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エルフの師弟
第35話 馬車での一夜
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「これって……馬車?」
「そうだ。儂が旅をしていた時に利用していた馬車だ」
「ウォンッ……」
黒渦から出現した馬車を出したクロウにナイとビャクは唖然とする。確かに馬車に入れば身体は濡れずに済むかもしれないが、肝心の馬が無いので動かす事ができない。
「師匠、馬は?」
「たわけっ!!一晩過ごすだけならこれで十分だろう!!何処かに行くわけでもあるまいし、さっさと入れ!!」
「ウォンッ……」
まさか馬が引いていない馬車の中で一晩過ごす羽目になるとは思わなかったが、雨が本降りになる前にナイはビャクを抱えて馬車の中に入る。クロウも入ると異空間から毛布を取り出してナイに渡す。
「ほれ、毛布だ。暖かくなってきたとはいえ、夜は冷えるからな。風邪をひかない様にくるまっていろ」
「あ、大丈夫だよ。それならいいのがあるから」
「ウォンッ!!」
ナイは自分の収納魔法で白い毛皮を取り出し、それは先日にミノタウロスから回収した白狼種の毛皮だった。ビャクと共にナイは毛皮に包まれると、普通の毛布よりも暖かく安心して休めた。
「これならビャクも安心して休めるね」
「クゥ~ンッ……」
「そうか、自分の家族の毛皮だからな……親に包まれているような気分なんだろう」
毛皮を纏った途端にビャクは横になって寝息を立て始め、クロウもマリアとの戦闘で疲労が溜まっていたのかすぐに眠ってしまう。残されたナイは馬車の中から外の様子を眺め、眠くなるまで考え事を行う。
ナイが馬車に乗ったのは初めてではなく、小さい頃に父親と一緒に馬車で街まで出向いたことが一度だけある。その街の名前は「イチノ」であり、この山から遠く離れた場所にあるので気軽に出向く事もできない。
(ビャクがもっと大きくなれば俺を背中に乗せて運んでくれたりしないかな……ははっ、流石にそれは無理か)
白狼種がどれほど大きくなるのか分からないが、馬ぐらいに大きくならなければナイを乗せて走る事はできない。魔物は成長が早い生き物とはいえ、ビャクが育つまで時間が掛かるだろう。
(ハルは元気にしてるかな……)
親友との約束を果たすまで猶予はまだあるが、やはり四年も顔を合わせていないと寂しく思う。一応は魔術師になったので会いに行きたいと思うが、山から村に行くまで距離があり、それに村から逃げ出した身分なので気軽に会いに行く事はできない。
(せめてマリアさんやエリナみたいに空が飛べたらな……)
空を飛んで移動する事ができれば村まで移動してハルの様子を伺う事ができるが、生憎とナイは風属性の魔術痕は刻んでいない。そもそも空を飛ぶ魔法はクロウでさえも制御が難しく、子供のナイが覚えても扱いこなせるまでどれほどの時間が掛かるか分からない。
考えれば考える程に虚しくなり、もう寝ようとナイは目を閉じる。眠気に襲われる前にナイは今日の出来事を思い返す。
(エリナ、空を飛ぶ魔法、馬車……?)
意識が夢の世界に誘われる寸前、これまでの出来事を思い返したナイはある考えを抱く。突拍子もない方法だが、もしも実現できればナイは一人で村に帰ることができるかもしれない。
「これだっ!!」
「ぬおっ!?な、何じゃ!?」
「ウォンッ!?」
いきなり大声を出したナイにクロウとビャクは目を覚まし、何事かと彼に振り返る。ナイは酷く興奮した様子で自分の両足を見つめ、そしてクロウに頭を下げた。
「師匠!!お願いがあるんだ!!」
「な、何だ急に!?」
「俺の足に……魔術痕を仕込んでよ!!」
「は、はあっ!?」
「クゥ~ンッ?」
唐突に起こされたかと思いきや今度は突拍子もない提案を出されたクロウは愕然とするが、そんな彼にナイは自分の考えを伝える――
――ナイの提案を聞かされたクロウは考え込み、また彼がとんでもないことを言い出した事に呆れてしまう。しかし、話を聞く限りでは面白い提案だと思った。
「なるほど、そう言う事か……」
「や、やっぱり無理かな?」
「いや、不可能ではない。だが、それをすると両足に負担が掛かるぞ」
「大丈夫、使いこなしてみせるよ!!」
「ウォンッ……」
クロウの言葉にナイは自信満々に答え、そんな彼にクロウはため息を吐き出す。魔術痕を一度刻めば二度と消える事はないとはいえ、両足の裏にするのであれば大した問題はない。
「人間の魔術師で両足に魔術痕を刻む者は滅多におらん。まあ、そこまで言うのならば刻んでやろう」
「本当に!?」
「だが、お前の考えた移動法が実践できるかどうかは儂にも分からん。失敗したからといって文句を言うなよ」
「大丈夫だよ!!その時はちゃんと別の使い道を考えるから!!」
「全く……好きにしろ」
夜が明ける前にクロウはナイの両足に魔術痕と枝分かれの術式を施し、遂にナイは右手以外に二つの魔術痕を身体に刻む――
「そうだ。儂が旅をしていた時に利用していた馬車だ」
「ウォンッ……」
黒渦から出現した馬車を出したクロウにナイとビャクは唖然とする。確かに馬車に入れば身体は濡れずに済むかもしれないが、肝心の馬が無いので動かす事ができない。
「師匠、馬は?」
「たわけっ!!一晩過ごすだけならこれで十分だろう!!何処かに行くわけでもあるまいし、さっさと入れ!!」
「ウォンッ……」
まさか馬が引いていない馬車の中で一晩過ごす羽目になるとは思わなかったが、雨が本降りになる前にナイはビャクを抱えて馬車の中に入る。クロウも入ると異空間から毛布を取り出してナイに渡す。
「ほれ、毛布だ。暖かくなってきたとはいえ、夜は冷えるからな。風邪をひかない様にくるまっていろ」
「あ、大丈夫だよ。それならいいのがあるから」
「ウォンッ!!」
ナイは自分の収納魔法で白い毛皮を取り出し、それは先日にミノタウロスから回収した白狼種の毛皮だった。ビャクと共にナイは毛皮に包まれると、普通の毛布よりも暖かく安心して休めた。
「これならビャクも安心して休めるね」
「クゥ~ンッ……」
「そうか、自分の家族の毛皮だからな……親に包まれているような気分なんだろう」
毛皮を纏った途端にビャクは横になって寝息を立て始め、クロウもマリアとの戦闘で疲労が溜まっていたのかすぐに眠ってしまう。残されたナイは馬車の中から外の様子を眺め、眠くなるまで考え事を行う。
ナイが馬車に乗ったのは初めてではなく、小さい頃に父親と一緒に馬車で街まで出向いたことが一度だけある。その街の名前は「イチノ」であり、この山から遠く離れた場所にあるので気軽に出向く事もできない。
(ビャクがもっと大きくなれば俺を背中に乗せて運んでくれたりしないかな……ははっ、流石にそれは無理か)
白狼種がどれほど大きくなるのか分からないが、馬ぐらいに大きくならなければナイを乗せて走る事はできない。魔物は成長が早い生き物とはいえ、ビャクが育つまで時間が掛かるだろう。
(ハルは元気にしてるかな……)
親友との約束を果たすまで猶予はまだあるが、やはり四年も顔を合わせていないと寂しく思う。一応は魔術師になったので会いに行きたいと思うが、山から村に行くまで距離があり、それに村から逃げ出した身分なので気軽に会いに行く事はできない。
(せめてマリアさんやエリナみたいに空が飛べたらな……)
空を飛んで移動する事ができれば村まで移動してハルの様子を伺う事ができるが、生憎とナイは風属性の魔術痕は刻んでいない。そもそも空を飛ぶ魔法はクロウでさえも制御が難しく、子供のナイが覚えても扱いこなせるまでどれほどの時間が掛かるか分からない。
考えれば考える程に虚しくなり、もう寝ようとナイは目を閉じる。眠気に襲われる前にナイは今日の出来事を思い返す。
(エリナ、空を飛ぶ魔法、馬車……?)
意識が夢の世界に誘われる寸前、これまでの出来事を思い返したナイはある考えを抱く。突拍子もない方法だが、もしも実現できればナイは一人で村に帰ることができるかもしれない。
「これだっ!!」
「ぬおっ!?な、何じゃ!?」
「ウォンッ!?」
いきなり大声を出したナイにクロウとビャクは目を覚まし、何事かと彼に振り返る。ナイは酷く興奮した様子で自分の両足を見つめ、そしてクロウに頭を下げた。
「師匠!!お願いがあるんだ!!」
「な、何だ急に!?」
「俺の足に……魔術痕を仕込んでよ!!」
「は、はあっ!?」
「クゥ~ンッ?」
唐突に起こされたかと思いきや今度は突拍子もない提案を出されたクロウは愕然とするが、そんな彼にナイは自分の考えを伝える――
――ナイの提案を聞かされたクロウは考え込み、また彼がとんでもないことを言い出した事に呆れてしまう。しかし、話を聞く限りでは面白い提案だと思った。
「なるほど、そう言う事か……」
「や、やっぱり無理かな?」
「いや、不可能ではない。だが、それをすると両足に負担が掛かるぞ」
「大丈夫、使いこなしてみせるよ!!」
「ウォンッ……」
クロウの言葉にナイは自信満々に答え、そんな彼にクロウはため息を吐き出す。魔術痕を一度刻めば二度と消える事はないとはいえ、両足の裏にするのであれば大した問題はない。
「人間の魔術師で両足に魔術痕を刻む者は滅多におらん。まあ、そこまで言うのならば刻んでやろう」
「本当に!?」
「だが、お前の考えた移動法が実践できるかどうかは儂にも分からん。失敗したからといって文句を言うなよ」
「大丈夫だよ!!その時はちゃんと別の使い道を考えるから!!」
「全く……好きにしろ」
夜が明ける前にクロウはナイの両足に魔術痕と枝分かれの術式を施し、遂にナイは右手以外に二つの魔術痕を身体に刻む――
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