うよ…?」



「締め上げっ…!?だ、大丈夫なんですかそれ!」



予想外の返答に少し戸惑う。



「…ふふ。大丈夫だよ。マキナはあれでも……ね。
まぁ、兎に角。心配はしなくても大丈夫、大丈夫。そんなに心配なら、一緒に見に行こうか?」



「えっ…と。こ、断っておきます。」



「……そう?分かった。」



断った理由は、遠くからマキナさんの悲痛な叫び声が聞こえた気がしたからだ。





少し経ってから、チアキさんが帰って来た。


「…あ。おかえり~マキナ。」



「…結城ちゃん。アタシはチアキよ。ちょっと話さいだけで、すぐ名前を言い間違えるのやめて頂戴よ…いちいち訂正するのも面倒くさいわ…」



「…ふふふ。ごめんチアキ。次からは気をつけるよ…それよりも、マキナはどうしたの?」



「あぁ、マキナなら絞め殺し……てはいないけど、アタシの物を捨てようとしてたから、締め上げて 風呂に沈めておいたわ…」



2人とも普通の世間話のように話しているけれど、話の内容はどう考えても、常人には考えられない内容だった。



「あら、そういえばもうすぐ16時じゃない…!
姫ちゃんは家に帰らなくていいのかしら…?」



「……あ。わ、すれてました。そうですね。
…じゃあ、もう。おいとましようと思います…」



だいぶ時間が経っていたようだ。
気がつかないうちに、もう夕方になっていた。



スッと立ち上がった時に、結城さんに腕を引っ張られて、結城さんに体を預けるかたちになってしまった。



「…結城ちゃん何やってんのよ……?」



「ゆ、ゆゆゆ結城さんっ…!?どうされましたか!?」


結城さんは少しの間黙ってからこう言った。



「……もう1日泊まっていけばいいのに。」



今までの結城さんからは考えられない言葉だった。



「何、結城ちゃん。気に入っちゃったの…?」


「ででで、でも、迷惑ですし。これ以上はっ…」


結城さんは、分かってるよ。と続け、



「…でも、さ。落ち着くんだけどね。姫の雰囲気は…」



「あ、ありがとうございます…?」



「でも結城ちゃん。一緒にいたいのはアタシも分かるわ。だって、なんか姫ちゃんといると、離したくない気がしてくるんだもの。でもね…無理よ。」



結城さんは少し暗い顔をして、僕を離した。


名残惜しそうに僕を見つめて、



「…さぁ。おかえりよ…姫の居るべき場所へ」



「…はい。…わ、分かりました。僕も一緒に居てとても楽しかったです。…本当に…かぞ…いや。なんでもありません。………じゃあ、そろそろ帰りますね…?」



「…帰るのなら玄関はこっちよ。ついて来なさい。
……ほら、結城ちゃんも。」



チアキさんと結城さんにつれられて、大きな玄関へ来た。


自分の靴もきちんとおいてあり、本当に迷惑になったんだなって改めて実感した。



「あ…!えと、このシャツとズボン。後でちゃんと洗濯してお返ししますね…!!」



「……そのくらい、別にいいよ。」


結城さんがそう答えた時、チアキさんがコソッと耳打ちをした。


何を言ったのかはよくわからなかったけれど、結城さんの表情が明るくなっていく。



「……いや。そうだね。姫にまた来てもらえるよう、返してもらうのは、次にしようかな。」


とにかく、暗かった結城さんが明るく笑顔になったので、良かった。


「…そうですね。じゃあ、それでは…!」



そういって別れを告げる。



「…そ。じゃあね。姫ちゃん。」



「…姫。また会おうね。……ら…ず。」



「はい。ありがとうございました…!」




結城さんが最後に、なんて言ったか分からなかったけど、僕はお礼を言い、居場所のない家に帰ることとなった。
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