貧弱の英雄

カタナヅキ

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砂漠の脅威

第922話 貧弱の英雄VS獣人国の黄金級冒険者

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「黄金級冒険者はそんな簡単になれないのは君も分かってるんでしょ?幸運だけで黄金級まで昇格できる人なんていない、冒険者ギルドが黄金級に相応しい人物だと判断したからガオウさんは黄金級冒険者に昇格したんだよ」
「何を偉そうに……冒険者でもない癖に口を挟まないでくれますか?」
「確かに僕は冒険者でもなんでもない、だけどガオウさんの実力はよく知っている……君だってガオウさんの実力を知っていればガオウさんが幸運で黄金級冒険者に昇格したなんて言うはずないよね」
「ふんっ……」
「坊主……ありがとな」


ガオウは自分の実力を高く評価するナイの発言に少し照れくさそうな表情を浮かべ、彼の肩に手を置いてフィルと向き合う。ガオウはフィルと向き合うと、彼に対して堂々と言い放つ。


「俺の実力に疑問があるなら今ここで証明してやってもいいぞ。だけど、お前が俺に一度でも勝てたか?」
「それは昔の話だ!!今なら僕の方が強い!!」
「ほう、ならやるか?お互いに今の実力を確かめ合おうじゃないか」
「これこれ、止めんか……」
「け、喧嘩は駄目ですよ!!」


フィルはガオウの言葉を聞いて激高するが、慌ててハマーンとリーナが間に割って入る。しかし、興奮したフィルは背中に抱えている「双剣」に手を伸ばそうとした。それを見たガオウも腰に取り付けた鉤爪に手を伸ばすが、この時にナイが二人の腕を掴む。


「二人とも落ち着いて下さい」
「うおっ!?」
「邪魔をする……ぐあっ!?」


ナイに腕を掴まれたフィルとガオウは驚いたが、すぐにフィルの方は彼の腕を振り払おうとした。しかし、あまりの握力にフィルはナイの腕を引き剥がすどころか腕を動かす事もできない。

見た目は華奢な少年にしか見えないのにフィルは腕を掴まれた途端、まるで自分よりも巨大な大男に腕を掴まれた錯覚に陥り、彼は自分とナイのの差を思い知らされる。


(そ、そんな馬鹿な……何だ、こいつの力は!?)


自分の腕を掴んで離さないナイに対してフィルは動揺を隠しきれず、その一方でガオウの方も興奮が冷めて慌ててナイを諭す。


「わ、悪かった……ちょっと熱くなっただけだ。だから腕を離してくれるか?」
「本当ですか?」
「あ、ああ……俺も頭に血が上り過ぎた」
「そうですか、ならもう喧嘩は駄目ですよ」
「ぐうっ……い、いい加減に離せっ!!」


ナイは二人の腕を離すとガオウは安堵するが、フィルの方は自分の腕に残ったナイの指の痣を見て顔色を青ざめ、その様子を見守っていたハマーンとリーナもは冷や汗を流す。


「ナ、ナイ君……もしかして怒ってる?」
「え?いや、怒ってはないけど……」
「全く、火竜を倒して以来に凄味が増したな」
「おい、フィル……これで分かったか?この坊主はこの船に乗っている誰よりも強いんだ。そこの所を弁えろよ」
「くっ……」


自分の腕を抑えるフィルに対してガオウは暗に忠告するが、フィルとしては自分の腕に痣を残したナイに怒りを抱く。

これまでにフィルはを相手に力負けした事はなく、それだけに人間でしかも自分と年齢が大して変わらない相手に力負けしたという事実が許せず、彼はナイに対して宣言する。



「――決闘だ!!今ここで僕と戦え!!」



そのフィルの発言は船上だけではなく、造船所に響き渡る程の大声だった。その彼の宣言を聞いてナイ達だけではなく、船に乗り込もうとしていた他の人間も驚いた表情を浮かべた。


「なっ、この馬鹿……何を考えてるんだ!!」
「だ、駄目だよ!!受けたら駄目だからね、ナイ君!!」
「こら!!お主、何を言っておるのか分かってるのか!?こんな時に争うな!!」
「…………」
「どうした、僕は決闘を申し込んだぞ!!受けるのか受けないのか答えろ!!」


決闘を申し込んできたフィルに対してナイはどのように反応すればいいのか困ったが、フィルは彼を挑発するように背中の双剣に手を伸ばす。

王国においての「決闘」とはお互いの誇りと命を賭けた試合を申し込む事を意味しており、決闘を申し込んだ人物と受け入れた者は勝負で命を落としたとしても相手側は罪には問われない。勿論、正式な決闘ならば立会人も用意しなければならず、その立会人は公平な立場の人間しか引き受けられない。

今から飛行船が出発するという時に決闘を申し込んできたフィルに対し、他の者は止めようとする中、とある人物が間に割り込む。


「ほう、決闘か!!それならば俺が立会人になろう!!」
「えっ……お、お父さん!?どうしてここに!?」
「ア、アッシュ公爵!?」
「こらこら、話をややこしくするでない!!」


船に乗り込んできたのは今回の遠征には参加しないはずのアッシュであり、どうして彼がここに居るのか娘であるリーナさえも戸惑う。そんな彼女を置いてアッシュはナイとフィルを交互に見て何かを悟ったように頷く。


「娘を見送ろうと立ち寄ったが、何やら面白そうな事が起きているようだな。それでお前はフィルと言ったか?」
「は、はい!!」
「なるほど、君が最近に黄金級冒険者に昇格したという少年か……噂はよく耳にしているぞ」
「本当ですか!?」


アッシュ公爵は王国内でも武闘派として名前が知られ、この国の大将軍であるロランにも匹敵する知名度を誇る。獣人国でもアッシュの名前は知れ渡っており、フィルも密かに彼の事を尊敬していた。

フィルを観察するようにアッシュはじっくりと彼の身体を見ると、今度はナイの方に振り返る。アッシュが自分を見つめてきた事にナイは戸惑うが、彼は面白そうな表情を浮かべてフィルとナイの肩を掴む。


「ふむ、大切な任務の前に決闘などというのは穏やかではないな。だが、お互いの実力を把握するために模擬戦を行う事は悪くはない」
「えっ……」
「模擬戦、ですか?」
「アッシュよ、何を言い出すんじゃ!?」
「お父さん、止めてよ!!出発前に喧嘩なんて……」
「いや、やらせてやったらどうだ?坊主もくそガキもお互いの実力を把握するのは悪くないだろ」


模擬戦という言葉が出た事でアッシュが二人を戦わせようとしている事は明白であり、ハマーンとリーナは止めようとしたがガオウは意外な事に賛成する。


「ガオウ!!お主もいったい何を言っておる!?」
「いや、これは重要な事だぞ爺さん。これから一緒に戦う仲間としてやっていく以上、お互いの実力は知っておいて悪くはないはずだ。そういいたいんでしょう、アッシュ公爵?」
「おお、君は話が分かるな。リーナ、これは必要な事なんだ。この二人をここで今戦わせて互いの実力を把握させる、文句はないな」
「そ、そんな……」
「……僕は構いませんよ」
「はあっ……」


話の流れを察してナイはアッシュがどうしてもフィルと自分を戦わせようとしている事を察し、ここまでくると断れそうな雰囲気ではない。仮に無理に断ればナイはフィルから臆病者扱いされるため、それはナイとしても気に入らない。


「よし、この船の上で戦うとなると色々と問題があるな……下に降りてから戦ってもらうぞ」
「お主、本当に戦わせるつもりか?出発前に二人が怪我をしたらどうする!!」
「大丈夫だ。万が一の場合は俺が止める。それにこれは決闘ではない、ただの模擬戦だ」
「はははっ……言葉は良いようだな」
「ナイ君……」


アッシュはナイとフィルを船の下に移動させると、二人の模擬戦を行う事が決定した。騒ぎを聞きつけた他の王国騎士達も集まり、見送りに来ていた人間も集まってきた。


「たくっ、いったい何の騒ぎだい?」
「何だか知らないけど、ナイと変な奴が戦うみたいだぞ?」
「えっ!?ナイ君が戦うの!?」
「ど、どういう事!?」


聖女騎士団の団長のテンと彼女の付き添いで来たルナ、モモ、ヒナの3人も見送りに訪れていた。他にも銀狼騎士団の副団長のリンと、金狼騎士団の団長と副団長のバッシュとドリスも騒ぎを聞きつけてやってくる。


「これは何の騒ぎだ?」
「さあ……話を聞く限りだと、アッシュ公爵がナイさんと例の新しく黄金級冒険者に昇格した人を戦わせるようですわ」
「ほう……これは見ものだな」


本来ならば勝手な騒動を止めるべき立場の三人ではあるが、アッシュ公爵が関わっている事を知ると誰も咎める事はせず、それに三人ともナイの今の実力と新しく加入した黄金級冒険者の実力を把握したい理由もあって止めるような真似はしない。

徐々に人が集まってきた事にナイは少し緊張するが、フィルの方は既に戦闘準備を整えていた。彼は双剣に手を伸ばすと、まるで水晶のように美しい透明な刃が露わになった。


(何だ、あの剣……水晶で出来ているのか?)


水晶を想像させる美しい刀身の双剣を見てナイは戸惑い、そんな彼の反応を見てフィルは余裕の笑みを浮かべる。アッシュもフィルの剣が気になるらしく、彼の武器を見てナイに耳元で囁く。


「ほう……面白そうな物を持っているな。気を付けろ、あの剣は恐らくは二対で意味を成す魔剣だ」
「二対で……?」
「まあ、実際の所は分からないがな……だが、油断はしない方がいいぞ」


アッシュの言葉を聞いてナイは「二対」という言葉が気にかかり、この時にナイはフィルの武器をよく観察する。彼が所有するフィルの双剣は柄の部分が鎖で繋がっており、しかもかなりの長さを誇る。

鎖で柄同士が繋がった武器など使いにくいのではないかとナイは思うが、フィルは準備を終えると両手で双剣を握りしめてナイと向き合う。それを見たアッシュはナイに視線を向けると、ナイも旋斧を抜いて構えた。


「よし、二人ともこれだけは注意しておくが今から行うのは模擬戦だ!!決闘ではない、だからお互いの命を奪い合うような行為は許さんぞ!!」
「ええ、分かっていますよ」
「……はい」


念押しにこれから行うのは決闘ではない事をアッシュは注意すると、二人の準備が整ったのを確認してを開始した。
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