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五章 毎日、毎日、貴方を好きになる。
十二話 水曜、朝から波乱の幕開け(2)
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「ああ良かった、伊都ちゃん」
「今日は大丈夫なの? おばちゃん達心配してたのよ」
彼女らは伊都の休んだ理由を知っているようで、口々に心配していたと言い募る。
「ありがとうございます。昨日しっかり休んだので、今日は元気です」
伊都が笑みを見せれば、パートのおばちゃんはほっとした顔をして、ロッカーに私物を仕舞い割烹着を着て工場へ向かう。
「いい? 具合が悪くなったらすぐにあたし達でも事務員の誰かでもいいから、言うのよ。貴女はいっつも我慢し過ぎなの」
労るように肩を叩かれて、伊都は「はい」 と答え、母親のように親身な彼女らの気持ちを有り難く思いながら、頭を下げた。
八時二十分。玄関の引き戸を開け元気に挨拶しながら入ってくるのは奈々だ。
「おはよーございまーすっ!」
朝から元気一杯な友人へ、仕事の準備をしていた伊都も挨拶を返す。
「奈々、おはよう」
「あっ、伊都だー! 今日は大丈夫そう?」
「うん。昨日はしっかり寝たし、元気よ」
「そうか、うんうんっ。ところで、あれからどうなったの?」
にやにやと笑う友人に、伊都はきょとんと目を丸くして首を傾げる。
「あれから、って?」
「飲みの後、白銀さんに送っていって貰ったでしょ?」
「ああ……」
月曜日、あの倉庫閉じこめ事件の後、故郷で食事をして解散した時の事を言っているのか、と伊都は納得して頷く。
「あれは、遅くなった時はいつもよ。白銀さんって、紳士な方だし」
「ふぅん? まあ、徒歩なのは伊都ぐらいだしねぇ、女性を大事にする姿勢はよしとしよう」
うんうん、と頷く奈々の態度に苦笑する。
「奈々、何だか偉そう」
「あっ、時間になる前にカード切ってこないと。詳しくは後でね」
そう言うと、奈々はタイムカードを押しに勝手口へと小走りに向かっていった。
賑やかな奈々が消えると、事務所には社長と副社長、伊都しかいない。
……それは、伊都が倒れる前、孤独に社長の圧力と立ち向かっていたあの頃と同じ構図だ。
「織部っ! 手前ぇハメやがったな!」
受話器を置いた社長が叫んだ。
「えっ」
伊都は驚いてそちらを向く。
憤怒の表情で、社長は職人らしい太い腕を振り上げ、伊都に掴み掛かろうとしていた。
その時である。
「あなた! ……あなた、やめて下さい」
副社長が、社長の奥方で、サキの母である人が、珍しく声を上げた。
彼女は青い顔でぶるぶると震えながら、社長の振り上げた手を掴み、しかしはっきりと声を上げる。
「今日は大丈夫なの? おばちゃん達心配してたのよ」
彼女らは伊都の休んだ理由を知っているようで、口々に心配していたと言い募る。
「ありがとうございます。昨日しっかり休んだので、今日は元気です」
伊都が笑みを見せれば、パートのおばちゃんはほっとした顔をして、ロッカーに私物を仕舞い割烹着を着て工場へ向かう。
「いい? 具合が悪くなったらすぐにあたし達でも事務員の誰かでもいいから、言うのよ。貴女はいっつも我慢し過ぎなの」
労るように肩を叩かれて、伊都は「はい」 と答え、母親のように親身な彼女らの気持ちを有り難く思いながら、頭を下げた。
八時二十分。玄関の引き戸を開け元気に挨拶しながら入ってくるのは奈々だ。
「おはよーございまーすっ!」
朝から元気一杯な友人へ、仕事の準備をしていた伊都も挨拶を返す。
「奈々、おはよう」
「あっ、伊都だー! 今日は大丈夫そう?」
「うん。昨日はしっかり寝たし、元気よ」
「そうか、うんうんっ。ところで、あれからどうなったの?」
にやにやと笑う友人に、伊都はきょとんと目を丸くして首を傾げる。
「あれから、って?」
「飲みの後、白銀さんに送っていって貰ったでしょ?」
「ああ……」
月曜日、あの倉庫閉じこめ事件の後、故郷で食事をして解散した時の事を言っているのか、と伊都は納得して頷く。
「あれは、遅くなった時はいつもよ。白銀さんって、紳士な方だし」
「ふぅん? まあ、徒歩なのは伊都ぐらいだしねぇ、女性を大事にする姿勢はよしとしよう」
うんうん、と頷く奈々の態度に苦笑する。
「奈々、何だか偉そう」
「あっ、時間になる前にカード切ってこないと。詳しくは後でね」
そう言うと、奈々はタイムカードを押しに勝手口へと小走りに向かっていった。
賑やかな奈々が消えると、事務所には社長と副社長、伊都しかいない。
……それは、伊都が倒れる前、孤独に社長の圧力と立ち向かっていたあの頃と同じ構図だ。
「織部っ! 手前ぇハメやがったな!」
受話器を置いた社長が叫んだ。
「えっ」
伊都は驚いてそちらを向く。
憤怒の表情で、社長は職人らしい太い腕を振り上げ、伊都に掴み掛かろうとしていた。
その時である。
「あなた! ……あなた、やめて下さい」
副社長が、社長の奥方で、サキの母である人が、珍しく声を上げた。
彼女は青い顔でぶるぶると震えながら、社長の振り上げた手を掴み、しかしはっきりと声を上げる。
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