上 下
16 / 17
闇と商品と裏社会

16

しおりを挟む





マキナさんとチアキさんと、少しの間話していたら、さっきの部屋から結城さんが出てきた。



「…あれ。チアキ終わったの?」



「あぁ、下の奴ら?あんなのアタシにとってゴミよ…まぁ、雇ってもらってるだけあってソコソコ手こずったけどね?大したことないわ」


いい男もいなかったし~。と言ってチアキさんは結城さんが出てきた部屋に入って行く。



「…え、ちょ。チアキお前なんで入るんだよ…」



と、マキナさんが何故かチアキさんについて行った。



「…姫。何もされてない??」



そう言って結城さんは、心配そうに顔をのぞいてくる。



「…はい。……だ、大丈夫ですよ。」



「…姫。何かあったでしょ。…教えてくれる?私は姫の気持ちが知りたいよ。」



頭を撫でてくれて、優しく言ってくれる。



「……でも。こんなこと話しても…僕は…」



お願い。話して?  と結城さんは、辛そうな表情をしている。



そんな辛い顔させるつもりはなかったのに…ごめんなさい。




「……僕は。産みの母と育ての母がいるんです。」



そう話し出して、結城さんは真剣に聞いてくれている。



「…産みの母は僕を産んですぐ亡くなったんです。それを小学一年生の始めの時に、父に聞かされました。……それで。……小学校に上がってすぐに…育ての母が……僕にキツくあたるようになってしまって……ひどい時には全身に………いや、なんでもありません。
……そして、この前父が亡くなったんです。
多分、病死だったんだと思います……父のお葬式があった時に……育ての母の何気無い一言についカッとなって……逃げてきたんです。」



それで……  と話そうとしたが、足がカクンと折れて倒れそうになる。


視界が潤んで、力も出なくて、息も荒くなる。



多分、媚薬のせいだ。



それを結城さんは、慌てて受け止めてくれた。



「…本当に大丈夫?無理してない?」



「……本当の本当に大丈夫………と言いたいところなんですけど…少し…ぼっ~として……
ちからが…出てこないんです…」



「……ふむ。これはいけない……姫。帰ろう。」


そう言って結城さんは僕を持ち上げ、横抱きをする。



「……え。か、える?……どこにですか?」



僕に居場所なんてない。



「…ふふ。おかしなことを言うね。
決まっているだろう…?そんなの…」



「…え、でも…結城さ…」



「チアキ~マキナ~帰るよ~。」



僕の言葉は結城さんに遮られてしまい、聞きたかったことが聞けなかった。



「…ハイハイ。なんすか~?もう行くんすか?まだチアキが中で殺る勢いで相手ボッコボコにしてますけど…」



「…そこらへんにして帰るって伝えて。」



分かりましたっす。と言ってマキナさんはチアキさんを呼びに戻った。



「…姫。眠い?」



確かにぼっ~として、今すぐにでも寝てしまえそうだ。



「…ん。少し…だけ。」




そう。 と背中を優しく撫でられて、




「…本当に。よく頑張ったね。」




その言葉を聞いて、僕は眠りについた。
しおりを挟む

処理中です...