編み物魔女は、狼に恋する。〜編み物好きOLがスパダリ狼さんに夢と現実で食べられる話。

兎希メグ/megu

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四章 冷たい部屋からの救出

十一話 その夢は、繋がっている(2)

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「それは……はい、とても素敵ですね」
 こくりと素直に頷けば、横から覗き込んできた奈々がきゃっと楽しげに声を上げる。
「なになに、えっ、私の担当もあるし! 実用英会話? 私のって、正式に習ったわけでもないし、現地で通じればいいからすっごくブロークンだし文法も何もないけどいいの?」
「ナナちゃん、逆にそこがいいのよ生の英会話で。で、ナナちゃんよく海外行くし、各国の雑貨を買い集めて貰ったりするのも楽しそうかなぁなんて思ってるの」
「え、輸入雑貨コーナー? それ、私の自由にしていいのっ!? なら楽しそう! SightseeingじゃなくBusinessって言えるんだよねぇ、ちょっとそれ言ってみたいかも! たまにねぇ、これ日本でもウケそうっていうのとか、あっちで流行ってる紹介したいなーっていうのもあるにはあるんだよね」
「私はワインの楽しみ方講座ですか……。仕事からしばらく離れているから、ちょっと不安だわ」
「はーちゃんはウチの料理に合うもの選ぶだけでいいよ。会食込みで、気軽なワインの楽しみ方を覚えて貰う感じ。お料理に合うお酒の組み合わせとかを、はーちゃんの知識と一緒に感覚から入って貰うような感じで。どう?」

 そんな楽しげな話を耳にしながら手帳の記述を追っていくと、地域の特産品などを並べる棚に伊都のニットグッズ、という文字があった。
 思わず目を丸くする。

「あの、この、私のニットって」
 伊都が商品棚の案を指さすと。
「ああ、それはねぇ。前からイトちゃんにあたしのマフラーとか頼んでたじゃない?」
 サキがグレープジュースを飲みながら明るく答える。
「はい」
「あれ、メリノウール……とかいう素材だっけ? 暖かいし軽いしで、すごい重宝してるんだけど。秋口から春先まで頻繁に使ってるせいか、偶に会う前の会社の友人とかに羨ましがられてたのよ」

「そ、そう、なんですか?」
 伊都は目を瞬いた。初めて聞く話である。
 でも、そうならちょっと嬉しいと伊都は思う。

「うん。まああたしぐらいの年になると、ちょっと高くてもいい素材の小物が欲しいってなるのよね。年相応にって?」
 そうなんだ、と伊都が頷くと。

「高くてもいいモノ欲しいっていう潜在的なお客は、結構いるんだ。でも、イトちゃんをここで「あたしの友人の為~」 とか言って、ホイホイ紹介するのはヤだなぁと思ってたのよねぇ」
 何でだろう? と伊都は思う。友人がこの手の話をしてくるのは、学生時代からよくあった事だからだ。
 ただ、伊都の場合は無償では編まないという自己ルールがあるので、友人仲介の依頼が実現する事はごくごく珍しかったが。何故か友人達はそれが素材代であれ金が絡むと聞くと「ならいい」 と、あっさり引いてしまうのだ。
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