作者と旅する異世界道中

唯織

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1 自称創造主

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『…ますか?…く……か…』
なんだろうか…声が聞こえるような気がする。
『聞こえますか?』
なんだようるせぇな。さっきのはなんかあんまり良く聞こえなかったけど今回はめちゃくちゃ良く聞こえすぎてちょっとうるさいくらいだよ。
『聞こえているなら、なぜ反応してくれないのですか?』
こっちは返事してないのになぜだか話が噛み合っているのは僕の思考を読んでいるからですよね。そういう仕様ですよねそれ。
『ちょっと待ってよ…そういう仕様とかやめてよ。頑張って『』⇐これ使って頑張って頭に直接頭に語りかけている感じを出しているのになんかそういうこと言われちゃうとやる気なくなっちゃうな~』
何だこいつめんどくさいな。僕は寝ているんだから寝かせてくださいねー。起きたら相手してやりますから。
『今言ったこと覚えておくんだぞヒュード…』
ん?今なんて…?あぁ、だめだ意識が…
そうして僕は深い眠りへと落ちていったのだった。
ちゅんちゅんという鳥の鳴き声と陽の光に目を突かれ覚醒する。
ふむ…なんか体が重い…
というか体の上に何かが乗っている?
目を開けるとちっちゃな男の子(?)が僕の上に座っている。
なんでこいつ本とペンを持っているんだろうか?そして、なぜ僕の上にいるのだろうか?
「夢か…そうだ。夢に違いない。おやすみなさい」
「おいこら?せっかくこんな素晴らしい出会いを演出してやったというのに何二度寝を決め込もうとしてるんだ駄主人公が!!!」
バシッと頭に衝撃が走る…
痛いんですけど何なんですか?ふざけるんじゃないよ。
「痛いってことは…夢じゃないのか…」
しぶしぶと目を開けるとやっぱりふざけた格好をした男の子がそこに居たのだった。
全体的に茶色っぽいちょっとおしゃれな服を着ていて変な帽子までかぶっているその少年はやっぱりペンと本を持っている。何なんだよこいつは…
「えっと…君は誰かな?」
「よくぞ聞いてくれた!俺はここの世界の創造主である!わかったらさっさと敬え!」
誰ですかこんな困ったちゃんを僕の寝室に入れた野郎は…
「ヒュードどうしたのですか?何やら先程から騒がしいようですが」
ドア越しに母さんの声が聞こえてくる。
「か、母さん!別になんでも無いよ!」
「そうですか。朝ごはんの準備はできていますから準備ができたら来てくださいね」
「わかったよ。すぐ行くね」
とととっドアから遠のいていく足音を確認してホッと胸を撫で下ろす。
「お前…どうしてここに居るんだよ。そもそも創造主って何なんだよ」
「おいおい創造主たる俺のことお前呼ばわりとは不敬であるぞ。お前のデザイン案を変な方向に変更してもいいんだぞ?それに一度にいくつも質問をしてくるな。めんどくさい」
いや、なんで僕が怒られなきゃいけなんだよ…
僕は自分の部屋に居て寝ていただけで、状況が飲み込めないから当事者らしい変なやつにわざわざ勇気を出して質問をしたのに怒られた。もうやだ二度寝したい…
「順を追ってお前には説明をしてやろう。まず、さっきも話したとおり俺はこの世界の創造主である。この手に持っている本がこの世界の全てであり、この世界を作り変えるのも俺の思い通りということだ」
ほんとに誰なんだよこの困ったちゃんをここに召喚したの…
「そして次に、ヒュードお前の前に現れたのは…お前は俺によって選ばれし者なのだ。だからお前はこれから俺と世界の不具あ…いや、異変を直す旅に出かけようではないか!」
お前今不具合って言いかけたよな?
「お前創造主なんだろ?そんなの全部自分で直せばいいじゃないか。僕はここでの生活があるんだから巻き込まないでくれ。おやすみ」
説明はしてくれたけど、全く納得することはできないので寝ますね。おやすみなさい。
「ここまで説明をしてやっているのに全く理解を示さない様子を見るとやはりこの世界の異変は徐々に広がりつつあるのか…だいたいこの手の説明をされれば大体の人間は動いてくれるのではないのか?ドラゴンを討伐する系の物語であれば、簡単に世界を救うための旅に出てくれるのだが…この手だけは使いたくは無かったのだが…致し方あるまい」
なにやらブツブツと言いながら自称創造主君はペンをくるくると回して持ち直すと本にペンを走らせた。
「【世界創造ワールド・クリエイト】!」
うわーなんかすっごい痛い感じのことをつぶやき始めたんだけど何なのこいつほんとに。
サラサラとペンを動かしていたと思うかとピタッとペンを止めて本を閉じる。
静かに閉じられた本はかすかに光ったように見えたけど気のせいだろう。きっと気のせいだ。
上書き完了アップデート・コンプリート
まーたなんか言ってるよこいつ…
「お前なぁ…冗談もほどほどに…」
急にどどどどっと足音が僕の部屋に近づいてくる。
バーンと扉が開き母さんが部屋に入って来る。
「ヒュード何をしているの?あなたはそこにいるヤルス君と一緒に旅を出るって昨日言っていたじゃないの。いつまで寝ているつもりですか?」
な、何の話ですかお母様?
「ほらほらヒュード君?君のお母さんの言う通り俺と一緒に旅に出ようではないか!」
そこからはあれよあれよという間に準備が進んでいってしまった。
そして、色々な荷物を持たされて僕は玄関に立たされている。どうしてこうなった!?
「ヒュード…あなたはこれといってなにかに秀でているわけではないのですから無理をしすぎるのではないのですよ?」
お母様?なんでこれから旅に出るっていう息子に対してその言葉はさすがに酷すぎやしませんかね?
「でも、ヤルス君と一緒なら大丈夫ね。うちのバカ息子をお願いねヤルス君」
「あぁ、大船に乗ったつもりで安心するがいい。では、たまには戻ってくるのだぞヒュード」
「ちょっと待って!?僕は話の展開に全くついていけないんですけど?」
「ほら、いくぞヒュード」
「え、ちょ…うわぁ!!」
無理矢理ヤルスに手を引かれて僕は結局旅に出ることになったのであった…
ほんとに…嫌々ですよ?
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