伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です

カタナヅキ

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修行の旅

第50話 わずかな希望

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「そんな……」
「ほ、本当にここが兄貴の言っていた冒険者ギルドなんですか?」
「ウォンッ……」


崩壊した建物を前にしてナイは膝から崩れ落ちそうになり、慌ててエリナがナイを支える。数年前に訪れた冒険者ギルドの建物は焼け崩れていた。

どうやら魔物の襲撃でイチノが滅ぼされてから大分時が経過しており、街の住民は避難したかあるいは殺されたと考えるべきだろう。ナイはハルが生きていることを願いながらエリナに肩を貸して貰う。


「こ、ここから離れよう……もしも生き残りが居るとしたら、きっと別の街に避難しているはずだ」
「そ、そうですよ!!兄貴の幼馴染さんだってきっと無事ですよ!!」
「ウォンッ!!」


仮に街の住民が生き残っていたとしたら他の街に既に避難したとしか考えられない。だからハルが生きているとしたら既に街から脱出したとしか考えられず、イチノから一番近い街に向かう事に決めた。


「ここから北の方角に「ニノ」という街があるらしいから、まずはそこに行ってみよう」
「兄貴、大丈夫っすか?」
「大丈夫、もう平気だよ。ハルがこんなところで死ぬはずがない……」


イチノから北の方角に「ニノ」と呼ばれる街があることはナイも知っているが、実際に行ったことはないのでどれほどの距離があるのかは分からない。しかし、この街に居る限りは常に魔物に襲われる危険もあるため、急いで街から脱出する必要があった。


「エリナ、俺の背に乗って。黒輪を使って移動するから」
「ええっ!?そんな、兄貴の背中に乗るなんて……」
「変な遠慮はしなくていいから」


ナイが背中を向けるとエリナは恥ずかし気に身体を寄せようとした時、ビャクが唸り声を上げる。


「グルルルッ!!」
「ビャク?どうした?」
「まさか……」


ビャクの反応を見てエリナは弓を抜いて周囲を見渡すと、いつの間にかナイ達は警備兵の格好をしたホブゴブリンの集団に取り囲まれていた。


「グギィッ!!」
「ギッギッギッ!!」
「グギャギャッ!!」
「こいつらいつの間に……」
「どうやらあたし達の存在に気づいていたようですね」
「ウォオンッ!!」


ホブゴブリンの集団は街に侵入したナイ達に気が付いていたらしく、彼等を取り囲んで退路を断つ。数は10匹ほどだが全員が武装をしており、中には大盾を所持する個体も居た。


(山で見かけたホブゴブリンよりも厄介そうだな。でも、ミノタウロスと比べたら対して怖くもないな)


昨日に倒したミノタウロスと比べればホブゴブリンなど恐れるに足りず、ナイは指先を構えると先ほど編み出した「石弾」の連射を試す事にした。


「エリナ、背中は任せたぞ」
「はい!!兄貴の背中はあたしが守ります!!」
「ビャク、お前は近づいてきた奴を仕留めろ」
「ウォンッ!!」
「「「グギィイイッ!!」」」


ナイ達が戦闘態勢を整えると、ホブゴブリンの集団は一斉に襲い掛かろうとしてきた。それに対してナイは最初に五本指から黒渦を形成し、迫りくるホブゴブリンの一匹に狙いを定めた。

鎧兜で身を守る相手には石礫を当てたとしても対して効果はないと判断し、威力を重視した石弾を撃ち込んで防具ごと破壊するのが一番だった。まずは人差し指の黒渦の回転力を増した状態で撃ち込む。


「喰らえっ!!」
「ギャウッ!?」


正面から突っ込んできたホブゴブリンの頭部に目掛けて石弾を発射すると、兜を貫通して鋭利に尖った石がホブゴブリンの頭を打ち抜く。仲間が倒れたのを見て他のホブゴブリンは足を止める。


「グギィッ!?」
「グギャッ!?」
「次はお前等だ!!」


他のホブゴブリンが足を止めた隙を見逃さず、今度は親指の黒渦に「超回転」を加えた状態で一番近くに立っていたホブゴブリンの胸元を狙う。鎧越しでも強烈な衝撃を受けたホブゴブリンは吹き飛び、地面に派手に転がり込む。


「ギャアアッ!?」
「グギィッ!?」
「グギギッ!!」


仲間が二体もやられた姿を見てホブゴブリンは警戒心を高め、大盾を装備したホブゴブリンが盾で身を隠した状態で突っ込む。それに対してナイは冷静に中指を構えて攻撃箇所を足元に定める。


(ここだっ!!)


盾越しに石弾を撃ち込んだとしても衝撃で仰け反らせるのが精一杯であり、それならば盾で覆い隠せない足を狙うのが最善の一手だった。中指から発射された石弾は見事にホブゴブリンの右足を貫き、あまりの激痛にホブゴブリンは地面に転がり込む。


「グギャアアアッ!?」
「グギィッ!?」
「グギギッ!?」
「今度はお前等だ!!」


盾を持った仲間さえも地面に倒れた姿を見て他のホブゴブリンは怖気づく中、今度は薬指と小指から石弾を連続に発射して急所を撃ち抜く。五本指の黒渦から五体のホブゴブリンを倒したナイは一息吐く。


(よし、全弾命中!!でも結構疲れるなこれ……)


石弾を撃つ度に高い集中力を必要とするため、五発目を撃ちこんだ後に疲労感に襲われたナイは身体がふらつく。それを見てホブゴブリンの一体がナイに目掛けて手にしていた槍を投げ放つ。


「グギィッ!!」
「うわっ!?」
「ウォンッ!!」


自分に目掛けて投げ放たれた槍を見てナイは焦るが、傍に控えていたビャクが跳躍して刃物のように研ぎ澄まされた牙で槍を切り裂く。それを見たエリナは即座に反撃を行う。


「兄貴を狙うなんていい度胸っすね!!」
「わっ!?」
「ギャウッ!?」


エリナが繰り出した矢は目にも止まらぬ速度で槍投げを行ったホブゴブリンの頭を貫く。彼女の繰り出す矢には風の魔力が宿っており、兜程度ならば簡単に貫通する威力を誇る。

ナイが戦っている間にエリナも後方を囲んでいたホブゴブリンを始末していたらしく、残されたのは一体だけとなった。仲間があっという間にやられたのを見てホブゴブリンは恐怖の表情を抱く。


「グ、グギィッ……!?」
「残るはこいつだけか……」
「兄貴、もう行きましょう。他の奴等が気付く前に逃げた方がいいですよ」
「……それもそうだな」


街中にはまだ多数の魔物が生息しているはずであり、今は逃げる事に専念した方がいいと判断したナイ達はその場を後にする。取り残されたホブゴブリンは自分だけが生き残れたことに安堵するが、去り際にナイは振り返ると右手を伸ばす。


「でも、念のために仕留めておこう」
「グギャッ!?」


助かったと思った矢先にナイが自分に右手を構えたのを見てホブゴブリンは両手で顔を覆う。頭さえ防げれば死ぬ事はないと判断したが、ナイの人差し指から放たれた石弾は両腕を貫通してホブゴブリンの眉間を撃ち抜く。



ッ――――!?



声にもならない悲鳴が街中に響き渡り、全てのホブゴブリンを始末したナイ達は脱出のために駆け出す――
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