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外の世界へ
第45話 老人
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「こっちの方に道がある。山を越える人はこの道を通っていると思う」
「よし、あっちに行くぞ」
「ウォンッ!!」
馬車ならぬ狼車に乗り込んだナオ達はミズネの先導で移動を行う。ウルは飼い主であるネココの指示に従って車を引くが、この時にナオは魔力感知で常に周囲の注意を怠らない。
(サンドワームはウル君が傍にいても襲い掛かってきた。さすがにあれだけの大きさの魔物は白狼種が相手でも怯えないか)
力が弱い魔物ならば白狼種の姿を見ただけで逃げ出すが、サンドワームのように強い魔物ならば相手が誰であろうと躊躇なく襲い掛かってくる。尤も山の中にサンドワームよりも強い魔物がいるのかは疑問だが、とにかく油断せずに慎重に山の中を移動するしかない。
馬よりも早く移動できるウルといえども、車を引きながらの移動では速度が落ちる。しかもあまりに早く走りすぎると車輪が壊れる可能性もあり、今後も狼車での旅を続けるのならば頑丈な車を調達する必要があった。
(この車だと長持ちできそうにないな。次の街についたら魔石を売って大きな馬車でも買おうかな?)
ナオはサンドワームから頂いた魔石は売却して金に換えるつもりだった。理由としてはナオもミズネも地属性の魔法は扱えず、魔石を持っていても宝の持ち腐れだった。
「この魔石はどれくらいの値段で売れるかな?」
「……分からない。街によって魔石の買取価格は大きく違う。でも、最低でもこの馬車が買えるぐらいの値段で売れるはず」
「え!?それってそんなに価値があるのか!?なあ、兄ちゃん。あたしにくれよ!!」
「だ、駄目だって……これは次の街で売る予定なんだから」
「ちぇっ」
魔石の価値を知らされてネココは目を輝かせるが、ナオは魔石を売って旅に役立つ物を買うつもりだった。まだお金には余裕はあるが、今後のことも考えて無駄使いは控えなければならない。
話し込んでいる間にも狼車は山頂まで辿り着く。道行く人たちのために建てられたのか大きな小屋が存在し、時間も暗くなったので今夜は小屋の中で過ごすことにした。
「ちょうど良かった。小屋があるからあそこで休もう」
「ううっ、だんだん寒くなったな」
「山の天気と気温は変わりやすい。風邪をひく前に小屋に行くべき」
「ぷるぷるっ」
「え、スラミンはここに残りたいの?そうか、ウル君が寂しがるといけないからね」
「ウォンッ!!」
スラミンは狼車の中に残り、ウルと共に外で過ごすつもりらしい。ナオとミズネとネココは小屋の中に入ると、三人以外は誰もいなかった。
「おっ、あたしたちの貸し切りだな」
「ふああっ……今日は疲れたから早く寝たい」
「晩御飯は干し肉とパンでいいかな」
街に出る前に購入してきた食料をナオが取り出そうとしたとき、小屋の外からウルの鳴き声が響き渡る。
――ウォオオオンッ!!
何事かとナオ達は慌てて小屋の外に出ると、信じられない光景が広がっていた。小屋の外にはたいまつを手にしたゴブリンの群れが待ち構えており、その手には石斧や石槍が握りしめられていた。
「ゴ、ゴブリン!?しかもこんな大量の……」
「くそっ、なんだよこいつら!?ウルが怖くないのか!?」
「待って、様子がおかしい」
ゴブリンの群れを見てナオとネココは戦闘態勢に入ったが、ミズネはゴブリンたちが襲い掛かってくる様子がないことに不思議に思う。するとゴブリンの群れが左右に分かれ、森の奥から杖を手にした老人が現れた。
「ひひひっ……儂の小屋に勝手に入ったのはお主らか?」
「に、人間!?」
「どうして人間がここに……」
「……魔物使い」
ゴブリンたちを従えるように現れたのは背の小さな老人であり、彼が持っている杖が単なる松葉杖ではなく、魔術師が扱う杖だと見抜いたミズネは老人の正体に気が付く。
(魔物使い!?確か前に師匠から聞いたことがあるぞ!!)
魔物使いとは文字通りに魔物を従える人間のことを指し、大昔に存在した魔術師だと語られている。魔法の力で魔物を操るだけではなく、自分の魔力を分け与えることで特殊能力を目覚めさせることができるとマリアから聞いていた。
しかし、魔物使いは存在したのは何百年も前の話であり、現代では魔物使いは一人もいないと考えられていた。その理由はかつて一人の魔物使いが凶悪な魔物を従え、いくつもの国家を滅亡に追い込んだ。その魔物使いは多大な犠牲と引き換えに討ち果たされたが、魔物使いの存在を危険視した人々は今後二度と同じ過ちが繰り返されないように魔物使いの魔法技術の伝承を固く禁じた。
現代では魔物使いは存在しないと思われたが、ナオ達の前にはゴブリンの群れを支配する老人が現れた。ナオがどういうことなのかと疑問を抱くと、老人の手にはどこかで見覚えがある本を手にしていた。
(あの本、まさか魔導書か!?)
一年前にナオはマリアの元に訪れた際、彼女から受け取った「古代魔法」の魔導書と老人が所持する本がよく似ていることに気が付く。もしかしたら彼が持っている本は「魔物使い」の扱う魔法が記された魔導書ではないかと勘づいた。
「よし、あっちに行くぞ」
「ウォンッ!!」
馬車ならぬ狼車に乗り込んだナオ達はミズネの先導で移動を行う。ウルは飼い主であるネココの指示に従って車を引くが、この時にナオは魔力感知で常に周囲の注意を怠らない。
(サンドワームはウル君が傍にいても襲い掛かってきた。さすがにあれだけの大きさの魔物は白狼種が相手でも怯えないか)
力が弱い魔物ならば白狼種の姿を見ただけで逃げ出すが、サンドワームのように強い魔物ならば相手が誰であろうと躊躇なく襲い掛かってくる。尤も山の中にサンドワームよりも強い魔物がいるのかは疑問だが、とにかく油断せずに慎重に山の中を移動するしかない。
馬よりも早く移動できるウルといえども、車を引きながらの移動では速度が落ちる。しかもあまりに早く走りすぎると車輪が壊れる可能性もあり、今後も狼車での旅を続けるのならば頑丈な車を調達する必要があった。
(この車だと長持ちできそうにないな。次の街についたら魔石を売って大きな馬車でも買おうかな?)
ナオはサンドワームから頂いた魔石は売却して金に換えるつもりだった。理由としてはナオもミズネも地属性の魔法は扱えず、魔石を持っていても宝の持ち腐れだった。
「この魔石はどれくらいの値段で売れるかな?」
「……分からない。街によって魔石の買取価格は大きく違う。でも、最低でもこの馬車が買えるぐらいの値段で売れるはず」
「え!?それってそんなに価値があるのか!?なあ、兄ちゃん。あたしにくれよ!!」
「だ、駄目だって……これは次の街で売る予定なんだから」
「ちぇっ」
魔石の価値を知らされてネココは目を輝かせるが、ナオは魔石を売って旅に役立つ物を買うつもりだった。まだお金には余裕はあるが、今後のことも考えて無駄使いは控えなければならない。
話し込んでいる間にも狼車は山頂まで辿り着く。道行く人たちのために建てられたのか大きな小屋が存在し、時間も暗くなったので今夜は小屋の中で過ごすことにした。
「ちょうど良かった。小屋があるからあそこで休もう」
「ううっ、だんだん寒くなったな」
「山の天気と気温は変わりやすい。風邪をひく前に小屋に行くべき」
「ぷるぷるっ」
「え、スラミンはここに残りたいの?そうか、ウル君が寂しがるといけないからね」
「ウォンッ!!」
スラミンは狼車の中に残り、ウルと共に外で過ごすつもりらしい。ナオとミズネとネココは小屋の中に入ると、三人以外は誰もいなかった。
「おっ、あたしたちの貸し切りだな」
「ふああっ……今日は疲れたから早く寝たい」
「晩御飯は干し肉とパンでいいかな」
街に出る前に購入してきた食料をナオが取り出そうとしたとき、小屋の外からウルの鳴き声が響き渡る。
――ウォオオオンッ!!
何事かとナオ達は慌てて小屋の外に出ると、信じられない光景が広がっていた。小屋の外にはたいまつを手にしたゴブリンの群れが待ち構えており、その手には石斧や石槍が握りしめられていた。
「ゴ、ゴブリン!?しかもこんな大量の……」
「くそっ、なんだよこいつら!?ウルが怖くないのか!?」
「待って、様子がおかしい」
ゴブリンの群れを見てナオとネココは戦闘態勢に入ったが、ミズネはゴブリンたちが襲い掛かってくる様子がないことに不思議に思う。するとゴブリンの群れが左右に分かれ、森の奥から杖を手にした老人が現れた。
「ひひひっ……儂の小屋に勝手に入ったのはお主らか?」
「に、人間!?」
「どうして人間がここに……」
「……魔物使い」
ゴブリンたちを従えるように現れたのは背の小さな老人であり、彼が持っている杖が単なる松葉杖ではなく、魔術師が扱う杖だと見抜いたミズネは老人の正体に気が付く。
(魔物使い!?確か前に師匠から聞いたことがあるぞ!!)
魔物使いとは文字通りに魔物を従える人間のことを指し、大昔に存在した魔術師だと語られている。魔法の力で魔物を操るだけではなく、自分の魔力を分け与えることで特殊能力を目覚めさせることができるとマリアから聞いていた。
しかし、魔物使いは存在したのは何百年も前の話であり、現代では魔物使いは一人もいないと考えられていた。その理由はかつて一人の魔物使いが凶悪な魔物を従え、いくつもの国家を滅亡に追い込んだ。その魔物使いは多大な犠牲と引き換えに討ち果たされたが、魔物使いの存在を危険視した人々は今後二度と同じ過ちが繰り返されないように魔物使いの魔法技術の伝承を固く禁じた。
現代では魔物使いは存在しないと思われたが、ナオ達の前にはゴブリンの群れを支配する老人が現れた。ナオがどういうことなのかと疑問を抱くと、老人の手にはどこかで見覚えがある本を手にしていた。
(あの本、まさか魔導書か!?)
一年前にナオはマリアの元に訪れた際、彼女から受け取った「古代魔法」の魔導書と老人が所持する本がよく似ていることに気が付く。もしかしたら彼が持っている本は「魔物使い」の扱う魔法が記された魔導書ではないかと勘づいた。
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