編み物魔女は、狼に恋する。〜編み物好きOLがスパダリ狼さんに夢と現実で食べられる話。

兎希メグ/megu

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八章 彼女が彼と、住む理由。

三十五話 珍客の来訪と彼の部屋(1)

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 伊都が痛みに負けベッドに潜り込んだのを横目に、白銀は来訪者の相手をする。
 病人のいる部屋に連れて来たくない、という白銀の意向により、ロビーで話し合いを済ませたようで、伊都はその間かやの外であった。

 ……二時間後。
 薬が効き、痛みは残るものの、クッションを背当てにベッドの上で座れるようになった伊都はその人物と会う事となった。

「昼の間、白銀氏が仕事で出ている間だけ、伊都さんの事を任されるという事で話がつきましたっす! 秋葉っす!」
「よ、よろしくお願いします……?」
 握手を求めてきたので手を差し出すと、包帯だらけの手をそっと握り返してくる。
 怪我人という事を気遣える人物であるようだ。
 
「買い物でも仕事の送迎でも、何でもするっす!! 便利に使ってやって下さいっす!」
 そして、熱意がすごい。
「え、初対面の方にそれは無理かと……」
 思わずその勢いにひるむ伊都であるが。
「いやいやっ!? この仕事を完遂したら、リッコ姉がモデルの仕事を紹介してくれるんで、マジ追い返さないでくれっす。元ニートだけど何でもやります、頑張るっす!」
 免許も現住所も白銀氏に押さえられてるっすから、秋葉は悪い事しないんで安心してくれっすよ! と言う彼女は、何を思い出したのか微妙にひきつった笑いを浮かべた。
「はあ……。では、この通り私はしばらく部屋を出られないと思うので、買い出しをお願い出来ますでしょうか」
「はい喜んで!」

(ま、また個性的な人が来たものね……リッコったら、恨むわよ)
 勢いに負けて「???」 と頭に疑問符が沢山並ぶも、思わず承諾する伊都である。

 そこでようやく、観察する余裕が出来た伊都は、じっくりと秋葉を見つめる。
 秋葉は現実味のないピンクゴールドに染めた髪にかわいらしい顔立ちの、人懐こそうな人物だ。
 年の頃は二十代前半か。
 伊都の周りで例えるなら、奈々に近そうなタイプである。
(こんなに元気で社交的な人なのに……元ニートって、何があったのかしらね)
 元引きこもりとしては、少しだけ親近感を覚えるけれど。
 彼女はすらりとして長身で、何故か服装はユニセックスなものを着ている。
 ただのシャツとジーンズなのに、トレーニングでもしているのか、綺麗に引き絞られた身体にぴったりのそれは彼女の美貌を引き立たせていた。
(この華やかな感じからして……リッコのモデルの弟子とか、そういう人なのかしら?)
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